アブダビGPの木曜ドライバー会見は、初の完全2部制で行なわれました。前回は途中でチャーリー・ホワイティングが加わるという2部制でしたが、今回は前半が普通の5名による会見、そして後半がチャンピオン争いの2人のみという、入れ替えありの完全2部制です。
“第1部”では前列にフェリペ・マッサとジェンソン・バトンが座り、「辞める人」特集のような雰囲気に。バトンも「僕もバカじゃないからこれが最後のレースになる可能性があることは分かっているし、戻ってくるかもと思いながら臨みたくはない。300戦もやってたくさんの思い出とともにF1から退くよ」語りました。
「step away」という表現ではありましたが、これまでの言動通り、やはりもうF1で現役復帰する気はないようです。
マッサは前戦ブラジルの“感動的なシーン”について聞かれ「あの気持ちを説明するのは難しいけど、最初はクラッシュしてガッカリだったけどグランドスタンドからの声を聞いていたら泣けてきて、ピットレーンに戻って来たら他のチームのみんなが出迎えてくれてレース中なのにビックリだった」と本音を打ち明けました。
そのマッサと元同僚のキミ・ライコネンに司会者が「彼らが去るのは寂しいですか?」と質問すると「う~ん」とよどむのを聞いて、マッサが「キミがそんなこと言うわけないじゃん!」とでも言いたげな表情で笑いながら「ノ~~~~!」と司会者に目配せ。当のライコネンは「僕も一度去ったから、気持ちは分かる。でも彼らの決めたことだし、辞めたら辞めたで楽しいことはたくさんあるから」とライコネンらしいドライなコメントで期待に応えたのでした。
25分が経過したところで第一部は早々に店じまいとなり、ドライバー5名が退場して入れ替わりにメルセデスAMGの2人が登壇。まずは「カメラマンのために2人で並んで立ってください」と撮影タイムが設けられましたが、入場時からスマホの画面と睨めっこし、この撮影タイムでも先に着席したのはルイス・ハミルトン。
そして始まった質疑応答でも、やや言い淀むような場面が見られ、言葉に気持ちがついて行っていないようにも感じられました。その様子を見る限りでは、この最終決戦を前により大きなプレッシャーを感じているのはどうやら追う側のハミルトンのようです。
「相手のレースで印象的だったのは?」という少し意地悪な質問にニコ・ロズベルグが「彼は素晴らしいシーズンを送ってきたし、素晴らしいレースはいくつもあった」とソツなく答えたのに対し、ハミルトンは同じ質問に「彼のレースなんか見てないし思い出せないよ。特定の1戦だけどうというのはないよ」と、どこか斜に構えた答え。
「2007年や2010年のように最終戦での逆転は?」という質問にも「別に。それが今週末に何の関係もないから」とエリカ様のように素っ気ない態度なのでした。それを横目に、ロズベルグは相変わらず「僕は勝つためにここにいる。目の前のレースで勝つことだけを考えてアプローチする。そのやり方は変えない」と語り、終始余裕の表情を見せていました。
第二部はその後30分間にわたって続き、ハミルトンのエンジンも徐々に掛かっていってずっとそんな様子だったわけではありませんが、2016年のタイトル決定戦を前に両者の意外な精神面の変化が垣間見えた会見だったのでした。