タイトル争いを演じる2人のメルセデスAMG勢が、予選でフロントロウを独占した。ポールポジションを獲得したのは逆転王座を狙うルイス・ハミルトンだが、12点リードしているニコ・ロズベルグも2番手につけた。もし、このままの順位でフィニッシュすれば、5点差でロズベルグが逃げ切り、初のタイトルを獲得することになる。
しかし、レースは何が起きるかわからない。特にロズベルグ陣営が警戒しているのが、Q2でスーパーソフトでベストタイムをマークしているレッドブル勢の2台である。
ピレリのマリオ・イゾラ(レーシングマネージャー)によれば、「2ストップのほうが計算上は速いが、渋滞を考えると1ストップにも勝機はある」という。
そして、1ストップはスーパーソフトでスタートするレッドブルが可能な作戦なのである。というのも、今回のレースで使用が義務付けられているのがスーパーソフトで、ウルトラソフトを履いてスタートするドライバーには不可能な戦略だからである。
「ウルトラソフトは持っても15周程度。スーパーソフトは25周前後が替え時なので、ウルトラソフトでスタートするドライバーはもう1回ピットストップしなけれはならない」
つまり、レッドブルの2台がピットストップ戦略によってハミルトンとロズベルグの間に割って入るようなことになれば、タイトル争いは一気にハミルトンに有利な状況となる。
ただし、予選で5番手に終わったベッテルは、「スーパーソフトでのスタートがアドバンテージになるとは思わない。彼らは1周目が弱点だから、そこを突いていく」と、レッドブルをかわして表彰台を狙うことを宣言していた。
じつはフォース・インディアのレースストラテジストのバーニー・コリンズも「ウルトラソフトの方がいいタイヤだと思っている。スーパーソフトとの持ちは数周しか変わらないからね」と、レッドブルのタイヤ戦略に首をかしげていた。
ハミルトンにとってはレッドブルが味方となり、ロズベルグとしてはフェラーリにレッドブルを押さえておいてもらいたいという複雑な構図で迎える日曜日の決勝レース。
なお、最後の一戦を迎えるにあたって、メルセデスAMGのトト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター/ビジネス)は、「われわれは最終戦でも2人の戦いに干渉しない。いままでどおり、チームの規約の範囲内で自由にレースをさせるつもりだ」と語っている。