2016年11月24日 10:22 弁護士ドットコム
忘年会の景品を下請け会社に「協賛」という形で提供してもらうーー。都内のIT企業に勤めるRさん(20代・女性)は、毎年会社で行われている慣習に疑問をもっている。
【関連記事:ビジネスホテルの「1人部屋」を「ラブホ」代わりに――カップルが使うのは違法?】
Rさんの会社では、システム開発などを委託している下請け企業も忘年会に参加するよう呼びかけており、その際、「協賛」という形で忘年会の催し物の景品(10万円相当)提供をお願いしている。
Rさんは、下請け企業は、頼まれたら断ることも難しいため、こうした「お願い」は実質強制になっているのではないかと考えている。毎年下請け企業に「おねだり」を打診しているRさんの上司に進言しても、「あくまで自発的なものだ」と相手にされなかった。
「協賛」という形で自発的に提供してもらっている体裁だったとしても、立場の弱い下請け会社に忘年会の景品の提供をお願いすることは、法的に問題ないのだろうか。下請法の問題に詳しい高島秀行弁護士に聞いた。
「下請法は、単なる『元請・下請け』という関係だけではなく、業態や資本金額の差などの要件を満たした事業者に適用されます。
今回のケースでは、これらの要件を満たすかどうかは不明ですが、仮に下請法上の『親事業者』『下請事業者』にあるとして、Rさんの上司の対応は、下請法違反になる可能性はあると思います」
高島弁護士はこのように述べる。どのような点だろうか。
「下請法では、元請企業が下請け企業に対し、『自己のために金銭、役務その他経済上の利益を提供させること』により下請け企業の利益を不当に害することを禁止されています。
Rさんの上司は、『あくまでも自発的なもの』と言っていることから、下請け企業の利益を不当に害するものではないと考えているのでしょう。
しかし、下請け企業が自発的に提供しているといえるのは、経済的利益を提供することが、下請け企業にとって直接の利益となる場合を意味します。
元請企業の忘年会に、対価もなく10万円相当もする景品を出すことは、それにより下請け企業が利益を得られる関係にあるとは評価できないでしょう。
下請け企業の利益とは全く関連性が無いことから、下請け法上は、下請け企業が自発的に行っているとは言えません。
したがって、元請企業が、下請け企業に忘年会の景品を『協賛』という形で提供させる行為は、下請法違反の可能性は高いと思われます」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
高島 秀行(たかしま・ひでゆき)弁護士
「訴えられたらどうする」「企業のための民暴撃退マニュアル」「相続遺産分割する前に読む本」(以上、税務経理協会)等の著作があり、「ビジネス弁護士2011」(日経BP社)にも掲載された。ブログ「資産を守り残す法律」を連載中。
事務所名:高島総合法律事務所
事務所URL:http://www.takashimalaw.com