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Hey! Say! JUMPとジャニーズWESTの好調ぶりが示す、ジャニーズの「これから」

2016年11月17日 16:31  リアルサウンド

リアルサウンド

 10以上ものグループが現在活動中でしのぎを削るジャニーズだが、7人以上の大人数で全員が20代となると2つに絞られる。2007年デビューのHey! Say! JUMPと2014年デビューのジャニーズWESTである。『リトルトーキョーライフ』(テレビ東京系)にも回替わりで出演するこの2グループだが、それぞれの活動も活発だ。そこで今回は、この若手2グループを取り上げてみたい。


 この10月からHey! Say! JUMP・山田涼介の「月9」初主演となる『カインとアベル』(フジテレビ系)が始まった。ドラマは現在まだ放送中だが、「カインとアベル」といえば、旧約聖書にある有名な話。兄弟間の確執や葛藤を描く物語の原型として、これまで映画『エデンの東』など数々の映画、ドラマ、小説などの素材になってきた。


 山田涼介本人にとっても、今回の出演が重要な一歩になることは間違いない。「月9」は、これまで田原俊彦、東山紀之、木村拓哉、滝沢秀明、松本潤、山下智久などが主役を務めてきたジャニーズに縁の深い枠でもあり、そうした錚々たる顔ぶれのなかに山田涼介という名前が加わったことになる。深遠なテーマを含んだ今回のドラマで、山田涼介という俳優が彼ならではの繊細な表現力をどう発揮していくのか興味深い。


 それは、彼の所属するHey! Say! JUMP自体が次のステップアップを求められる時期に入ったということの表れでもあるだろう。


 今回の山田の役柄は、不動産会社の社員。したがって、スーツ姿の場面も多い。前クールのドラマ『HOPE~期待ゼロの新入社員~』(フジテレビ系)で主演の中島裕翔も商社マン役で同じくスーツ姿が多かった。役柄のうえとはいえ、普段グループで歌い、踊っているときとは印象もかなり異なる。そうしてイメージの幅を広げることが必要にもなってきたということだろう。


 俳優業という意味では、知念侑李も今年映画『金メダル男』で内村光良とのW主演というかたちで初の主演を務めた。運動が得意な主人公という設定でもあり、身体能力の高さを誇る彼ならではの役柄でもあった。また伊野尾慧も、7月から放送されていたサスペンスドラマ『そして、誰もいなくなった』(日本テレビ系)で物語の重要な鍵を握るミステリアスなバーテンダー役を演じ、バラエティや情報番組とはまた違う一面を見せていた。


 こうしてメンバーの俳優としての活躍も目立ってきたHey! Say! JUMPだが、そんな彼らも来年結成10周年を迎える。全員平成生まれで年齢的には若手だが、キャリア的には十分な経験を持つ。昨年は京セラドームで初の単独カウントダウンコンサートを開催し、今年も東京ドームで年末年始の公演が決定している。


 彼らの冠バラエティ番組である『いただきハイジャンプ』(フジテレビ系)でも、各メンバーのキャラクターがいいかたちで見えるようになってきた。ソロでもバラエティ出演の経験を積んでいる八乙女光や有岡大貴が自分でボケるのはもちろんだが、他のメンバーをいじってその面白さを引き出す場面も目立つ。そうしたなかで、たとえば髙木雄也のクールな見た目とはギャップのある天然っぷり、岡本圭人の意外にツボをついた冷静なツッコミの面白さ、しっかり者の一面を持ちつつ時おり愛すべき“ポンコツ”な面を見せる薮宏太など、メンバーのキャラもくっきりしてきた印象だ。


 Hey! Say! JUMPには、元々グループとしてのふわふわ感というか、独特の癒し系の魅力がある。それは他のジャニーズグループに比べても際立った特長だ。ただ反面、それは個々の印象が弱まってしまうことにも通じる。だが最近の『いただきハイジャンプ』の内容からは、グループとしての和気藹々とした空気感と個性の表現のバランスがよくなってきているのが感じられる。


 一方、現在のジャニーズグループのなかでは最もデビューが新しいジャニーズWESTも、個々のメンバーの活動が目に付くようになってきた。


 今期のドラマでは、藤井流星が『レンタル救世主』(日本テレビ系)に出演している。依頼人が持ち込む悩みや難問を解決する会社「レンタル救世主」で働く金髪の青年役。無類の目立ちたがり屋で格闘技にも長けているというユニークな役柄だが、彼の持つ華やかさがコメディタッチの演出のなかでうまくはまっている。


 ほかのメンバーのドラマや映画への出演も、今年相次いでいる。先ほど挙げた『HOPE~期待ゼロの新入社員~』では桐山照史が中島裕翔の同僚役、『ノンママ白書』(フジテレビ系)では濱田崇裕が広告代理店の企画制作部員役、『世界一難しい恋』(日本テレビ系)では小瀧望が嵐・大野智扮するホテルチェーン会社の社長の部下役を演じた。重岡大毅も公開されたばかりの映画『溺れるナイフ』で菅田将暉・小松菜奈と共演している。


 彼らの大きな持ち味のひとつは、自然ににじみ出てくるポジティブさだろう。ポジティブさに無理がない、とでも言ったらいいだろうか。いま挙げたドラマの役柄でも、そうしたポジティブなキャラクターが生かされたものが多い。


 そこにはひとつ、関西のノリも大きく関係しているに違いない。言うまでもなく彼らは全員関西ジャニーズJr.出身であり、現在、彼らの冠バラエティ番組である『エージェントWEST!』(ABCテレビ)も関西のテレビ局が制作している。毎回メンバーが番組から与えられたミッションをロケに出かけてクリアするというこの番組、関西ローカルでの放送のため関東地区の視聴者にはまだなじみがないが、そこでも彼らのノリの良さが存分に発揮されている。


 ただ関東のテレビでも、少しずつそんな彼らの姿が見られるようになってきた。少し前のことになるが、『KinKi Kidsのブンブブーン』(フジテレビ系)に神山智洋がソロ出演、同じ関西出身の大先輩KinKi Kidsに食レポを無茶ぶりされ、頑張ってやりはしたもののそれをまたツッコまれたりと散々いじられていたが、それでもまったくめげていない姿が彼ららしいへこたれない前向きさを感じさせた。


 他にもすでに今年4月から中間淳太と桐山照史が昼の情報番組『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)の木曜レギュラーとなって、さまざまなロケやコーナーを任されるようになっている。これから彼らの持ち味であるポジティブで快活な魅力が、より多くの視聴者に知られるようになっていくことを期待したい。


 Hey! Say! JUMPとジャニーズWESTは、冒頭にもふれたように大人数グループという点でも共通する。


 そうした大人数グループとしての彼らの出発点は、昭和の終わりから平成の初めにかけて大ブームを巻き起こした光GENJIであるといえるだろう。たとえば、光GENJIの3枚目のアルバムタイトルが『Hey! Say!』(1989年)であり、それはそのままHey! Say! JUMPの前身ともなる期間限定ユニット・Hey! Say! 7(現在は山田・知念・中島・岡本によるグループ内ユニット)のデビュー曲のタイトルにもなった。


またJUMPは「Johnny’s Ultra Music Power」の頭文字を組み合わせたものであり、そこには「ジャニーズ」が入っている。つまり、Hey! Say! JUMPとジャニーズWESTには、ともにグループ名に「ジャニーズ」が入っているという共通点もある。そしてそこに、ジャニーズの元祖グループであるジャニーズとのつながりを見て取ることも可能だろう。


 そうした意味で、この2つのグループは、昭和から平成へと続いてきたジャニーズ事務所のスピリットを受け継ぎつつ、「これから」のジャニーズを担うポジションに立っている。グループの個性としても対照的なところのある両者が、それぞれどのような道を切り開いていくのか注目したい。(太田省一)