11月20日、第63回マカオグランプリで開催されたFIA GTワールドカップの決勝レース。2回の赤旗が出る波乱の展開となったが、最終的にウイナーとなったのは、レースで2回目の赤旗の原因となった#8 アウディR8 LMSのローレンス・バンスールだった。
『GT3カーの世界一』を決める戦いとして、2015年からFIA GTワールドカップとして開催されているマカオでのGT3レース。今季はメルセデスベンツ、ポルシェ、そしてアウディがワークス格のチームを送り込み、プラクティスからプライベーターを置き去りにする激しい戦いを展開してきた。
19日の予選レースでは、ポールポジションだったエドワルド・モルタラ(#7 アウディR8 LMS)がスタート直後にスピン。これで首位に立ったバンスール(#8 アウディR8 LMS)が20日の決勝のポールポジションを獲得していた。
20日の決勝では1周目、後方でリッキー・カポ(#17 BMW Z4 GT3)がフィッシャーマン・ベンドでクラッシュ。タイヤバリア補修のために一度赤旗中断となってしまう。再開後のリスタートでは、2番手につけていたアール・バンバー(#911 ポルシェ911 GT3 R)が首位のバンスールをオーバーテイクしていく。
バンスールは抜かれた直後、マンダリン・ベンドのイン側の縁石に乗ってしまうと、そのままアウト側のウォールへヒット。衝撃で車両下部に空気が入ってしまい、バンスールのアウディR8 LMSは宙を舞った後、ルーフからコースに落下。しばらく滑走した後停止した。
幸いバンスールに怪我はなく、自らマシンから脱出すると、悲鳴が上がっていたスタンドからは大きな拍手が起きた。ただ、この時点で即座にレースは赤旗終了。4周終了時点の順位がリザルトとなったため、クラッシュしたバンスールがウイナーとなった。
レース後、バンスールのメディカルチェックのため表彰式も遅れたが、表彰台の真ん中に立ったバンスールは神妙な表情。バンバーはペナルティで4位となったが、2位のケビン・エストーレ(#912 ポルシェ911 GT3 R)、3位のマーロ・エンゲル(#1 メルセデスベンツAMG GT3)から肩を叩かれていた。
「怪我がなかったことにホッとしたし、幸せに思うよ」とレース後バンスールは語った。
「僕のアクシデントは、コースでいちばんスピードが出る部分で起きたんだ。僕はミスをしたし、赤旗の原因にもなってしまった。にも関わらず勝ったんだからね。この勝利をどう評価したらいいのか……。まだ僕にも分からないよ」
一方、アウディスポーツのカスタマー・レーシングを率いるクリス・ラインケは「最も大事なことは、ローレンスが無事だったことだ。これは我々のクルマがどれほど安全だったかを示すものだ」と語った。
「でも一方で、こうした形で勝ったことは少し奇妙だね。すごく厳しいレースだったよ。マカオでは幸運かどうかが大事だけど、成功のひとつの必要条件は、我々がずっとセッションで首位を走っていたということだと思うよ」
「だから私は、FIA GTワールドカップのタイトルを獲得できて満足しているよ」