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RADWIMPS、桑田佳祐、三浦大知…ヒットを後押しする、他ジャンルとの“意味あるコラボ”

2016年11月22日 13:01  リアルサウンド

リアルサウンド

RADWIMPS『人間開花』(通常盤)

 「“ドラマとかアニメのタイアップ取れて良かったね”みたいなカルチャー、まだあるんですか?」と、とあるバンドのメンバーに言われたのはもう5年ほど前で、当時は「確かにそうだよな」と同意したのだが、ここ数年はタイアップの有効性を実感させられるケースが頻繁に起こっている。ドラマ、映画、イベント、スポーツ、ゲームをはじめとする他ジャンルと意味のあるコラボレーションができれば、その作品の浸透度がアップする可能性は十分にあるのだ。


(関連:RADWIMPSが『君の名は。』で発揮した、映画と音楽の領域を越えた作家性


 というわけで、最初はRADWIMPS。今週のおすすめというより、まちがいなく2016年を代表する1枚であるニューアルバム『人間開花』の資料には「RADWIMPS史上、最も開いたアルバム。」「2枚目のデビューアルバム」という言葉が記されているが、それは言うまでもなく映画『君の名は。』のサウンドトラックを手がけたことの効果である。「前前前世[original ver.]」を収録した本作は、エレクトロ、ヒップホップなどの要素を自由に取り込みながら、映画『君の名は。』にも通じるような“君と僕”の物語がどこまでもピュアに描かれている。過去最高にポップに振り切ったと言っていい本作は、映画によってRADWIMPSと初めて出会った10代のリスナーにも強くアピールするはずだ。


 前作『ヨシ子さん』に続く、2016年2作目となる桑田佳祐のニューシングル『君への手紙』は映画『金メダル男』の主題歌。監督の内村光良から主題歌のオファーが手紙で届き、それに返事を書くように制作されたというエピソードからもわかるように、このロッカ・バラードには“大人の男の友情”というテーマが根底に流れている。フォーキーかつビートルズ風のアレンジとともに聴こえてくる<キミに捧げる 歌がある>というフレーズによって、思わず涙腺が緩む年配のリスナーも多いはず。夢を追いかけた若き日を思い、悲喜こもごもの日々を送る市井の人々に寄り添う桑田の歌には、すでにスタンダードナンバーとしての風格が備わっている。


 今年『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に初出演し、そのパフォーマンス能力に注目が集まるなど、シンガー/ダンサーとしての評価が(ようやく!)高まっている三浦大知の新曲「(RE)PLAY」は“1on1”(ブレイクダンス世界大会「Red Bull World Final 2016」)のテーマソング。クラシックなスタイルであるブレイクビーツを現代的なダンスチューンに導くサウンドメイク(三浦の盟友とも言えるUTAはこういうアレンジが本当に上手い)、“(RE)PLAY”というキャッチーなフレーズを交えたボーカルがひとつになったこの曲からは、現在の三浦大知の充実ぶりが感じられる。ブレイクダンス、ホッピングなどのスペシャリストが出演したMVもぜひチェックしてほしい。


 名門レーベル<Def Jam Recordings>移籍第一弾となるニューアルバム『DAWN』をリリースするAK-69も、さまざまなジャンルとつながりながら知名度を上げてきたアーティストだ。とくにシンクロ率が高いのがスポーツ選手。数年前からプロ野球選手の登場曲使用率NO.1という称号を獲得、さらにシングル曲「Flying B」が“内村航平選手が試合前に聴く曲”として知られたことも記憶に新しいが、聴く者を鼓舞し、アゲまくるパワーはこのアルバムでも存分に発揮されている。般若、2WINなどのヒップホップアーティストのほか、UVERworld、清木場俊介などが参加していることも、AK-69の“つながる力”を証明していると言えるだろう。


 今年の夏にルミネマン渋谷で“KEYTALK祭”を開催するなど、ライブ以外の場所でもバンドの魅力を訴求してきたKEYTALKの9thシングル『Love me』の表題曲は首藤義勝(Ba/Vo)の作詞・作曲によるダンスポップチューン。徹底的にポップであり、ライブ会場で初めて聴いてもすぐに盛り上がれる楽曲だが、単純な4つ打ちではなく、ソウルミュージック的なテイストを取り入れながら、ポップスとしての精度を高めているところがポイント。バンドシーンの枠を超え、幅広くJ-POPユーザーにも受け入られるナンバーだと思う。 (森朋之)