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JUJUはなぜステージに立ち続ける? 新曲「believe believe」に見る充実の現在地

2016年11月30日 17:01  リアルサウンド

リアルサウンド

JUJU

 JUJUが自身33枚目となるシングル『believe believe / あなた以外誰も愛せない』を11月30日にリリースした。表題曲の「believe believe」は現在放映中のドラマ『レンタル救世主』(日本テレビ系)の主題歌としてもおなじみの1曲。主演の沢村一樹とデュエットした特別バージョンは、すでにiTunesほかで先行配信され話題を呼んでいるが、満を持して発売となるJUJUオリジナルバージョンもまた、彼女らしい遊び心に溢れている。プロデュースを手掛けたのは、これまでに「Hot Stuff」などでもJUJUと組んできたクリエイター集団・agehasprings代表の玉井健二。往年のロックを彷彿とさせるギターのリフに乗ってやや抑え気味に始まるAメロから、ホーンが介入し一気に解放されるサビへ。緩急つけた展開の妙もさることながら、掛け合い調の歌い方も新鮮に響く。MVで披露している“ビリビリ”ダンスも相まって、これからの忘年会シーズンを盛り上げるパーティーチューンとしても一役買いそうだ。


 2016年はJUJUにとって、とにかくステージに立ち続けた1年だった。昨年12月にリリースした6枚目のアルバム『WHAT YOU WANT』を携えた37公演にも及ぶ全国ホールツアーで文字通り津々浦々を駆け抜けると、その足でN.Y.在住のトランペッター黒田卓也を迎えた恒例のジャズ・ライブを6日間にわたって開催。10月にはカバーライブシリーズ「ジュジュ苑」を拡張し、「スナックJUJU」と題して一夜かぎりの特別公演も行った。もちろん、ライブの合間にはイベント出演も多数こなしている。


 ライブをするということはすなわち、聴き手と直接相見えること。画面もヘッドホンも通さない素の自分で挑み続けるということだ。これまで、さまざまなメディアで「ライブの直前は震えるほどに緊張する」とカミングアウトしてきた彼女が今年、それでもライブにこだわったのには一体どんな理由があったのかと想像する。2014年に迎えた10周年のアニバーサリー、その勢いのまま2015年は怒涛のリリースラッシュに沸いた。とりわけ、バラードシンガーとしてのイメージを一新するアップテンポの楽曲にも精力的に取り組んだのは大きな転機で、新たなファン層の獲得にも繋がったと見える。となると、彼女が踏み出すべき次なる一歩は、より多くのファンに向けて自身の現在地を伝えていくこと。幅広いチャンネルを備えた歌い手として、観客ひとりひとりにステージを体感してもらうことに他ならない。いわば、“新生JUJU”のお披露目の場として設定したのが、このライブ三昧の1年だったのではないだろうか。


 その点で、先月のリリース以降、5週連続でオリコンTOP10入りと好セールスを記録しているカバーアルバム『スナックJUJU ~夜のRequest~』は大きな意味を持つ。80年代の歌謡曲を彼女流のアレンジで聴かせあらゆる世代を魅了した本作は、聴き手がJUJUに求めるニーズを的確に捉えたと同時に、歌い手としてのポテンシャルをまざまざと見せつけた。来る日も来る日もステージに立ち続け、観客と直に触れ合ってきた彼女だからこそ到達した、唯一無二の地平だったと言えよう。


 『believe believe / あなた以外誰も愛せない』は、『スナックJUJU ~夜のRequest~』の先行シングルでもあった「六本木心中 / ラヴ・イズ・オーヴァー」を抜かせば、ほぼ1年ぶりの完全新曲。「believe believe」に関しては先に述べた通りだが、両A面のもう一方「あなた以外誰も愛せない」は、これぞ王道! と言えるラブバラード。1枚に真逆の楽曲をパッケージする大胆な仕掛けの向こうには、「お好きなJUJUをどうぞ」とにこやかに微笑む彼女がいるようでドキドキする。ジャンルも世代もしなやかに横断し、歌を届ける使命を負ったJUJUがこれからどんな道を開拓していくのか。その勇姿を見届けたい。(文=板橋不死子)