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MY FIRST STORY、初武道館公演で掲げた新たな夢 Hiro「彼らを超えて彼らよりもデカくなる」

2016年11月28日 15:02  リアルサウンド

リアルサウンド

Hiro(Photo by HayachiN)

 「俺の人生を全てかけるから、越えなきゃいけないやつが1人だけいる。最後の決着をつける相手、もう誰か分かってるよな。人生で最初で最期の敵、5年前必ず超えると誓った、実の兄ーーONE OK ROCKだ」


(参考:ライブ写真はこちら


 11月18日に東京・日本武道館で開催されたMY FIRST STORYのライブツアー『We're Just Waiting 4 You Tour 2016』ファイナル公演のラストで、Hiro(Vo)はこう言った。2011年の結成から5年、彼らは武道館という念願のステージに立ち、バンドのすべてを音楽と言葉で語った。


 ライブのスタートはSEの「Weapons」から「Nothing In The Story」「ALONE」と最新アルバム『ANTITHESE』をそのままに披露。武道館の中心に建てられたステージには中央でドラムを叩きながら登場したKid'z(Dr)、円形ステージの縁にHiro、Teru(Gt)、Nob(Ba)が立っていた。ステージが回転しながら行われるライブは、武道館にいるオーディエンス全員と3人が正面から対面する。炎が燃え上がるステージで繰り広げられるライブは、始まって間もなくオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んだ。


 観客のシンガロングを交えた1stシングル曲「最終回STORY」を披露すると、この曲で夢への一歩を踏み出したMY FIRST STORY結成の原点となった、あるバンドの武道館ライブをHiroが振り返った。


 「6年前の11月28日。武道館で彼らのライブを見た時、本当に衝撃でした。こんな素晴らしい場所で何千人の人を前にして、その全員を熱狂させて。歌ってる姿を見て、僕もいつか人の心を動かせるような人間になりたいとそう思って、このバンドを組みました。そしていつか、彼らと一緒にライブをやるのが僕の夢でした」


 しかし、いくつものステージで堂々と音楽を鳴らし続けた5年間には、色んな苦悩があったと続ける。


 「でも、思い描いてた理想と現実は全く違うものでした。この5年間、彼らには何度も何度も道を潰されて、フェスにも出させてもらえず、他のバンドとの交流もできず、僕らはただ、自分たちでCDを作ってツアーに回るのが精一杯でした。もっと自分たちのやりたいようにやりたかっただけなのに。ただ音楽が好きなだけだったのに。それでも“兄を尊敬して追いかけてる”、“親に頼って生きてる”、そんなレッテルを貼られて、何一つ言い返すこともできず、ただ笑ってやり過ごす毎日の連続でした。正直、今は、名前を聞くだけでも道を塞がれ続けた5年間の思い出が走馬灯のように蘇ってきます」


 そこから、MY FIRST STORYが新たに掲げた夢ーーそれが「彼らを超えて彼らよりもデカくなる」(Hiro)ということ。


 『ANTITHESE』というアルバムは、Hiroが“彼ら”に対し、「全てを凌駕する」という誓いを立て、6年前の当時、武道館公演を成し遂げる前に“彼ら”がリリースしたアルバムと同じ曲調、曲順で制作したものだったことも明かされた。さまざまな葛藤を抱えながらも諦めずに活動を続けてこれたのは、Hiroの背中を押してくれたメンバー、スタッフ、ファンの存在があったからだと、改めて感謝の思いを述べた。


 その後も、マイクを握り締め、鋭い目線で真剣に歌い上げるHiro。彼らの強い思いはそれぞれの楽器で音に反映され、武道館に響いていく。『ANTITHESE』収録曲を中心に披露したあと、各メンバーひとりひとりもこれまでの活動を振り返り、武道館ライブの夢を達成した喜びを語った。


 曲間には、Hiroのこれまでの人生を見立てたようなショートムービーが映し出された。映像から流れる「ずっと、ひとりぼっちだった」というメッセージを受け止めるように「君の唄」「「花」ー0714ー」「Love Letter」と愛情をテーマに歌うバラードナンバーを披露。入場時に配られた時計型LEDライトも点灯し、武道館に集まった人々のぬくもりを感じさせる温かい空気に包まれた。


 3曲を終え、Kid'zがどっしりとした重みと厚みのあるビートを叩き始める。拍手を煽った後に鼓動のように響くバスドラのソロ演奏を披露したあと、Nobの強靭なスラップ、Teruの歪んだギターで会場をわかし、3人の音が重なり合う怒涛のセッションに、オーディエンスは最高潮の盛り上がりを迎えた。


 ライブ本編の最後に映し出されたショートムービーのストーリーは、先の映像でひとりぼっちだった少年が、ある友人と出会うという物語。Hiroは「いつか必ず恩返ししたかった。もう彼は2度と手の届かないところに行ってしまった。でもたまに夢に出てきてこう言うんだ、『お前最近楽しいか』って。『俺はすげえ楽しいぜ』って。K、俺頑張るよ。もし良かったらみんなの声も聞かせてくれないかな、あいつ喜ぶと思うからさ」と、K(Pay money To my Pain)へ捧げた楽曲「Someday」をオーディエンスの大合唱とともに歌い上げた。


 本編の最後、武道館という夢のステージをやりきったHiroは、彼らが次に向かう場所を示した。


「本当にありがとう、今日この1日で俺の人生すべてが報われた気がするよ。今まで何度も死んで諦めてやるって思ってた。必死に生き続けてやっとここに立つことができたんだ。苦しくて長くて、辛い22年間だった。でも、俺にはまだやり残したことが1つだけある。今日1日が無駄にならないように、5年後、2021年、日本最高峰の場所、東京ドームで俺らがナンバー1だってこと証明してみせる。やっと同じステージに立てたんだ。信じて待っててくれ武道館!」


 本編ラストの曲「不可逆リプレイス」では、Kid'zの元に集まり、一斉に最後の音を鳴らした。メンバーが会場を後にすると、暗転して映し出された映像に、歓声が響き渡る。再びステージが照らされ、そこには2015年末より活動を休止していたSho(Gt)の姿が。メンバーがステージに戻った頃、Shoの鋭利なギターが鳴り響き、再び5人で「ALONE」を披露。「やっぱり5人じゃないとしまんねぇよな」というHiroの言葉を聞いたオーディエンスは、大きな歓声をあげていた。


 Shoは「今日僕が立っているこのステージ、これは武道館っていう僕らが最初に目指したステージで。この時間をみんなと共有したいっていう思いと、MY FIRST STORYをお祝いしたいという気持ちがあってここに置きに来ました」と語った。ShoのためにHiroが書き下ろしたという「We’re Just Waiting 4 You」の演奏中、HiroがShoの側へ駆け寄り歌う姿が印象的だった。


 そして、5人が揃った最後のステージにHiroが残したのは、“2つの家族”についての思いだった。


「ようやくこのバンドが1つのものに向かって歩き出した今、僕には今日、なんとしてでも伝えたいことがあります。僕が小学生の頃、気づけばバラバラになっていて、それを止めるには当時の僕は幼すぎました。何もできることはなかった。そしてバラバラになった形が今、新しくもう1つの形になろうとしてる今も、僕の名前が挙がることはありません」


 Hiroが「もうこの新しい形がなくならないように、そして、この思いが今日で届くように。この歌を歌うのは今日が最初で最期にします」と言って演奏がスタートした「Home」。歌いだしで泣き崩れたHiroを支えたのは、メンバーとオーディエンスの声だった。曲の最後にHiroは「お父さん、お母さん聞こえてますか、僕の声。いつか必ず5人で集まれる日を心から願ってる」という言葉を残し、武道館のステージを完遂した。


 MY FIRST STORYとHiro、そしてメンバーが5年間抱えていたすべての思いを明かした武道館公演。しかし、その思いは、これまでのMY FIRST STORYの楽曲に込められてきた思いでもあった。


 メンバーひとりひとりがそれぞれの悩みを抱えながらも、彼らは大好きな音楽のために走り続けてきた。そして、この日彼らが立った武道館のステージは、MY FIRST STORYが評価され、他でもない5人の実力で作り上げたもの。Hiroが「この物語の主人公はMY FIRST STORYだ」と宣言したその言葉のとおり、バンドの物語を作るのは彼ら自身である。信頼関係を改めて強くした彼らに、今後も越えられない壁はないはずだ。


(大和田茉椰)