2016年11月23日 10:32 弁護士ドットコム
隣家が飼う「4匹の犬」の鳴き声に悩まされている方が、弁護士ドットコムの法律相談に質問を寄せました。「毎朝6~7時、8時にかけて1時間ほど鳴く、他にも10~30分ほど、何回も鳴きます。一匹が吠えだすと、他の犬たちも吠え出し、大変な騒音です」と、なかなか大変な状況にあるようです。
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4匹の内、3匹はビーグル犬で、すべて室外飼い。庭に犬舎を置いていますが、相談者の家側にあるため、「窓を閉めていても鳴き声がガンガンに響く、窓を開けられない」という状況です。他にも「テレビの音が聞こえにくい、子どもが勉強に集中できない等、生活に影響があります」。
これまでも相談者のほか、近所の人たちが役所や保健所に連絡してきました。「夜間の鳴き声は減りましたが、まだまだうるさいです。散歩の距離や時間が短いので犬もストレスが溜まっているのかもしれませんが」と考えており、さらなる対応として「飼い主を訴えることは可能でしょうか?」と聞いています。
このような場合、どのような訴え、解決方法があるのでしょうか。村頭秀人弁護士に聞きました。
●「損害賠償請求」と「差し止め請求」
隣人間の問題ですので、いきなり裁判所の訴訟を提起するよりは、まずは話し合いの手続をとることをお勧めします。当事者間だけでの話し合いだけでなく、「都道府県公害審査会」の調停、「ADR機関」(各地の弁護士会が設置しているものなど)など、第三者を交えた話し合いの場も設定できます。
話し合いでまとまらなかった場合には、裁判で「損害賠償請求」と「差止請求」をすることになるでしょう。
「窓を開けられない」「子どもが勉強に集中できない」ことなどによる損害に対しては「損害賠償請求」が考えられます。また「差止請求」では、具体的に言えば「何デシベル以上の犬の鳴き声を原告(相談者)の自宅敷地内に侵入させてはならない」といった請求ができます。
また、今回のような騒音問題をめぐる裁判では、「受忍限度」を超えるか否かが争点です。社会生活上我慢すべき程度を超えた騒音であれば「受忍限度を超える」といいます。しかし、受忍限度を超えるかどうかについては、明確な基準があるわけではありません。
被害者側の事情も、加害者側の事情も含んだ「諸般の事情」を総合的に考慮して判断されるものです。担当する裁判官の考え方に左右される面も大きいので、受忍限度を超えるか否かを予測するのは非常に難しく、「こういう場合に受忍限度を超える」といった明確な基準を示すことはできません。
●「受忍限度」はどのように評価される?
受忍限度の一つの有力な指標としては、「鳴き声の音量が、その地域における法律や条例で定められた騒音の規制値を超えているかどうか」ということが考えられます。ただし、音量だけで結論が決まるわけではなく、鳴き声の発生する時間帯、頻度等や、飼い主が苦情に誠意をもって対応したかどうかといったことも重視されます。
また裁判では、証拠も必要です。証拠としては、騒音計による騒音の測定があげられます。そのほかに、犬が鳴いている状況を(音だけでなく、その場の状況も含めて)ビデオカメラで記録することが望ましいです。
【取材協力弁護士】
村頭 秀人(むらかみ・ひでと)弁護士
平成12年弁護士登録、平成21年~24年東京弁護士会公害・環境特別委員会委員長、平成25年4月より東京都環境審議会委員。著書「騒音・低周波音・振動の紛争解決ガイドブック」(慧文社、平成23年)
事務所名:畑法律事務所
事務所URL:http://www.kougailaw.jp/