2016年11月19日 09:32 弁護士ドットコム
政府が「働き方改革」の1つとして掲げているテレワーク(IT機器を活用して、場所にとらわれずに働く手法)について、総務省が中央省庁などの実施状況を調べたところ、22機関のうち、ルールを決めて本格導入したのは13機関にとどまることが報じられた。
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報道によると、政府は、2020年までに労働者の10%強がテレワークを利用することを目標として掲げているが、国家公務員(本省勤務)約4万8000人のうち、2015年度の利用者はわずか3%程度の1592人にとどまっている。情報セキュリティ対策や、持ち帰り可能な端末の確保、職場の理解などが課題になっているという。
総務省の調査では、テレワークの導入企業数は2015年末に16.2%で、前年から4.7ポイント増えており、今後どれだけ増やせるのかが重要になる。企業などがテレワークを導入する場合、法制度の面でどのような点に注意する必要があるのだろうか。山田長正弁護士に聞いた。
テレワークのうち、在宅勤務を導入する場合の各法令の課題について、特に問題になり得るのが労働基準法と労働契約法との関係ですので、この点についてのみコメントします。
大きく分けると、(1)労働条件の明示等、(2)労働時間の管理の点で問題となります。
まず、(1)労働条件の明示等について、会社の就業規則にテレワーク勤務に関する規定(例:人事異動として在宅勤務を命じることに関する規定等)がない場合は就業規則に記載してください。
次に、使用者(会社など)は、労働者に在宅勤務を行わせようとする場合、労働契約締結の際に、就業場所が自宅であることを書面で明示する必要があります。新しく雇用する人に対しては労働条件通知書に明示すれば良いですが、すでに雇用している人に対しても、労働契約の変更をできる限り書面で確認してください。
なお、業績評価に関連して、在宅勤務を行う労働者について、通常の労働者と異なる賃金制度等を定める場合には、その点に関連して就業規則を作成・変更し、届け出なければならないことにも留意してください。
次に、(2)労働時間の管理の点について、労働者は、業務に従事した時間を日報等において記録し、事業主はそれをもって在宅勤務を行う労働者の労働時間の状況の適切な把握に努め、必要に応じて、所定労働時間や業務内容等について改善を行うことが望ましいです。
ただし、特に懸念される点として、在宅勤務は労働者の勤務時間帯と日常生活時間帯が混在せざるを得ない働き方ですから、労働時間の算定が難しく、結果、導入が進まない要因の1つであると考えられます。
つまり、労働者の労働時間が算定できる場合は、原則、会社で働く労働者と同様に通常の労働時間制(1日8時間、週40時間)が適用されますが、一定の要件全てを満たした場合、事業場外みなし労働時間制を適用することが可能です。そうすることで、残業代のトラブル等を避けることができます。
ただし、就業規則に事業場外みなし労働時間制に関する規定がない場合には、就業規則を変更する必要がありますのでこの点も注意が必要です。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
山田 長正(やまだ・ながまさ)弁護士
企業法務を中心に、使用者側労働事件(労働審判を含む)を特に専門として取り扱っており、労働トラブルに関する講演・執筆も多数行っている。
事務所名:山田総合法律事務所
事務所URL:http://www.yamadasogo.jp/