2016年11月28日 11:12 弁護士ドットコム
兵庫県姫路市にある世界遺産・姫路城の大天守に11月17日昼、小型無人飛行機ドローンが衝突する事件があった。ドローンは大天守の屋根瓦に衝突したあと、近くに落下した。屋根瓦には目立った損傷はなく、ケガ人もなかった。
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姫路城管理事務所によると、この日午前10時15分と午後12時15分ごろ、2つのグループがそれぞれ、大天守前の広場でドローンを飛ばす準備をしていた姿が目撃されており、警備員が注意していた。今回の衝突事件との関連は不明で、県警が現在捜査中だという。
姫路城では2015年9月にもドローンが大天守に衝突しており、姫路市周辺でドローンを飛ばすことを条例などから事実上禁止していた。世界遺産・姫路城でドローンを飛ばしたり、ドローンを衝突させる行為はどんな罪に問われるのだろうか。小林幸平弁護士に聞いた。
「まず、重さ『200グラム以上』のドローンを屋外で飛ばす場合、航空法に注意しなければなりません。
航空法は、ドローンの飛行空域と飛行方法を定めています。ドローンを所定の空域・方法で飛ばす場合、国土交通大臣・空港事務所長の許可・承認を事前に取る必要があります。
この許可・承認を取らずにドローンを飛ばしたときは、航空法違反として『50万円以下の罰金』に処せられる可能性があります」
今回の姫路城の事件はどうだろうか。
「この事件では、飛行空域として、人家の密集地域の上空(DID)を飛ばしたこと、また、飛行方法として、姫路城との間に距離(30メートル)を保たないで飛ばしたことから、ドローンの操縦士は、国土交通大臣の許可及び承認を事前に取る必要がありました。
そのため、ドローンの操縦士は、許可および承認を取っていなかった場合、航空法違反として『50万円以下』の罰金に処せられる可能性があります。
なお、ドローンを飛ばす場所によっては、航空法以外の規制も注意する必要があり、今回のケースでは『姫路城管理条例』違反の問題もあります」
姫路城にドローンを衝突させると、どんな罪に問われるのだろうか。
「世界遺産である姫路城は、文部科学大臣により『重要文化財』に指定されています。
そのため、姫路城にドローンを衝突させて、城を損壊した場合、ドローンの操縦士は文化財保護法違反として、『5年以下の懲役もしくは禁錮または30万円以下の罰金』に処せられる可能性があります。
ただし、犯罪が成立するためには、ドローンの操縦士が、姫路城にドローンを衝突させて城を損壊することを認識かつ認容している必要があります」
今回の事件では、幸いにも屋根瓦等に傷はなかったが、姫路城管理事務所は、弁護士ドットコムニュースの取材に対して「文化財保護の気持ちを持っていただきたい。悪気がなくても、加害者になるので、厳に慎んでいただきたい」とコメントしている。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
小林 幸平(こばやし・こうへい)弁護士
ドローン業界団体JUIDA認定操縦士、同安全運行管理者、同講師。フランチャイズとIT法務コンサルティングを行う法律事務所で勤務しながら、起業家のサポートとロボットなどのイノベーションのサポートを行っている。
事務所名:フランテック法律事務所
事務所URL:http://www.frantech.biz/