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浪費家の妻が「1日20時間、FXにハマって家事をしません」…稼ぎは誰のもの?

2016年11月16日 08:42  弁護士ドットコム

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FXにハマった妻が「朝7時から夜中の3時過ぎまでFXにハマって家事をしません」。そんな相談が、弁護士ドットコムの法律相談に寄せられました。相談を寄せた夫によれば、妻は浪費癖があるそうです。そして「私の収入だけで妻は生活しています」といい、FXができるのも「私の協力」があるからだと考えています。


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妻は、自分の資金をもとにFXをおこなっていると主張しますが、月給25万円はすべて妻名義の口座に入っています。相談者としては「妻にはFXや投資よりも、まずはパートなりアルバイトで、安定した収入をえてほしいのです」。


相談者は「収益がある場合は、共有財産になるのか」と聞いています。また、損失が出た場合、その支払い義務は妻にだけあるのか。あるいは、「妻が払いきれない場合は、私が払う必要があるのか」と心配しています。川見 未華弁護士に聞きました。


● FXの稼ぎは誰のもの?


FXの稼ぎは、「夫の稼ぎを元手にしていた場合」と「結婚前からの預金を元手にしていた場合」とで、共有財産となるかどうかの結論は異なります。


まず「夫の稼ぎを元手にしていた場合」についてです。夫の稼ぎは、夫婦が婚姻中に形成した財産として、夫婦の「共有財産」となります。そのため、夫の稼ぎを元手にして得たFXの稼ぎも、原則として夫婦の共有財産となるでしょう。


ただし、妻の特別な努力や能力によって高額の資産形成がなされたといえる場合には、離婚時の財産分与の際、折半ではなく、妻の取得割合が高くなることもあるでしょう。


次に「結婚前からの預金を元手にしていた場合」について考えます。


その場合、妻の婚姻前からの貯金は、妻の「特有財産」(財産分与の対象外)となります。独身時代の預金を元手にFXで稼いだ場合は、原則として、その稼ぎは妻の特有財産となるでしょう。


ただし、妻の特有財産の維持に夫が寄与しているといえる場合には、離婚時の財産分与の対象となることもあるでしょう。具体的には、妻がFXに没頭でき、稼ぎを維持できたのが、夫の稼ぎや支えがあったからだといえるような場合です。


●. 損失が出たら?


なお、妻がFXで損失を出してしまった場合には、原則として、妻固有の債務であり、夫は支払い義務を負いません。


例外的に、妻名義の債務であっても、民法761条が定める夫婦の「日常家事債務」(結婚生活を送る上で生まれた債務)に当たれば、夫も責任を問われます。しかし、「日常家事債務」とは、一般的な家庭生活を送る上で必要となる生活費などを想定しており、FXで出した損失が、「日常家事債務」と認められることはほとんどないでしょう。




【取材協力弁護士】
川見 未華(かわみ・みはる)弁護士
東京弁護士会所属。家事事件(離婚、DV案件、親子問題、相続等)及び医療過誤事件を業務の柱としながら、より広い分野の実務経験を重ねるとともに、夫婦同氏制度の問題や福島原発問題等、社会問題に関する弁護団にも積極的に取り組んでいます。

事務所名:樫の木総合法律事務所
事務所URL:http://kashinoki-law.jp/