2016年11月29日 11:03 弁護士ドットコム
都心部で人気のタワーマンション(タワマン)。一般に、フロアごとに資産価値が異なっており、高層階ほど高いとされている。30~40代のファミリー世帯にとっては、一種の「ステータス」として見る向きもある。
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そんなタワマンの固定資産税が高層階ほど高くなるかもしれない。報道によると、政府・与党が、高層マンションにかかる固定資産税について、「高層階ほど増税、低層階ほど減税」とする方向で検討を始めた。現行では、低層階でも高層階でも床面積あたりで同じ税額になっている。
これまで、富裕層が「節税」に利用しているとも指摘されていた。こうした増税の動きについて、これからタワマンの購入を検討している人たちはどう考えればいいのか。久乗哲税理士に聞いた。
そもそも、タワマンを「節税」に利用する仕組みはどのようなものなのか。
「相続税法では、相続、遺贈または贈与により取得した財産の価額は、その財産を<取得したとき>の時価によって評価するとされています。
これらの時価については、国税庁の通達があります(財産評価基本通達)。その通達では、家屋の評価は『固定資産税評価額』をベースにするとされています。
そして、高層マンションの『固定資産税評価額』については、マンション全体の『固定資産評価額』を自治体が計算することになっています。その『固定資産税評価額』が、各戸の床面積に応じて按分されています。
一方で、高層マンションの高層階は、単なる床面積以上の付加価値があります。そのために、高層マンションの高層階については、販売価格も単に床面積に応じた価格ではありません。売却するときも、当然に購入額に近い金額や、場合によってはそれ以上の価格で売却することができたりします。
これらを前提に、高層マンションの高層階を購入することで、相続税の財産評価額を減らそうとするのが、高層マンション(タワーマンション)節税とよばれるものです」
今回検討されている改正によって、どのような影響があるのだろうか。
「今までのようには、節税効果はないかもしれませんが、それでも、節税効果がまったくないかといえば、そこはケースバイケースだと思います」
どうしてそのようにいえるのだろうか。
「高層マンション全体の『固定資産税評価額』の評価方法を改めるというものではありません。高層マンション全体の『固定資産評価額』は今までと変わりません。
高層マンション全体の『固定資産評価額』を各戸に按分するのに、単に床面積でなく、販売価格も考慮するということです。
つまり、高額で販売される高層部分については、『固定資産税評価額』が高くなる反面、低層階部分については、『固定資産税評価額』は下がることになります。
とはいえ、高層マンション全体の『固定資産税評価額』の計算や、高層部分への相続税の評価額を別途するというような改正ではないので、相続後に売却する時価と相続税評価額に乖離があること自体は変わりないと思います。
したがって、高層マンション節税の効果については、その後に売却する価格と相続税の評価額、すなわち『固定資産税評価額』との乖離がどれぐらいあるのかということにつきるのではないかと思います。
週刊税務通信3431号(税務研究会)によると、『タワーマンション節税への対応については、引き続き財産評価基本通達の見直しの検討をするようだ』とあります。そういった意味で、今回検討されている改正だけでなく、今後の動きにも注意が必要でしょう」
【取材協力税理士】
久乗 哲(くのり・さとし)税理士
税理士法人りたっくす代表社員。税理士。立命館大学院政策科学研究科非常勤講師、立命館大学院経済学研究科客員教授、神戸大学経営学部非常勤講師、立命館大学法学部非常勤講師、大阪経済大学経済学部非常勤講師を経て、立命館大学映像学部、経営学部、法学研究科非常勤講師。第25回日税研究賞入選。主な著書に『新版検証納税者勝訴の判決』(共著)等がある。
事務所名 :税理士法人りたっくす
事務所URL:http://rita-x.tkcnf.com/pc/
(弁護士ドットコムニュース)