ロン・デニスがマクラーレン・テクノロジー・グループの会長兼CEOの座を退くことが決定した。
強力な発言力を持っていたデニスの失脚は、単にグループ内の長年に渡るマンスール・オシェとの主導権争いに敗れたというだけでなく、チーム内にもさまざまな面で影響を及ぼすものと考えられる。
まず現在、チームの代表的な役割を担っているエリック・ブーリエ(レーシングディレクター)の立場だ。もちろん、ブーリエにはF1チームとの契約があり、デニスの退陣と直接関係はないのだが、会長兼CEOが変わることで、チーム内での処遇が変わることは十分考えられる。
というのも、マクラーレンの幹部では最近、気になる動きがあった。グループの役員会でデニスの会長兼CEOの契約が更新されないことが決定した10月に開催された日本GPから、なぜか9月にF1チームのCEOに就いたばかりのヨースト・カピートがチームウェアではなく、私服でサーキットで仕事していることだ。
まだ正式にマクラーレンの一員になっていなかった8月末のベルギーGPの際は私服だったカピートは、その翌週に行われた9月のイタリアGPからはチームウェアの着用を開始。その後もマクラーレンのウェアでサーキットに着ていた。ところが、日本GP以降、アメリカ、メキシコと私服となった。そして、ブラジルにはついに姿を現さなくなった。
じつは私服組になったのは、カピートだけではない。かつてF1チームのCEOを務め、現在グループのCOOに就いているジョナサン・ニールも同様である。ただし、ニールが私服だったのは日本GPだけで、アメリカGP以降ブラジルGPまで欠席している。
これはデニスを巡る役員会の動きとリンクしていたものだったのか。それとも、デニスとはまったく関係のない単なる偶然だったのか。もし、デニス退陣が決まって最初のグランプリとなる次戦アブダビGPで、カピートがチームウェアで現れた場合、これは単なる偶然ではなく、デニスの去就となんらかの関連があったと考えるのが自然だろう。そして、もしそうなれば、ブーリエの立場になんらかの変化が訪れる可能性は、十分考えられる。
またホンダPUの独占供給を望んでいたデニスの失脚は、ホンダの供給体制にも大きな変化が訪れることになるかもしれない。すでにブラジルGPではザウバーのモニシャ・カルテンボーン代表が、マクラーレンのチームホスピタリティーハウスを訪ね、エリック・ブーリエ(レーシングディレクター)と会談している。17年に関しては、ザウバーは16年型のフェラーリPUを使用することをすでに発表しているが、18年以降は未定である。
これ以外にも、デニスの退陣はF1への復帰がウワサされているジェームス・アリソンの去就にも変化を及ぼすのではないかと考えられる。
つまり、良くしも悪しくも、デニスの存在はマクラーレンだけでなく、F1界にとっても、それだけ大きなものだったと言えるだろう。