全日本F3選手権のドライバーたちがこぞってマカオグランプリに出場していた週末。そこからはるか西方のバーレーン国際サーキットでは、今季全日本F3選手権でF3-Nチャンピオンを獲得した片山義章が、WEC世界耐久選手権のサポートレースとして行われた『MRFチャレンジ』に出場した。
MRFチャレンジは、インドのタイヤメーカー『マドラス・ラバー・ファクトリー(MRF)』が主催している設立6年目のシリーズ。シャシーはダラーラ、エンジンはフォードの2リッターで、マウントチューンという会社がチューニングを行っている。
シャシー自体はF3より少し下のレベルの物を使っているということだが、ギヤボックスやサスペンションはF3と共通とのこと。マシンは、インド国内で一括メインテナンス。エンジニアとナンバーワンメカニックをヨーロッパから招聘し、その他はインド人のメカニックたちがクルマの面倒を見ている。
2016年は冬の間にバーレーン、ドバイ、ニューデリー、チェンナイと4大会が行われ、各大会ともに4レースずつを開催。全16レースで争われる。前述のように主催者がクルマをすべて管理し、スペアカーも3台用意。すべて保険に加入していることから、もしドライバーがクラッシュしても、スペアパーツ費用は保険で賄われるとのこと。参加ドライバーは移動やホテル・食事代など込みの費用(日本円で数百万円程度)を支払えば、シリーズ参戦することができる。
今回、片山がこのシリーズに参戦したのは、「この冬、父がオーナーを務めている岡山国際サーキットが改修工事に入って、練習走行ができなくなるため」というのがひとつの理由。また、かねてから日本人選手をこのシリーズに参加させたい意向をもっていた(実際、過去にも日本人は参加しており、昨年は松下信治もスポット参戦)、さらにナレイン・カーティケヤンの勧めもあったという。
では実際、初めてのMRFチャレンジに出た片山のシリーズに対する印象はどうだったのだろうか? 感想を聞いた。
「来年、F3-Nからステップアップしようと思っているので、その練習のためにというのもありますし、ナレインさんにいただいたチャンスだったので、このシリーズに出場することを決めました。僕はレース経験が少ないので、そういうのを補うためです」と片山。
「クルマもサーキットも初めてですけど、僕と同じように初めての人も多いですし、こういう状況の中で練習も2回だけで、自分の柔軟性を試せるかなと思います。クルマに関しては、最初はF3と同じと聞いていたんですが、MRFのクルマはダウンフォースが少ないですね。スピードもF3より遅いです。コースに砂が出ているせいもあるんでしょうけど、タイヤも全然グリップしなくて、FIA-F4に近い感じがしますね」
「海外で走ったのは、これが2回目。少し前にモンツァでF3のテストに参加しました。その時、マカオでも活躍しているような速い選手もいるなかで、真ん中より上にいられたので好印象でした。だから今回もイケるかなと思ったんですけど、厳しいですね。今回ここにはひとりで来ました。他のドライバーは、みんなマネージャーと来ていますけど、僕には誰もついてきてくれなくて(苦笑)。英語がつたなくて、分からないこともあるんですけど、何回も何回も聞いて、自分なりにコミュニケーションは取れていると思います。でも、もっと勉強しなきゃと思いました」
「将来は海外のレースにも出たいと思っているので、今回のことはいい経験になっています。どうしたら速く走れるかずっと考えていなくちゃいけないですし、レースでは外国人選手がブレーキでズバズバ突っ込んでくる。僕はその点は奥手なので、レースをもっと勉強しなくちゃいけないと感じました。僕はカートとかも全然やっていなくて、今、レースを始めてやっと3年経ったところ。父が岡山国際サーキットを経営しはじめてからなので。最初は全然勝てなかったんですけど、今年ようやくF3-Nでチャンピオンを獲れて、どんどん成長しているところなので、いろんなレースに挑戦したいと思っています」。
バーレーンでの片山の成績は、いずれのレースでも参加全車中ほぼ真ん中の10位前後だったが、次の大会からはどんな走りを見せてくれるのか。近年のドライバーとしては珍しく『レースエリートではない”片山の今後のがんばりが楽しみなところだ。