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中田ヤスタカ×きゃりーぱみゅぱみゅ、ツーマンライブで見せた飾らない表情と2人の最新型

2016年11月29日 14:33  リアルサウンド

リアルサウンド

中田ヤスタカ×きゃりーぱみゅぱみゅ

 11月10日のZepp Nagoyaを皮切りにZepp東名阪を巡った中田ヤスタカときゃりーぱみゅぱみゅのツーマンライブツアー『~SPECIAL DJ×LIVE ZEPP TOUR 2016~「YSTK×KPP」』。きゃりーは各公演が終わる度、自身のTwitterへライブの楽しさとツアーが終わってしまう寂しさを吐露していた。ツアーファイナルとなった11月14日のZepp DiverCityでのライブは、最新型の中田ヤスタカときゃりーぱみゅぱみゅを提示すると同時に、ライブを楽しむ素の姿の2人を垣間見ることができるものであった。


(関連:中田ヤスタカ、Perfume&きゃりー楽曲の秘密明かす「フレーズが成長していく」


 説明するまでもないが、中田ヤスタカは音楽ユニットCAPSULEのメンバーの一人であり、音楽プロデューサーとしてきゃりー、Perfumeのほか、テレビドラマ『ライアーゲーム(フジテレビ系)、映画『何者』の劇伴を手がける日本が誇るトップクリエイターだ。きゃりーがほかアーティストとツアーを巡るのは、今回が初めてのことであり、自身の生みの親とも言える中田とツアーを開催することは彼女にとっても念願であったことだろう。


 会場には、2階まで続く巨大なDJセットとそれを球体型に取り囲むライトが鎮座する。一人DJセットの前に現れた中田は、1曲目に「Dancing Planet feat.VERBAL」をチョイス。会場が小刻みに揺れるほどの重低音でフロアを縦に揺らしていく。会場はあっという間にクラブと化す中、中田が「CANDY CANDY -remix ver-」をプレイするとステージ下手から赤いワンピースにサングラス姿のきゃりーが登場。「みんなのうた -extended mix-」「きらきらキラー -extended mix-」「もんだいガール」など自身の楽曲のほかに、CAPSULEの「Motor Force」ではきゃりーがマイクを握った。きゃりーの初期代表曲「PONPONPON」では、Perfumeの「ポリリズム」をマッシュアップさせ会場のファンを喜ばせる。バックダンサーを従え彩り豊かな衣装に身を包んだ単独ツアーでの彼女の姿とは違い、時折歓声を上げながらパフォーマンスする飾らない素のきゃりーが印象的だった。


 昨年、12月6日に東京国際フォーラム ホールAで開催した『きゃりーぱみゅぱみゅ JAPAN HALL TOUR Crazy Party Night 2015』に足を運んだ際、今回の中田とのツアーに近い立ち振る舞いであったのを思い出す。中田のリミックス曲をセットリストに入れ、“チャラいぶち上げ系のナイトクラブ”をイメージしたその時のライブで、彼女は「私は、無機質な人形さんのようにパフォーマンスをすることをいつも意識してるんですけど、今回は『イェイ!』『フゥフゥ!』みたいに、すごく楽しくライブをさせてもらってます」と満面の笑みを浮かべながら話していた。5周年記念のベストアルバムを携え、ワールドクラスのエンターテインメントを表現した8月の日本武道館でのライブでも、きゃりーの一つの側面が見えたが、今回のようなラフな彼女の姿もまた一人の“アーティスト”であることを認識させられる。


 「センキュー!」と顎にVサインを決めた後は、インターミッションを挟みライブ後半戦へ。再びステージに登場した中田はCAPSULE「Another World」、Perfume「FLASH」と自身が手がけたアッパーチューンをかけ会場のファンを飛びあげさせていく。「にんじゃりばんばん -extended mix-」を機にきゃりーもステージに再登場。超重低音が会場に鳴り響く中、きゃりーは縦横無尽に飛び跳ね回り、ファンをリードしていく。「おとななこども」「チェリーボンボン」などのきゃりーの楽曲群の中に、ピコ太郎の「PPAP」を縦ノリのエレクトロサウンドにマッシュアップした楽曲を入れ込む、中田のキャッチアップの腕は流石の一言だ。きゃりーの「おやすみ」でクールダウンしたフロアを、中田が手がけた映画『何者』の主題歌「NANIMONO(feat. 米津玄師)」で再度盛り上げ終盤戦へ突入。きゃりーと共に「インベーダーインベーダー」「ファッションモンスター」とキラーチューンを投下した後、本編ラストには来年1月18日にリリースとなるきゃりーの新曲「原宿いやほい」を披露。軽快なシンセサイザーのメロディーであり、世界的に主流と成りつつあるダンスミュージックサウンド“トロピカルハウス”を大胆に取り入れたサビでは、きゃりーが<原宿でいやほい>と叫ぶ。一度聴いたら決して忘れることのないインパクトのある楽曲だ。また、Bメロの歌詞<あの交差点から始まった>は、きゃりーの代表曲「PONPONPON」の歌い出し<あの交差点で みんながもしスキップをして>のフレーズを彷彿とさせる。ライブ翌日、11月15日放送の『めざましテレビ』(フジテレビ系)のインタビューにて中田は“交差点”という歌詞について「5周年というのもあって原点っぽいフレーズを使いたかった」と答えている。“原点回帰”をしながら新しいサウンドを取り入れている「原宿いやほい」は、“中田ヤスタカ×きゃりーぱみゅぱみゅ”の最新型の形と言える。


 アンコールでは「つけまつける」「最&高」の2曲を披露。ライブ終盤のMCでこの日初めて口を開いた中田は「すごくいい経験になりました。みなさんのおかげで僕の新しいステージを迎えることができました」と棒読みで感謝の思いを告げ、会場の笑いを誘った。きゃりーは「デビューする当時から今も中田ヤスタカさんの大ファンなので、2マンライブできることに本当に緊張していました」と無事にツアーを完走できた喜びを露わにしながら、「3公演じゃ足りなくないですか!? また機会があったら遊びに来てください!」と満面の笑みでファンに呼びかけていた。中田はソロとしてクラブイベントの出演やCAPSULEとしてのライブ、きゃりーは年明けより全国ホールツアーを開催する。今回のツアーがそれぞれの活動にどのように作用していくのか。そして、飾らない、素の表情を覗くことができる2人のツアーがまた開催されることを期待したい。


(渡辺彰浩)