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F1アブダビGP:新ワールドチャンピオン誕生。ロズベルグが父ケケに続く親子制覇

2016年11月28日 00:21  AUTOSPORT web

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初のワールドチャンピオンを獲得したニコ・ロズベルグ
比較的涼しかった土曜日までと比べて、最終戦決勝日のアブダビは朝から暑さに包まれた。しかしF1の決勝は日が傾いた午後5時にスタートを迎える。気温は26度。路面温度は29度まで下がって、FP2や予選と同じようなコンディションでのレースとなった。

 予選3位のダニエル・リカルドは予選後にMGU-Hとそれに関わるCEを交換したが、これはすでに使用してプールしていたコンポーネントで、どのマシンにも予選後のペナルティはなく予選順位のままのスターティンググリッドとなった。

 トップ10の中ではレッドブル勢だけがスーパーソフトを履き、11位以下ではバルテリ・ボッタス、ジョリオン・パーマー、パスカル・ウェーレインだけがウルトラソフトを履き、引退レースのジェンソン・バトン、ロマン・グロージャン、ケビン・マグヌッセン、エステバン・オコン、マーカス・エリクソンがソフトタイヤ、それ以外はスーパーソフトと選択が分かれた。

 チャンピオンシップを争うメルセデスAMGの2台は、クリーンなスタートを切りルイス・ハミルトンが首位をキープした。しかしその後方では、ある意味でチャンピオン争いの鍵を握るフェラーリ勢とレッドブル勢がタイヤスモークを上げながらターン1に飛び込み、6番グリッドスタートのマックス・フェルスタッペンがターン1出口でニコ・ヒュルケンベルグの左サイドポッドに接触してスピンし最後尾まで後退してしまった。

 ハミルトンは毎周のようにファステストラップを記録するが大きく先行することはなく、上位5台がこれについていってその後ろのフォース・インディア勢はあっという間に置いていかれる。スタートで8位に上がったフェルナンド・アロンソもフォース・インディア勢にはついていけず、その後ろにはウイリアムズ勢が続き11位パーマー、12位にバトンが続く。

 7周目にハミルトンがピットイン。しかしピットが隣り合うライコネンもこれに続いたため、ハミルトンはライコネンが前を横切るのを待たなければならず1.5秒ほどをロスしてしまう。翌周にピットインしたロズベルグも同様にセバスチャン・ベッテルを待つこととなり、静止時間は4.8秒にも及んでしまう。

 なんとかライコネンの前でコースに復帰したものの、まだピットインしていないフェルスタッペンに抑え込まれてしまう。それでもチームは「リスクを冒すな」と無理な追い越しはしない。これにライコネン、リカルド、ベッテルが1秒差で続く。

 12周目、バトンがターン9イン側の縁石をヒットして右フロントサスペンションを壊し、万事休す。「今までこんなトラブルはなかったのにね……」と、そのままピットに戻りバトンのラストランは早すぎる終わりを告げた。金曜からトラブル続きのダニール・クビアトも、15周目にギヤボックストラブルを抱えてバックストレートでマシンを止めた。

 コース上ではフェルスタッペン以外の全車がソフトタイヤに交換して走行し、フェルスタッペンは「これが我々にできる唯一の方法だ」と言われスーパーソフトで引っ張るが、15周目には「リヤがタレ始めた」と訴え、20周目には「フェルスタッペンを抜く必要がある、クリティカルだ」と指示されたロズベルグがターン8でインを突く。ここでは抜ききれなかったものの、ターン9の立ち上がりでトラクションの差を生かして抜き去った。

 フェルスタッペンは21周目にピットインし、当然ながらソフトに換えて1ストップ作戦に出る。ロズベルグには「ここから3周がクリティカルだ。彼が最後まで行こうとしているからプッシュしろ」と伝えられ、首位ハミルトンより0.3秒速いファステストラップを連発する。その後方ではライコネン、リカルド、ベッテルの3台が膠着状態に陥り、19周目のターン11でリカルドがライコネンのインに飛び込む場面はあったものの、オーバーシュートしてしまいクロスラインで再逆転されてしまった。

 24周目リカルドはライバルに先んじてピットインし、再びソフトタイヤに換える。そして翌25周目にピットインしたライコネンをアンダーカットすることに成功した。しかし2台ともにフェルスタッペンの後塵を拝することになった。27周目にはフェルスタッペン、28周目にはリカルドがファステストラップを記録してライコネンを引き離していく。

 首位ハミルトンは28周目、2位ロズベルグは29周目にピットイン。ベッテルだけが第2スティントを引っ張り、最後にスーパーソフトを履いてそのグリップを生かす戦略に出る。

 4位・5位のレッドブル勢はロズベルグから4秒ほど遅れており、ハミルトンはペースを46秒台に抑えて後続を引き離さず、レッドブル勢がロズベルグに追い付くのを待つ。しかしエンジニアからは「どうしてそんなにゆっくり走っているんだ? 前のベッテルが脅威になっている」と1分45秒3での走行を要求される。

 37周目、暫定的に首位を走っていたベッテルがピットに飛び込み、スーパーソフトに交換する。これで順位は首位ハミルトン、1.5秒差で2位ロズベルグ、その3.5秒後方に3位フェルスタッペンと4位リカルド、8秒離れて5位ライコネン、ベッテルはその4秒後方の6位でコースに復帰。ベッテルは周囲より1秒以上速い1分44秒台のタイムで猛追を開始する。

 後方ではベッテルと同じく第2スティントを引っ張っていたアロンソが、すでに2回目のピットストップを終えたフォース・インディア勢に次々とパスされて9位まで後退。その後ろには同じく2ストップ済みのマッサが10秒差で控え、1.5~2秒速いペースで追いかけてくる。37周目にアロンソもピットインし、10位のままコースに復帰してスーパーソフトで16秒前のマッサを追いかける。

 42周目には13位を争っていたパーマーがターン17でタイヤをロックさせ、前のサインツに追突。これでサインツはギヤボックスを壊してリタイア、パーマーには5秒加算ペナルティが科された。

 ベッテルは41周目に僚友ライコネンをターン8で難なくパスし、43周目には1分43秒729のファステストラップを記録。46周目にはリカルドをターン11でオーバーテイクする。2位ロズベルグを1秒差でリードする首位ハミルトンには「ベッテルが脅威になっている。ペースを上げてくれ」と指示が飛ぶ。

 ロズベルグも「ペースが遅すぎる、上げるようにリクエストしてくれ」と訴える。チームは「勝つためには1分45秒1のペースで走る必要がある」とハミルトンに指示するが、ハミルトンは「自由にレースさせてくれるって言っただろ?」と反論する。

 51周目にはベッテルがフェルスタッペンをパス。1-2のメルセデスAMG勢の背後まで迫る。メルセデスAMGではパディ・ロウまでが無線でハミルトンに「勝つためにはペースアップする必要がある」と訴えるが、ハミルトンはベッテルより遅い1分46秒台のペースで走り続ける。トップ4が3秒以内で走り続け、タイトル圏内にいるロズベルグが4位まで落ちタイトルの行方が変わる可能性も残るままでレースは最終盤に突入する。

 最終ラップまで緊迫した状況が続いたが、結局最後まで順位は入れ替わらず、ハミルトンがトップでチェッカーフラッグを受け、ロズベルグは2位でフィニッシュして2016年のワールドチャンピオンに輝いた。ロズベルグは父、ケケに続く二代でのF1チャンピオンに輝き、F1ではグラハム・ヒル、デイモン・ヒル親子以来となる、史上2度目の親子制覇となった。

 3位は久々の表彰台となるベッテル、最後尾から挽回した4位フェルスタッペンまで1.685秒差の大接戦のトップ4争いだった。リカルドが5位、ライコネンが6位、フォース・インディア勢が3強チームに次ぐ7位・8位を手にし、9位に引退レースのマッサ、アロンソはマッサを抜き去ることができず10位でフィニッシュとなった。