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『ブリジット・ジョーンズの日記』好きにおすすめ! ロマコメ映画の名作3本

2016年11月18日 16:31  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)Universal Pictures.

 『ブリジット・ジョーンズの日記』シリーズの11年ぶり、3作目となる続編『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』が、現在公開されている。1996年に出版されたヘレン・フィールディングの原作小説は、酒をのみ、煙草を吸う、30代独身の主人公・ブリジットの飾らない本音が女性たちの共感を呼び、大ベストセラーとなった。その勢いは止まらず、2001年の映画化によって世界中でさらなる盛り上がりを見せ、2004年には続編となる『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』も製作された。誰もが憧れるような美女の運命的なロマンスではなく、ごく普通の女性の、どこかだらしないとさえ言える恋愛模様は、その後のロマンティック・コメディの作風にも影響を与えた。まさにゼロ年代のエポックメイキングと言える作品だろう。


参考:ブリジットを巡り2人の男性が壮絶バトル?


 今回の新作『ダメな私の最後のモテ期』でも、レネー・ゼルウィガー扮するブリジットと彼女を取り巻く男たちとの三角関係がコミカルに描かれている。テレビ局のプロデューサーとなり垢抜けたブリジットの生活は一見順風満帆なようだが、アラフォーになった今でもやはり誕生日は一人寂しく迎えなければならない。物語の発端は、恋愛に飢え、決定的な出逢いを求める彼女が犯した「二晩」の過ちである。幸か不幸か、それによって新たなる生命を授かった彼女は、我が子の父親を特定しなければならない。一人は「ツンデレ紳士」のマーク(コリン・ファース)。もう一人は「完璧タイプ」のジャック(パトリック・デンプシー)。どちらの男性が父親でも一向に構わない気もするが、不思議なもので、ブリジットは何でも出来てしまう「ハイスペック男子」よりもどこかに欠点のある「不完全男子」の方に惹かれてしまうよう。もはやロマコメ映画には欠かせない俳優のパトリック・デンプシーは、ここでもちょっぴり切ない役回りを演じなければならない。


 とは言え、こういうちょっとしたところに「リアル」を感じながらも、人々の恋愛模様を眺める時間はほんとうに楽しいものである。わたしたちと同じ日常を過ごしながら、そこにふと訪れる素敵な瞬間を垣間見せてくれるロマコメ作品は、ひとときの「夢」を見るのに最適だ。そこで本稿では、『ブリジット・ジョーンズの日記』にも通じる、あたたかな幸福感を味わえるロマコメ作品の名画をいくつか紹介したい。


■押さえておきたい、古き良きハリウッド・ロマコメの名作


 「ロマンティック・コメディ」の歴史を辿っていった時、最初に突き当たるのはやはり『ローマの休日』(1953)である。映画ファンの多くは、この作品を一度は観たことがあるのではないだろうか。だが、そこからさらにさかのぼること約20年、1930年代から40年代にかけてアメリカ映画で流行した「スクリューボール・コメディ」(ロマコメの一種)の第1号作品である、フランク・キャプラ監督の『或る夜の出来事』(1934)も、いまに続くロマコメの源流として押さえておきたい作品だ。


 クラーク・ゲーブルとクローデット・コルベールが演じた風変わりな男女が、喧嘩をしながらも恋に落ちるという“スクリューボール・コメディ”の特徴はその後、『赤ちゃん教育』(1938)や『ヒズ・ガール・フライデー』(1940)などで知られる巨匠ハワード・ホークスが好むところとなる。


 さらに、このテイストは時代を超えて、近年の日本の「ラブコメ」でもよく見ることができる。たとえば、剛力彩芽と山﨑賢人主演の『L♥︎DK』(2014)では、ゲーブルとコルベールがお互いの寝床の間に敷居をもうける有名なシーンへのちょっとした目配せがなされている。


■トム・ハンクス × ロン・ハワードの「ロマコメ・タッグ」!?


 さて、今度は少し変わり種のロマコメ作品として、今年はすでに三本(『白鯨との闘い』『ザ・ビートルズ』『インフェルノ』)が公開されているロン・ハワード監督の『スプラッシュ』(1984)を挙げたい。


 人魚と人間の恋を描いたこの作品は、先のキャプラやホークスの伝統的ハリウッド映画のスタイルを参照しつつも、その後の主流となる『恋人たちの予感』(1989)や『プリティ・ウーマン』(1990)のトレンディな雰囲気とは異なる、独特のファンタジックな魅力に溢れている。人魚に恋をする主人公を演じるのはトム・ハンクス。『ダ・ヴィンチ・コード』シリーズからはおよそ想像がつかないが、本作が彼らにとって初のタッグである。その新鮮さもあいまって、ロマコメらしいキュートさを味わうことができるはずだ。


■「幸福感」で満たされる一本、『ラブ・アゲイン』


 ここ数年での作品から一本挙げるならば、ロマコメらしさを存分に堪能することができる『ラブ・アゲイン』(2011)がおすすめ。とにかく登場するすべてのキャラクターが魅力いっぱいなのだ。スティーヴ・カレルとジュリアン・ムーア演じる中年夫婦の離婚騒動を中心に、ハンサムなナンパ師(ライアン・ゴズリング)や結婚願望の強い娘(エマ・ストーン)、妻の浮気相手(ケヴィン・ベーコン)、主人公一家のベビー・シッター(アナリー・ティプトン)などなど、多種多様な人物たちの人生が軽妙に折り重なり、豊かな群像劇を描く。


 魅力的なキャラたちの天真爛漫な行動を、時にはハラハラしながら、またある時には胸を熱くキュンとさせながら見守る映画体験は、ロマコメの醍醐味を十分に味わわせてくれる。



 『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』の「幸せな結末」を楽しんだ方は、ぜひ今回紹介した作品にも触れてみてほしい。その時代ならではの“気分”を感じられるとともに、いつの世でも変わらない“幸せ”を噛みしめることができるはずだ。(加賀谷健)