2016年11月29日 17:02 弁護士ドットコム
2014年から東京・世田谷区で導入された自動車の「世田谷ナンバー」について、区民ら169人が「居住地を特定され、プライバシーや平穏な生活が害される」などとして、区長と区に一人あたり1円の損害賠償を求めていた裁判で、東京地裁(江原健志裁判長)は11月29日、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。
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世田谷ナンバーは、自動車の番号標(ナンバープレート)に表示する地名について、自治体が独自の地名を定められるよう2006年にはじまった「ご当地ナンバー」のひとつ。世田谷区の住民アンケートなどを経て、2014年11月から導入された。
原告側は「(世田谷ナンバー導入の過程で実施された)アンケートの抽出方法が偏っていて、住民の意向を反映していない」などと主張していた。
判決では、「住民のアンケート調査に不正な操作があったと認めることはできない」「(区や区長は)原告らに対する法的義務に違背するということはできない」などとして、プライバシーや平穏な生活が害されたかどうかの判断には立ち入らず、原告らの主張を退けた。
判決後の会見では、世田谷区で、テレビドラマなどの撮影に使われる車を貸し出す事業を経営する原告の男性は、「品川ナンバーに愛着があり、仕事でも優位になる面がある。(今回の判決は)残念な結果だ」と語った。
原告側の代理人、吉田幸宗弁護士は「アンケートの抽出方法がおかしいと主張していたのに、裁判所は『(アンケートの)結果はおかしくない』といっただけで、その点に全く触れていない。判断を避けたのではないか」と批判した。今後の方針については、「他の原告と協議して、控訴するかどうかを含め判断したい」と語った。
(弁護士ドットコムニュース)