2016年11月20日 09:12 弁護士ドットコム
定時退社したら、そのまま副業先へーー。そんな人が、珍しくない時代が来るかもしれません。政府は、職場以外で働くテレワーク、兼業、副業など、これまでにない働き方を進めようとしています。しかし、私たちの暮らしにとって、心配はないのでしょうか。
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ツイッターでは「今までは残業代がないと生活がなりたたなかったが、今度は副業も持たないと生活出来なくなる」といった反応や、「8時間働いて、別の所で4時間働くよりは、一か所で12時間働いて、残業代貰った方が得なんだけど」といった意見も。
副業のススメは、残業代抑制のためであって、総労働時間が増える上、手取りが減りそう・・・。そんな危機感を感じている人もいるようです。本当に残業代は発生しないのでしょうか? またコッソリ副業をすると、どんな場合にバレるのでしょうか。野口五丈税理士に聞きました。
「労働基準法」では、労働時間を原則として「1日8時間以内、1週間40時間以内」「別々の事業所で働く場合でも、労働時間は通算する」と、定めています。
そこで、兼業をしている人の場合には、本業と副業の労働時間を合算して判断をします。通算した結果、「1日8時間、1週40時間」を超えて労働する場合には、超えた部分は、「時間外労働」いわゆる「残業」扱いとなり、当然、残業代(時間外手当)が発生します。
正社員・業務委託・アルバイトなど、いずれの雇用形態にも適用されます。
▲会社員が、ダブルワークをする場合
企業としては社員に仕事をしてもらうために「労働基準法」を守る必要があり、超過時間に対応する残業代を支払う義務があります。
問題は、本業と副業どちらの側が支払うべきか、です。結論としては、労働者にとっての「本業」か「副業」かに関係なく、1日の総労働時間が8時間を超えた側の会社に支払義務があります。
たとえば、本業の出勤前に、レジのアルバイトなど副業の仕事をするケースです。本業での労働時間がきちんと8時間で収まっていても、1日の総労働時間には副業も含みますので、8時間を超えれば、本業側の会社に時間外手当を支払う必要がでてくることになります。
逆の場合も同様で、本業の後に副業を行う場合には、8時間を超えた分から、時間外手当を支払います。本業が8時間以内で終わった場合には、副業先が時間外手当を払うことになるのです。
現状では、副業をされる方は、本業に黙って行なっている方が多く、残業代請求の発想はないかもしれません。しかし今後、政府の音頭で、会社員の副業が増えて行くことになれば、当然このような残業代の支払い義務を周知していく必要があります。
▲フリーランスの場合
フリーランスで業務委託契約を結んでいると、労働基準法の適用外となり、業務委託契約の内容に依拠することになります。つまり、業務委託契約に残業代の支給が記載されていれば、残業代を支給する必要がありますし、記載がなければ残業代を支給する必要はありません。
社会保険にも加入できます。その場合には、労働時間が長い本業で加入することになると思います。所定労働時間が通常の社員の4分の3未満の短時間労働者は社会保険に加入することができません。
そのため、通常の社員の所定労働時間が8時間の会社であれば、6時間以上働かないと副業先で社会保険に入ることはできません。ほとんどのケースで、本業での社会保険加入となるでしょう。
なお、副業を始める場合には必ず本業の就業規則を確認してください。就業規則に副業禁止の文言が含まれている場合は、それを優先した方がいいでしょう。今後、見直しをしていく企業も増える可能性がありますが、現行では、まだ禁止されている企業も多いかもしれません。
もし禁止されている副業を始めた方に、念のためお伝えしますと、副業がバレるきっかけとなりやすいのが「住民税」です。一般的に、会社では所得税・住民税を給料から天引きしています。このうち所得税は、現在の所得に対してかかっているのですが、住民税は性質上、昨年分を今年度に納付する「特別徴収」です。
この住民税の「特別徴収」される税額は、会社からの給与だけでなく、他の所得も合算されて請求される場合があります。給与所得に他の所得が合算されて住民税が請求された場合、会社の経理部がその他の所得の存在に気付くことがあり、その結果副業の存在がばれることになります。
しかし、発覚を防ぐ方法もあります。副業収入を確定申告する際、「住民税を『普通徴収』しますか? 『特別徴収』しますか?」という二つの選択肢がもうけられています。何も選択しない場合には「特別徴収」となりますが、その場合、働いている会社に住民税が必ず請求されてしまいます。
そこで、「普通徴収」にチェックを入れて、副業分を自分に請求されるようにしなければなりません。
ただし、上記の方法は給与所得以外の場合の事で、2か所とも給与所得であるような場合は上記のように普通徴収と特別徴収を分けることは出来ませんので会社にはバレてしまう可能性が高いといえます。副業を「こっそり」することは、税理士としてはオススメはできません。
【取材協力税理士】
野口 五丈(のぐち・いつたけ)税理士
ITベンチャー企業の支援に特化した会計事務所を主宰。節税だけでなく、クラウド会計やベンチャーキャピタルからの資金調達、補助金申請支援(創業補助金、ものづくり補助金)を強みとする。支援実績多数。
事務所名:野口五丈公認会計士事務所
事務所URL: http://itsutake.com/
(弁護士ドットコムニュース)