日本では、「本音と建て前」をうまく使い分けなくてはならない場面がたびたび訪れる。就職活動の面接もそのひとつだ。志望動機など聞かれても「卒業したらみんな働かなくてはならないというので仕方なく近場のこちらを」などと正直に答えてはならないのである。
11月中旬、はてなブロクで「就活面接で『10年後どうなっていたいか』って質問は意味ないと思う」と、面接では言えない本音を語った青年がいた。
「『とりあえず生きていたいです』って答えたらまずいですよね?」
「ぼくはこの質問に対して、正直に答えると『10年後の自分なんてわかりません』ってなります。」
と書くブログ筆者。「面接官も分からないでしょ?なんでこんな質問するんだろう」と疑問を呈していた。(文:okei)
「どんな風に成長したいですか?」って聞いた方がいい
投稿したのは23歳男性。学生時代から働き新卒で京都のゲストハウスに就職、一年半で退職したという経歴の持ち主だ。新卒採用でよく聞かれるというこの質問に、かなり違和感があるらしい。
「業界への理解を深めた上で、具体性のある、自分の成長を意識した返答をしよう」と言われるが、「それって無理じゃね?」というツッコミ。働く前から具体的に答えられるわけがないというのだ。
しかもそれらを測りたいなら、「どんなふうに成長したいですか?」って聞けばいいし、わざわざ10年後を見越す必要も無い、「まわりくどいわ」と突き放す。
「そもそも同じ業界同じ会社にいるかどうかも分からないが、そんなことを言えば落とされるのでみんな言わないだけ」
今の若者たちは、未来に期待し過ぎないように生きている
「業界研究はするべき」だし、企業側はそれを測るべきという考えはあるものの、その方法はペーパーテストでいいという。「まわりくどい、答えられるわけがない、下手なことを言うと落とされる、面接でその質問をする意味は無いと思う」とまとめた上で、こう見解を示していた。
「人間10年後にどうなっているかなんてわかりませんよ。会社も同じ。企業寿命は短くなっているって聞きますし、10年を見越すことすら危うい。これからはいまを精一杯生きることが大切になってくるんじゃないでしょうか」
冷静に、まあそうだよなと納得してしまう。模範解答はネット等でいくらでも参照できるし、OB訪問を行なうなどすれば、ある程度答えられるだろう。
しかしそれも、恐らくは自分の気持ちがどうというより、「相手がどう答えて欲しいか」の模索になる。結局本音では答えないのだから、それでは聞くだけ意味がない。それなら、現状の本人のやる気と意気込みを問う方がはるかに有意義だ。
また、日本は少子高齢化だ経済は右肩下がりだと危うい話ばかりで、たとえ若者であろうとも、未来に期待過ぎないように生きているフシがある。そんな彼らに10年後を問うのは、無意味というよりむしろ酷なのではと考えさせられた。