TCRインターナショナルシリーズを筆頭に、猛威を振るう新世代ツーリングカー規定の波が、WTCC世界ツーリングカー選手権にも押し寄せる形となった。11月30日にオーストリア・ウィーンで開催されたFIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)で、2017年のWTCCに『TCN-2(TC3)』と呼ばれる、いわゆるTCR規定ツーリングカーを使用した『WTCC-2』クラスが発足することが決定された。このルール改正の承認により、来季のWTCCはホンダやボルボのワークス勢が戦うTC1規定の下位に、新たな選手権が誕生することとなった。
このTCN-2と呼ばれる技術規定は、FIAが定めるツーリングカー技術規定のヒエラルキーで最新のものとなっており、そのおおまかな内訳は下記のようになっている。
FIAツーリングカー技術規定
TC1=現行WTCC車両
TC2=旧S2000車両
TCN-1=NGTC車両(BTCC)
TCN-2=TCR車両
同規定は国内外の競技用に設計されており、最大2リッターのターボエンジン、シーケンシャルギアボックス、公認のロールケージ、限られた空力補助装置を備えており、現在TCR規定車両としては『セアト・レオンTCR』『フォルクスワーゲン・ゴルフGTI TCR』『アストラOPC TCR』『ホンダ・シビックTCR』『アルファロメオ・ジュリエッタTCR』のほか、『フォード・フォーカス』『プジョー308』『スバル・インプレッサ』などプライベーター製作のマシンも存在。
さらに直近では、韓国・起亜がCセグメントハッチバックの『シードTCR』を発表。アウディがRS3セダンをベースに自社開発した『RS3 LMS』というTCRモデルをラウンチ。日本国内でもスーパー耐久向けのデリバリーをアナウンスしている。
このWTCC-2クラスの創設は、ツーリングカーの最高峰に挑もうとするドライバーやチームの育成を手助けすることはもとより、安価なコストでハイレベルな競技環境を作り出すことも狙いだという。FIAとWTCCプロモーターのユーロスポーツ・イベントは、現在WTCCに参戦するチームが同時運営することを想定しており、スポーティングとテクニカルの各レギュレーションは、FIAより直ちに発表するとしている。
選手権運営のトップを務めるフランソワ・リベイロは、現在の環境から考えてWTCC-2は「大きな恩恵がある」アイデアだと説明する。
「現在の経済情勢では、ドライバーとチームがTC1ワールドツーリングカーのレースに必要な財務を確保するのに非常に高いハードルが存在し、それを課題として認識している」
「WTCCは依然としてツーリングカーの最高峰として君臨するが、WTCC-2は世界的な舞台で自分の才能を披露し、FIAのタイトルに匹敵する……または将来のワールドツーリングカーチャンピオンを目指す良いプラットフォームを提供できる」
「WTCC-2をTCN2規定車に限定することで、参戦準備と管理がより手頃となる。 WTCC-2の競技者はイベント組織の標準化、世界的なメディアの露出、WTCCと共通するプロモーション活動の恩恵を受けることになるはずだ」
また来季のWTCCにはいくつかの改革も実施される予定で、ツール・ド・フランスのチーム・タイムトライアル(TT)を模して始まり、17年からはボルボも参加する「マニュファクチャラー・アゲイント・ザ・クロック(MAC3)」は、2位のチームにも8ポイントを付与。勝者は16年より2ポイント増の12ポイントが与えられる。
さらにニュルブルクリンク・北コースを除いてレース距離を3ラップ延長。さらにオープニングレースに対しメインレースを2周長く設定し、勝者は30ポイント、以下23、19、16と、トップ10圏内がポイント対象となった。
そのほか、マラケシュとビジャレアルの市街地戦限定で、FIAとサーキット・コミッションの承認を条件にFIA世界ラリークロス選手権スタイルの「ジョーカーラップ」を導入。スポーティングレギュレーションにより、レース開始3周目以降からの運用が予定されている。