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Leolaが見つけた、“歌”との新たな向き合い方 「曲を届けるために、私も変化していきたい」

2016年11月23日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Leola

 8月にリリースした2ndシングル曲「Let it fly」が 『Samantha Thavasa Autumn-Winter 2016』のTVCM曲に起用され、お茶の間にもその晴れやかで伸びのあるボーカルを響かせたLeolaが、早くも3作目となるニューシングル『I & I』をリリースする。フジテレビ“ノイタミナ”で放送中のアニメ『舟を編む』のエンディング・テーマでもある表題曲は、ゆったりとしたビートで、ギターや鍵盤の温かな音色に乗せ、そばにいる誰かに優しく語りかけるような曲。リラックスした、それでいて包容力のあるLeolaのボーカルを堪能できる1曲だ。前作『Let it fly』はLeolaが表現する“ビーチミュージック”の可能性や幅広いサウンドを探究した1枚となっていたが、今回はボーカリストとしての可能性を広げて、新しいLeolaの魅力を詰め込んだ作品になっている。


 4月にデビューしてから、作品を重ねるなかで様々な表情を見せるLeola。インタビューではいつも飾らない笑顔を見せて、1曲1曲の背景を楽しそうに語ってくれながらも、自分の“これ”というものへのこだわりや、凛とした揺るがない姿勢も、その言葉で聞かせてくれる。迷いなく、入魂の曲たちを作り育てていることが伝わってくる。そんなLeolaの最新作、そして今現在の挑戦や大事にしていることについて、話を訊いた。(吉羽さおり)


・「切なさを超えた愛情を書きたかった」


ーー「Let it fly」がCM曲としてオンエアされて、私自身も毎日のように聴く機会があってとても印象深かったです。曲の浸透力もこれまで以上に高まったのではと思いますが、何か実感することはありましたか。


Leola:そうですね。渋谷のセンター街でも流れていて、友人やその友達とか、少し遠くの繋がりの方からも、「聴いたよ」という報告をもらいました。自分でもCMを目にする機会がすごく多かったです。でも最初はやっぱり、信じられないというか。自分の曲だとわかっているから、ふと聴こえてきた瞬間につい反応してしまって……まだこの感覚に慣れないですね。


ーーこうして曲が広がっていくという経験は、シンガーとしてのあり方や、創作面で影響はありましたか。


Leola:昔から、誰かの生活のなかに自然に入り込む音楽を作りたいと思っていて、それが夢のひとつでした。なので、日常に映える音をもっと作っていかなきゃいけないなと思いました。


ーーデビュー・シングル『Rainbow』から『Let it fly』では、カップリングを含めてサウンドの幅が大きく広がっていきました。今回の『I & I』は、収録曲の3曲ともトーンが近いというか、よりオーガニックで温かなサウンドの質感が活きていますね。表題曲の「I & I」は、どのように作ったんですか。


Leola:この曲は、もともとライブで歌っていた曲でした。ただ、歌っていた当時は「I & I」というタイトルではなく、歌詞もまったく違っていました。この曲をたまたま聴いてくださったアニメの関係者の方に、「アニメ作品を見て、この曲をもし書き直すとしたらどんなふうに書きますか?」と、機会をいただいたんです。その時はそれが採用されるかどうかは別の話だったんですけど、チャレンジしてみませんかと。それで半年間くらいライブで歌っていた曲を、リリースに向けてもう一度書き直したのがこの「I & I」で。メロディや音の世界観はほとんど変わっていませんが、歌詞と歌詞から生まれるストーリーはまったく違うものでした。


ーーライブで披露していた当時の歌詞は、どんなものだったんですか。


Leola:最初は、冬のビーチミュージックというか、冬の海のさざ波から切なさを際立たせていくような失恋ソングでした。その切なさは、今の「I & I」にもありますね。今回は幸せな内容として歌詞は書き換えていますが、幸せの片隅には切なさもあって。その切なさを超えた愛情というものを書きたかったんです。そういった意味では、前の歌詞の切なさが少し残っているのかなと思います。


ーー書き直していくにあたって、アニメ『舟を編む』のストーリーを汲んだものにしていったんですか。


Leola:ひとつは自分がこの作品の視聴者だったら、どんなエンディング曲を聴きたいかということ。あとは主人公の馬締光也さんではなく、ヒロインである林香具矢さんの感情や視点でのストーリーを書けたら、アニメを見終えて感じてもらえる気持ちがあるのかなと考えながら書いていきました。アニメの余韻を楽しんでもらえたら、エンディングの意味があるのかなって。


ーー今回のようにテーマありきで歌詞を書くことはLeolaさん自身初めてだったと思います。もともと歌詞もあって歌っていた曲ということで、その歌に手を入れていくことはかなり難しさもあったのでは。


Leola:もともとの曲もとても気に入っていたので、その良さを消したくない気持ちも少しあったんです。始めはガラッと変えることができなくて、なかなか書き進められずにいたんですけど、結果的に今回は共作ということで、作詞家の渡邊亜希子さんに助けていただきました。渡邊さんと一緒に書き始めてから、新たにコンセプトが固まりました。渡邊さんはご結婚されてお子さんもいて、家庭を持つ女性の温かさや陰から見守る愛情、お母さんだからこそ書ける歌詞や視点があって、かなり助けてもらえました。ふたりで話をしてアイディアを出し合いながら書き上げていきました。


ーーたしかに、この歌詞には“見守る”という視点がありますね。渡邊さんが提案したワードや感覚で、Leolaさんにはなかったのは、どういうものですか。


Leola:たとえば<仕草が 姿勢が その生き方が どんな言葉よりも 好きにさせるの>というのは渡邊さんのフレーズなんです。最初に言葉を見たときは、歌詞としては少し堅いかなとも思ったんです。でも実際に歌ってみたとき、それがとても柔らかく聴こえたんです。これは私には書けないフレーズですね。ストレートなんだけど、景色やその人がすごく見える感じで。


ーーそれで、曲の筋が見えた。


Leola:背骨が入ったような、ピンとなった感じがありました。


ーータイトルの「I & I」は、ジャマイカでは“We”の意味がある言葉だそうですが、このタイトルにはどう行き着いたんでしょう。


Leola:まずアニメのストーリーを見たときに、香具矢さんと馬締さんは、それぞれの自分の世界を持っていて。別々の世界を持ったふたりが惹かれあって、だからこそ支えあったり、勇気づけられる部分があるんだと感じました。ただ単に、“You&I”や“We”ではなくて、それぞれの世界があることを表現したかったんです。ジャマイカでは、この”I&I“が普通に使われる言葉で、“I”と“I”、それぞれに自立した世界があるのが前提なんですね。お互いを認め合っていることが活きた言葉だなと思って。ふたりにぴったりだと思ったんです。


ーーたしかにそうですね。


Leola:今は、共働きのご夫婦がいたり、カップルでもそれぞれに目指しているものがあったり。それぞれの世界があるふたりっていうのは、結構あることなんじゃないかなって思ったんです。自立したふたりが寄り添うからこそ生まれるものや、葛藤や切なさもあると思いますし。そんななかでも、この人を支えたい、この人と一緒に生きていきたいという思いが強いから、ふたりは歩いていけるという深い愛情が表現できたらと思い、「I & I」というタイトルにしました。


ーーこれまでのシングルでは、メッセージや自分の思いを伝えるという曲でしたが、今回のシングルは歌の対象がすごくよく見えて、そばにいるのを感じますね。人との距離がぐっと近くなった曲だなと思いました。


Leola:ありがとうございます。冒頭の歌詞やメロディからも、寄り添うふたりの景色を具体的に想像してもらえる曲にしたいと思っていたので、そう感じていただけたら嬉しいです。


ーー「I & I」はこれまで以上に深い愛情を描いている曲でもありますが、それを歌で表現するためにどうアプローチしていったのでしょうか。


Leola:今回は共作だったこともあって、等身大の今の自分よりもちょっと背伸びをした歌詞なんです。でもその背伸びをした歌詞を自分の声で表現したくて、レコーディングでは声色やフレーズひとつひとつを大切に歌っていきました。仕上がった音を聴いたときに、「こんなに大人っぽくも歌えるんだ」と思いました。いろんな私を見ていただきたいですし、何よりもこの曲のストーリーを直に感じもらうことが歌い手としての私の役割かなと思うので。


・「自分はこんな歌い方ができたんだって発見があった」


ーーカップリング曲「Winter Magic」は、デビュー・シングルに収録されていた「Summer time」に続く季節の曲ですね。カントリー調の、そしてとてもキラキラとピュアなサウンドが歌とマッチしていますが、こちらはどんなふうに作り上げていきましたか。


Leola:冬のリリースということで、思い切り冬っぽい曲があってもいいなと作った曲ですね。「I & I」からはガラッと変わって、恋の“キュン”ポイントを意識して書いてます(笑)。夢みたいなゲレンデデートの1日、という感じで。


ーー主人公の女の子の気持ちや動きが手に取るようにわかる曲ですね(笑)。


Leola:はい。活発な女子、というか(笑)。


ーーそれは、曲やサウンドからのインスピレーションで?


Leola:そうです。あとはよく、ゲレンデマジックというじゃないですか。スキーやスノーボードに行って、彼がカッコよく見えるというのはよく言われることですよね。でもこの曲は、もともと女の子が夢にも見ていたような憧れの彼で、ゲレンデのおかげでその恋が成就するという、魔法のような1日が書けたらと思いました。


ーーLeolaさんの頭のなかで、想像や妄想が加速していそうですね。


Leola:もう、かなり妄想ですよね(笑)。どんな彼なのかとか、やっぱり迎えに行くなら車がいいんじゃないかとか。前日に迎えに行くねって電話が来たら、そこから眠れなくない?とか。そういう淡~い恋心です。暴走してますね(笑)。みなさんにも、妄想してもらいたいなと思います。


ーーもう1曲が、「MIGHTY GIRL!☆」です。こちらは、『Rainbow』のカップリングに収録されていた「Sing for you」を作曲した野村陽一郎さんが手がけた曲で、アコースティック・ギターとピアノが軽やかな、アップビートのサウンドです。ロックなアンサンブルでいて、オーガニックな温かさがある曲に仕上がっていますね。


Leola:陽一郎さんとは「Sing for you」をもらった段階では、制作以外で一緒にお仕事をすることはなかったんですけど、1stシングルのリリース後からライブのサポートで参加してもらうことも多くなったんです。たくさん話をするなかで、今回のアレンジも仕上がっていって。私を理解してくださった上でできた曲です。


ーー軽やかで洒落っ気のあるバンド・サウンドとLeolaさんの伸びやかなボーカルがマッチしていますね。


Leola:普段から、「こういう曲があったらいいな」「じゃあ作るよ!」って話しているので、かなり私が好きなサウンドになっています。陽一郎さんは、レコーディングにもすべて立ち会ってくれて、ボーカルのディレクションもしてくれるんです。歌詞がギリギリに仕上がったのにもかかわらず、いいじゃんって受け入れてくださって。これは歌詞の世界観に合わせてディレクションをしてもらいました。歌が自分で聴くのが恥ずかしいくらいに、キャピッとしていますね(笑)。ちょっと頼りないんだけど、彼のおかげで前向きに、力強く生きてる女の子を演じたような感じでした。


ーー“演じた”なんですね(笑)。


Leola:そうですね。最初は、もっと歌っちゃっていたんです。でも陽一郎さんから、「歌わなくてもいいよ」と言われて。ちょっとおちゃらける部分などは、演じているような気分でしたね。


ーー歌う上では演じているということですが、歌詞のなかの女の子像と、Leolaさんとの距離感はどんな感じですか。


Leola:この曲は、最初は特にテーマも決めずに、音に触発されて書き始めたので。もしかしたら、もともとそういう心理はあったんだと思いますね。毎日「好きだよ」と、たったひとりに言ってもらえるだけでも自信になったりする。それだけでも幸せって思える瞬間ってあるなと思って。それが、全面に出た曲です。


ーー「Winter Magic」もそうですが、今回登場する主人公は特にパワフルで可愛らしい子が多いですね(笑)。


Leola:突っ走っちゃう(笑)。「MIGHTY GIRLS!☆」は、最初はここまでスピード感を持って突っ走ってなかったんですけど。でもこの曲は、“MIGHTY GIRL”というキャラクターっぽくしようと思ったときに、拍車がかかったというか(笑)。自分からちょっと離せたからエスカレートしたのもあるのかもしれない。振り切ったキャラクターを書けたのは良かったと思います。


ーー今回でまた新しいLeolaさんが見えた気がします。


Leola:自分でもこの1枚に関しては、こんなことできたんだって発見がありました。曲に合わせて自分が七変化したり、曲のテーマに合わせて歌うということでは、かなりチャレンジしました。いろんな意味で、可能性を感じてもらえる1枚になっていたらいいと思います。


・「声も楽器も、温度感が聞こえるものであってほしい」


ーー先ほど歌い方についてもお話がありましたが、声、ボーカルの可能性ということでは、レンジや表現方法が広がったと自分でも感じるところですか。


Leola:デビュー前からは考えられなかったくらいに広がっていますし、あとは演技経験がかなり活きてきたなと思います。ドラマ『ラヴソング』(フジテレビ系月9ドラマ)でお芝居に挑戦させてもらったことで、自分の違う一面も見ることができて。普段の自分から突き放しても、そこにちゃんとストーリーがあって、自分の声という芯があれば、作品として成立するんだと思うことができました。


ーーなにか新たにトライしていることはありますか。


Leola:曲作りに関してはもっと視野を広くしたいと思っています。この3枚でもかなり幅は広がっているんですけど、ギター・サウンドと新しい音との融合などもどんどんやっていきたいと思っています。いろいろチャレンジしたいなと思いつつも、素朴さは残したいですね。ひとつひとつの楽器の音がちゃんと聞こえるとか、自分の声がちゃんと聞こえるとか。


ーー生の音にこだわって、丁寧に作られているのは伝わります。たとえば「I & I」にしても、ピアノやギターの他にもストリングスも入っていたり、たくさんの楽器が使われていますが、それがゴージャスになりすぎない、人肌の感覚を残してる。


Leola:そうですね、引き算は常に考えていたいんです。これが本当に必要なのか、っていうのはアレンジをしながら考えています。


ーーその人肌感や引き算の感覚は、Leolaさんの音楽のスタイルでもある、オーガニックなビーチミュージックが根底にあるからだと思います。いい意味で、今っぽくない。それでいてレイドバックしているわけでもない、温かで心地いい音楽になっていますね。


Leola:結果的なんですが、わりと懐かしいサウンドだと表現されることが多いです。自分では特に意識していないのですが、そういうところに私自身が温かさを感じているのかもしれないですね。古き良き、じゃないですけど、いいと思うものは、ちゃんと残したいんですよね。実は今っぽいものはあまり得意じゃないっていうのもあるんですけど(笑)。自然とできたものがこういう音だったら、それは私らしくていい気がします。


ーー前作では音とサウンドの変化が、今回はボーカル面での変化もありました。デビューから短い期間でめまぐるしく変化をしているように思いますが、ご自分ではこの変化のスピードをどう捉えていますか。


Leola:ドラマで演技に初挑戦するときもそうでしたが、なんでもやってみないとわからないと思っているところがあって。いいものができるなら挑戦したいなというのが、私のモットーなんです。聴いている方はもしかしたら、「どれが本当のLeolaなの?」って思う人もいるかもしれないんですけど、でもその曲を一番いい状態で届けるためには、私も変化することが必要なんです。いい方向に変わっていくのなら、チャレンジはやめたくないんです。それはなにに対しても思います。


ーー作品を重ねるなかで変化がある一方で、Leolaさんの音楽でこれだけはブレないものというのは、改めてなんだと思いますか。


Leola:人間の温かさですね。音の引き算をして、声でも楽器でもそれぞれの温度感が聞こえるものであってほしいというのは必ずあります。そしてどの曲も、オーガニックな音楽に聞こえたらいいんじゃないかなって。ちゃんと人の手を加えて作られているものを残していきたいです。(取材・文=吉羽さおり)