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関越道に「ダチョウ」、警官振り切って逃走…運んでいた業者の責任は?

2016年11月18日 11:02  弁護士ドットコム

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群馬県高崎市の関越自動車道で11月上旬、ダチョウが逃走するという珍しい事件があった。


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報道によると、11月7日午前6時半ごろ、「ダチョウが高速道路を歩いている」という110番通報があった。警察が現場に駆けつけたところ、体調約1.8メートルのダチョウが道路上に座り込んでいた。


警察官と高速道路のパトロール隊員が、ロープを使って捕まえようとしたが、ダチョウは逃げ回り、約1キロメートル先で捕まった。ダチョウは、埼玉県の飼育業者が茨城県の施設にトラックに載せて運ぶ途中だったという。


ダチョウがトラックから逃げ出した原因は詳しくはわかっていない。捕獲の際に一部の車線が通行止めになり、ケガ人はなかったということだが、運んでいた業者などに法的責任はないだろうか。平岡将人弁護士に聞いた。


●もしも事故が起きていたとしたら・・・

「トラックに載せていたダチョウが逃げたということですが、車を運転する人には、積載している物を転落させる防止する措置をすべき義務があります(道路交通法71条4号)。


さらに、今回のように高速道路を走るにあたっては、あらかじめ積載の状態を点検する義務もあります(同法75条の10)。


よって、運んでいた業者には、積載状況の点検義務違反、あるいは積載物の転落防止義務違反があります。両者とも罰則が定められており、前者は5万円以下の罰金、後者は3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金です」


もし仮に、ダチョウが逃げ出したことで交通事故が起きたり、ケガ人が発生していたらどうなるのか。


「道路上のダチョウが原因となって、交通事故が起きた場合、ダチョウを逃した業者の責任、ダチョウがいるのに排除しなかった道路管理者の責任、そして事故に遭ってしまった運転手の自己責任の3つが問題になります。


ダチョウを逃した運転手の責任は、積載物の転落防止義務違反などの道路交通法違反をしているので、賠償責任を負うことになります。


道路管理者の責任についてですが、道路のような造営物については、その設置・管理について高い安全状態を維持しなくてはならない義務があります。長時間安全性を欠いた状態で放置したといえるような場合、国家賠償法上の責任を負う可能性があるでしょう」


●「高速道路上にダチョウがいるなんてことは予想できない」

では、逃げ出したダチョウに衝突したり、回避しようとして事故に遭ってしまったりした別の運転手にも責任があるのだろうか。


「一見、被害者のようにも思えますが、道路運転者である以上、前方を注意して運転をする義務があります。ダチョウは2メートルくらいの高さのようですから、前方にダチョウがいるのであれば、早期に発見し、事故を回避するような適切な運転をする義務があります。


この義務に違反しているような運転であった場合、たとえば前方の注意が不足して、ダチョウの発見が遅れたり、速度超過をしていたような場合には、交通事故の責任の一部については自己の責任であるとして、損害について過失相殺をされることになるでしょう。


ただ、高速道路上にダチョウがいるなんてことは予想できないことですから、前方を注視しても発見しえなかったり、動物特有の不規則かつ素早い動きのために発見しても回避しようがない事故であったという事情があれば、運転手の自己責任を問えないこともあると思います。


交通事故ではない場合、たとえばダチョウが歩行者や停止車両に対して危害を加えたような場合であれば、動物の適切な管理義務に違反しているものとして、業者に対して損害の賠償請求ができます」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
平岡 将人(ひらおか・まさと)弁護士
中央大学法学部卒。平成26年8月より全国で7事務所を展開する弁護士法人サリュの代表弁護士に就任。主な取り扱い分野は交通事故損害賠償請求事件、保険金請求事件など。著書に「虚像のトライアングル」。
事務所名:弁護士法人サリュ大宮事務所
事務所URL:http://legalpro.jp/