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駅のホームで寝た「泥酔OL」が大失態…顧客情報紛失でクビもやむなし?

2016年11月28日 11:12  弁護士ドットコム

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会社の飲み会で泥酔し、「顧客情報」が入ったファイルを紛失してしまったーー。東京都内のIT企業で働くアイコさん(28)の実体験です。


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アイコさんはかつて、投資用マンションを販売する不動産会社で営業として働いていました。ある時、週末の仕事終わりに上司や同僚と居酒屋に行き「前後不覚になるほど」酔ってしまったアイコさん。気がつくと、最寄り駅から遠く離れた駅のホームに体育座りで寝ていたそうです。フラフラになりながらも、何とか家には帰ったといいます。


問題が発覚したのは翌日。鞄に入っていたはずのファイルが、忽然と消えていたのです。「物件のパンフレットや、顧客情報、業者から買った名簿まで入った大切なファイルだったので『社長にバレたら殺される』と真っ青になりました」。


まっさきに居酒屋に電話をかけて確認しましたが、それらしきファイルはないとの返答。「電車の中に置き忘れたのかも」と考えたアイコさんは、JR・私鉄各線に問い合わせました。


「東京駅の落とし物センターでそれらしきファイルを預かっていると聞き、すぐさま取りに行きました。まさに私のファイルで、山手線内に落ちていたそうです」。アイコさんは当時、確かに山手線には乗っていましたが、いつどこでどうやってファイルを落としたのか、全く記憶にないそうです。


アイコさんは会社にバレることなく、無事、落としたファイルを取り戻しましたが、仮にこの件が会社にバレていた場合、アイコさんは何らかの処分を受けた可能性があったのでしょうか。影島広泰弁護士に聞きました。


 ●「解雇まではされないと考えられる」


ファイルの紛失が会社に発覚した場合、アイコさんは処分を受けた可能性はありますが、通常は、解雇まではされないと考えられます。


個人情報保護法のガイドライン(経済産業分野)によれば、個人情報を紛失した場合は、事実調査・原因の究明、影響範囲の特定、再発防止策の検討・実施、影響を受ける可能性のある本人への連絡、主務大臣への報告、事実関係・再発防止策などの公表を行うことが望まれるとされています。


ただし、「紛失等した個人データを、第三者に見られることなく、速やかに回収した場合」には、影響を受ける可能性のある本人への連絡や公表は省略して構わないとされています。今回のケースで、アイコさんが顧客情報の内容を誰にも見られることなく回収したのであれば、ファイルに情報が載っている顧客などへの連絡や公表は必要ないと考えられます。


また、ガイドラインでは、市販されている公務員の職員録のような、誰もが容易に入手できる市販名簿などには上記の対策は必要ないとされています。したがって、アイコさんが持っていた「業者から買った名簿」が、そのようなものであれば、特段の対策は必要ないことになります。


以上から、今回のケースでは、おそらく、会社としては、顧客などへの連絡や公表などを行う必要はなかったと考えられます。


これらを前提にアイコさんの処分の可能性を考えてみます。就業規則や個人情報取扱規程などの内容は会社によって様々ですが、個人情報の漏えいなどを処分の対象にしている会社は多いでしょう。しかし、アイコさんのケースでは、わざと(故意で)漏えいなどをしたわけではありませんし、すぐに取り返していることなどから、処分といっても解雇が相当とまではいえないのが通常だと考えられます。


 ●「むしろ、ファイル紛失を報告しなかったことが問題」


むしろ問題は、アイコさんが個人情報が記載されたファイルを紛失したことを会社に報告しなかった点です。


個人情報が漏えいなどすると、振り込め詐欺などの被害に発展する危険があります。必ず会社に報告し、情報が漏えいした本人への連絡や公表などの対応を、会社が取れるようにしなければいけません。


会社に報告しなかったことについて、就業規則などの定め方によっては厳しい処分もありえると思われますが、それでも今回のようなケースでは、解雇まではできないのが一般的であろうと思われます。


以上から、アイコさんにとっては厳しい処分にならない可能性が高いので、今後もし同様のことが起こった場合は、直ちに会社に報告すべきでしょう。




【取材協力弁護士】
影島 広泰(かげしま・ひろやす)弁護士
03年弁護士登録。ITシステム・ソフトウェアの開発・運用に関する案件、情報管理や利活用、ネット上の紛争案件等に従事。日本経済新聞2015年「企業が選ぶ弁護士ランキング」の情報管理部門で企業が選ぶランキング3位・総合ランキング2位。

事務所名:牛島総合法律事務所
事務所URL:http://www.ushijima-law.gr.jp/