トップへ

藤原さくらの音楽は新たなフェーズへーードラマ『ラヴソング』の余韻を残す新曲を聴いた

2016年11月29日 19:01  リアルサウンド

リアルサウンド

藤原さくら(写真=Shinichi Kawashima, Yusuke Takamura)

 9月10日に東京・恵比寿ザ・ガーデンホール公演からスタートした藤原さくらの全国ツアー『藤原さくらワンマンツアー2016「good morning」~second verse~』の終盤、東京・EX THEATER ROPPONGI公演。フジテレビ系月9ドラマ『ラヴソング』(2016年4月~6月)に出演したことをきっかけに知名度を大きく上げた彼女は、1stアルバム『good morning』の収録曲、シングル「Soup」など18曲を披露。深みを増したボーカル、凄腕のミュージシャンたちとのオーガニックな演奏、そして、彼女自身の素顔が感じされるステージングによって、幅広い年齢層の観客を魅了した。


写真はこちら。


 ホワイトとシルバーを基調にした衣装に身を包んだ藤原さくらがステージに登場した瞬間、「さくらちゃーん!」「かわいい!」という女の子の声が飛び交う。明らかに若い観客が増えた客席に放たれたオープニングナンバーはミニアルバム『à la carte』に収録されている「We are You are」。さらに「Walking on the clouds」、メジャーデビュー前のアルバムから「愛の街」とシックな手触りのナンバーが続く。ブルース、カントリー、ジャズのテイストを反映させたソングライティング、スモーキーな声質がゆったりと広がり、豊潤な音楽空間が生み出される。とても二十歳とは思えないほどの深みを持った彼女の歌を支えるのは、Ovallのメンバーであるmabanua(Dr)、関口シンゴ(G)、Shingo Suzuki(B)、そしてKan Sano(Key)。演奏の質の高さは、現在のJ-POPシーンのなかでもはっきりと際立っていると思う。


 オーガニックな雰囲気から一転、MCになると二十歳の女の子としての等身大の姿が伝わってきた。「さくらちゃん、お姫様みたい!」という声に「そういうの嬉しい。もっと言って」と笑顔を見せ、「ツアーの打ち上げで酔っぱらってトイレで泣いちゃって……」とぶっちゃけ話も披露。おそらく今回のツアーは、ドラマ『ラヴソング』の佐野さくら役で彼女のことを始めて知った観客も多かったはず。素顔が伝わるトークからは、初対面の観客に対して“普段の自分を伝えたい”という意思を感じ取ることができた。


 「Ellie」を3拍子にリアレンジ、「Oh Boy!」でウクレレを演奏するなど、音楽的なトライも今回のツアーの見どころだった。そして、もっとも印象的だったのはライブ後半に披露された新曲。


 「撮影中はライブもやってなくて、ドラマのことばっかりやっていて。でも、すごくいい機会だったし、ドラマのことを思って曲が書きたいと思って。ドラマをきっかけにみなさんと出会えたこともそうだし、佐野さくらも神代先生(福山雅治)と出会って変わっていった女の子で。その人ともう会えないとしても、その出会いはけっしてムダではないと思うし……みなさんの大切な人のことを思って聴いてもらえたなと思います」


 そんな言葉の後に歌われたこの曲は、アコースティックギターのリフを中心にしたサウンドのなかで、切なさをたたえたメロディが響くミディアム・バラード。春という季節のなかで、もう会えない大切な“あの人”のことを思うーー彼女自身の音楽的ルーツとドラマ『ラヴソング』の余韻がひとつになったこの新曲は、「“誰が聴いてもいい曲”という作品を自分でも作ってみたい」(シングル「Soup」のインタビューより)という意志によって生まれた最初の成果と言っていいだろう。


 さらにドラマ『ラヴソング』の主題歌「Soup」を披露した後、「終盤、盛り上がっていきましょう! みなさん、立ってみますか?」と促し、「BABY」「Station」そして彼女の楽曲のなかでもっともポップな手触りを持った『「かわいい」』を演奏。積極的にオーディエンスとの一体感を生み出そうとする演出も、彼女にとっては初めてのトライだ。


 アンコールの1曲目は弾き語りによる「500マイル」。さらにツアーグッズの紹介、観客とのおしゃべりの時間をたっぷり取った後、「ファンのみなさんのことを思って書きました」という「お月さま」によってライブは終了した。


 ツアー前のインタビューで「ドラマで初めて藤原さくらのことを知ってくれて、私の音楽にも興味を持ってくれた人たちが来てくれるんだったら、期待を裏切らないようにしたいですね。『音楽をやっている藤原さくらも楽しそうでしょ?』というところを見てもらいたいので」と語っていた彼女。自らの音楽スタイルをさらに深めながら、幅広い層のリスナーが自然に楽しめるステージを体現した13箇所14公演のこのツアーを経て、彼女の音楽は新たなフェーズに入っていくはず。2017年2月には大阪と東京で『藤原さくら Special Live 2017』が開催される。この日のMCでは新しい曲を作ってライブをしたいと語っていた藤原さくら。そこで生み出される楽曲を心待ちにしていたいと思う。(文=森朋之)


■セットリスト
1.We are You are
2.Walking on the clouds
3.愛の街
4.I wanna go out
5.maybe maybe
6.Ellie
7.Give me a break
8.Oh Boy!
9.Cigarette butts
10.Just one girl
11.好きよ 好きよ 好きよ
12.新曲
13.Soup
14.BABY
15.Station
16.「かわいい」
EN1.500マイル
EN2.お月さま