メルセデス・モータースポーツのトップであるトト・ウォルフいわく、タイトル決定戦となったF1アブダビGPにおけるルイス・ハミルトンの駆け引きは、先々のためにメルセデスが熟考すべき先例になったという。
ニコ・ロズベルグは日曜日、ヤス・マリーナ・サーキットでのレースを2位で終え、チャンピオンを獲得。レースを制したハミルトンは終盤ペースを落として走行し、後方から追い上げる集団のなかにロズベルグを追いやり、逆転タイトルを掴もうとしていた。チーム側は優勝を確実なものにするために無線でペースを上げるよう指示を出したものの、ハミルトンは拒否。これを受けてウォルフは、こういったケースに対処するための取り組みが必要であると語っている。
「ふたつの考えがあった。私の半分は、公の場で組織の評判に傷をつけるということは、チームより自分を優先する行為だと言っていた。これはとてもシンプルなことで、どのようなチームにしろ企業にしろ、無秩序な状態では何も機能しないということだ」
「一方で、現状ではこれが彼にとって、チャンピオン獲得の最後のチャンスなのだとも言っていた。レースドライバーの本能が服従を拒否する場面で、それを求めることはできないのだろう。先例ができてしまったのだから、ここからは先々のために問題の解決策を探っていくしかない。これについてはひと晩寝かせて、明日まで解決策を考えさせてくれ」
チームからの指示を無視したハミルトンに処罰が下る可能性については「それは内部に留めておく。意見をまとめる必要があるが、まだできていない」とウォルフは話している。また、メルセデスが介入するのはチームの勝利がかかっている場合に限ることを強調した。
「ハミルトンの勝利が危うくなった瞬間が、レース中に2度あった。ひとつは(マックス)フェルスタッペンが、ワンストップであるか否かが明白ではないうえに、良いポジションにいたとき。もうひとつは(セバスチャン)ベッテルが(スーパーソフトタイヤを履いていた最終スティントで)2秒速かったときだ」
「この3年間で我々が最も大切にしてきた信念は、それが開幕戦であるか最終戦であるかに関わらず、勝利を確実なものにすることだ。これが今後も正しい信念であるかどうかについては疑問もあるかと思うが、我々はピットウォールでずっとそうしてきた。危ないシーンが2度あったから、ペースを上げるように頼んだのだ」
ハミルトンがレースエンジニアに従わなかったため、エグゼクティブディレクターのパディ・ロウが無線で指示を飛ばすことになった。ウォルフが言うところの「我々の最高司令官」である。将来的にメルセデスが下す決断については、次のように述べた。
「どんなことも可能だ。レース中はより自由に戦わせることを望むかもしれないし、価値が尊重されていないと感じれば、より厳しく取り締まるかもしれない。これらの選択肢は180度異なるものであり、どちらを選択するかは、まだ定かではない」