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9mm Parabellum Bullet、“滝休養前”の壮絶なステージ 彼らがツアー最終公演で見せたもの

2016年11月21日 18:32  リアルサウンド

リアルサウンド

9mm Parabellum Bullet(写真=橋本 塁(SOUND SHOOTER))

 9mm Parabellum Bullet(以下:9mm)が11月5日、『9mm Parabellum Bullet TOUR 2016 “太陽が欲しいだけ”』の追加公演を東京・豊洲PITで開催した。


(参考:メタルの枠を押し広げた「ギターの鉄人」 9mm Parabellum Bullet滝善充の魅力を再検証する


 同ツアーは当初、ワンマンライブツアーとして全国17公演を予定としていたが、6月19日に開催した日比谷野外大音楽堂のワンマンライブで滝 善充(Gt.)が左腕の不調を訴え、一部ツアーをキャンセルしながらも、ゲストヴォーカルを迎えたアコースティックユニットとバンドの2編成や、オープニングゲストを呼んだ対バン形式などを交え、今回の公演を迎えることができた。


 ライブが始まる直前にステージに現れた菅原は、「これまでやってきたワンマンツアーの尺は、なかなか演奏できる状態じゃなくて。演奏ができるMAXの曲数、時間の中で最大限、このツアーをやってきました。今日も普通のワンマンツアーより短いんだけど、最初のカウントからMAXでいくんで、みんなも最初から全開できてください」と、現在のバンドの状況とツアーの経緯を説明しながら、ライブへの意気込みを語った。


 今回の公演にゲスト登場したのは、9mmとは初めての対バンとなったGRAPEVINE。拍手に迎えられながら登場した田中和将(Vo./Gt.)は嬉しそうな表情で「これが9mmのお客さんか」とコメントし、会場を和ませた。1曲目に演奏された「FLY」ではのびのびとした田中の歌声と西川弘剛(Gt.)によるギターの音色で、耳に残るハーモニーを届けた。亀井亨(Dr.)が繰り出すドラムのビートから勢いをつけて始まる「EVIL EYE」、「MISOGI」ではミドル・テンポのビートとソリッドなギター、インパクトある歌詞のフレーズを思いきり歌い、ワイルドなロックンロールを披露。続く「CORE」では、緻密なアンサンブルが幻想的な照明演出により彩られ、会場全体にGRAPEVINEならではの空間を作り出していく。凄まじい音圧により、徐々に熱を帯びていくようなロックナンバーに観客は酔いしれた。


 続いて、真っ暗なステージが真っ赤に染まると、9mmのメンバーが登場した。サポートギター武田将幸(HERE)を含めた5人が、息を整えるようにそれぞれの楽器を思い切り鳴らし続ける。かみじょうちひろ(Dr.)のカウントを合図に「太陽が欲しいだけ」の演奏を全身全霊を捧げる勢いでスタートすると、オーディエンスも声を高々にあげた。続く「Discommunication」で歓声は一層大きくなり、会場の雰囲気はGRAPEVINEの幻想的な空間から一変、熱気に包まれた。滝は曲ごとにギターとシンセサイザーを担当し、「インフェルノ」や今回のツアーで初めて披露した「ロンリーボーイ」では、ステージから前のめりになりながら激しいギタープレイで魅了した。オーディエンスからの歓声とメンバーの名を叫ぶ声が鳴り止まず、菅原は「最初から全開で来てくれてありがとう、みんな」と、それに応えた。


 菅原から「みんなの前で演奏するのを楽しみにしていた」と紹介された曲は「スタンドバイミー」。雨が上がった後の空を歌った同曲は、メロウなファンクナンバーで、9mmの楽曲の幅の広がりを感じさせた。菅原は「急だったにも関わらずアコースティックに出演してくれた仲間やゲストバンドのみんな、そして今日出てくれたGRAPEVINEに本当に感謝します」「これからも山あり谷ありでやっていくんで、みんなの力貸してください」と今回のツアーを振り返りつつ、熱い思いを語った。


 MCの後は「反逆のマーチ」でライブの盛り上がりに再び火をつける。マーチ風のフレーズをハードロックに奏でていく9mmサウンド全開の同曲は、中村和彦(Ba.)が滝のぶんもと言わんばかりに、思う存分アグレッシブなベースパフォーマンスを披露した。かみじょうが叩くひとつひとつビートに重みを感じる「Lost!!」、滝が再びギターを手にとって弾き鳴らす「The Revolutionary」と飛ばし、菅原の「ありがとう」という言葉を最後に「生命のワルツ」を再び真っ赤なライトに包まれながら披露。曲中に菅原が左手の拳を挙げると、シンクロするかのように会場の手が一斉に上がり、最後は5人がそれぞれの楽器を自由にかき鳴らしたあと、彼らはステージを後にした。


 アンコールの拍手に応えて登場したのはメンバーの4人。菅原が「ツアーの最終日に最後に1曲だけ演奏しようと思うんだけど、武田くん抜きで4人でやります」と宣言すると歓声が上がった。お馴染みのギターのスラップが聞こえると、さらなる喜びの歓声が上がり、曲に合わせた掛け声とともに演奏が始まったのは1stミニアルバム『Gjallarhorn』収録曲「Talking Machine」。最後の曲を弾き終わりギターを掲げた滝の姿は、まさに達成感を味わっているようだった。


 エンドロールでは新作の発表とともにツアー中の映像が映し出されていた。今回のツアーが彼らにとって困難を極めたものだったのは間違いないだろうが、各会場で彼らが生み出した光景は、支え合ったバンドや仲間、ファンとの絆が一層深まったことを象徴していた。滝がアンコールでギターを弾き切った姿は、会場にいた全ての人の目頭を熱くした。


 11月9日には、滝が9mmでのライブ活動を休養することを発表した。が、バンドは5日のライブ終盤、2017年春に新アルバムのリリースを明かすなど、まだまだその勢いは止まらない。彼らが手掛ける新曲を楽しみにしながら、再びステージで滝がギターを響かせてくれる日を待ちたい。


(文=大和田茉椰)


9mm Parabellum Bullet
『9mm Parabellum Bullet TOUR 2016 “太陽が欲しいだけ”』
11月5日(土)・東京・豊洲PIT
■セットリスト
1.太陽が欲しいだけ
2.Discommunication
3.モーニングベル
4.インフェルノ
5.ロンリーボーイ
6.スタンドバイミー
7.反逆のマーチ
8.Lost!!
9.The Revolutionary
10.生命のワルツ
en
11.Talking Machine