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back number、ベスト盤直前シングルで見せた“強さ”とは? 11月16日発売の注目新譜5選

2016年11月15日 13:01  リアルサウンド

リアルサウンド

back number『ハッピーエンド』(初回限定盤)

 その週のリリース作品の中から、押さえておきたい新譜をご紹介する連載「本日、フラゲ日!」。11月16日リリースからは、back number、AKB48、高橋優、THE ORAL CIGARETTES、GENERATIONS from EXILE TRIBEをピックアップ。ライターの森朋之氏が、それぞれの特徴とともに、楽曲の聴きどころを解説します。(編集部)


(関連:11月16日発売の注目新譜MVはこちら


■back number『ハッピーエンド』


 映画『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』主題歌としても話題を集めているバラード・シングル。恋愛における気持ちのすれ違い、その結果としての“別れ”を女性目線で描いたこの曲からは、ひとりの人間のなかで様々な感情が絡まり、どこにも進めなくなるような切実な状況を魅力的なラブソングへと導いてきた清水依与吏のソングライティングがさらに深まっていることが伝わってくる。アレンジには昨年の大ヒット曲「クリスマスソング」と同じく小林武史が参加。濃厚なエモーションを内包しているバンド・サウンドの良さを際立たせながら、間口の広いポップスとして成立させる手腕は流石としか言いようがない。生々しいロック感と男のエゴや打算を描いた歌が印象的なカップリング曲「君の恋人になったら」「魔女と僕」も、この先のback numberの方向性が感じられて非常に興味深い。初のベストアルバムの直前という大事なタイミングでこれだけ充実したシングルを出せることこそが、現在のback numberの強さなのだと思う。


■AKB48『ハイテンション』


 年内をもってグループからの卒業を発表した島崎遥香がセンターをつとめる46thシングル。作曲はシライシ紗トリ(SMAP、中川翔子などの楽曲を手がけるクリエイター)。タイトル通り、ひたすらテンションを上げることを意図した高揚感あふれるディスクナンバーに仕上がっている。“先が見えないからって不安になってもしょうがない。テンションを上げて、とにかく楽しめ”というメッセージ性を含んだ歌詞には、常に“現在”をシンプルに捉え、刹那的なポップスに結び付けてきた秋元康のスタンスが明確に反映されている。


 MVのテーマは“ぱるるマジック”。指を鳴らすだけで周囲が明るくなり、まわりの人をハイテンションにするという力を持っていることに気付いた島崎が「日本総ハイテンション計画」を企てるという内容で、遠藤憲一、田原総一朗などがゲスト出演している豪華な仕上がりに。AKB48のナチュラルな“ハイテンション感”が体感できるのも本作の魅力だろう。


■高橋優『来し方行く末』


 シングル曲「明日はきっといい日になる」「光の破片」などを収録したニューアルバム。5周年を迎えた昨年は、地元・秋田での大規模なフリーライブ、ベストアルバム『笑う約束』のリリース、日本武道館2daysライブといったアニバーサリーイヤーに相応しい派手な活動を行ったわけだが、その直後に「たかだか5年だけで何かを成し遂げたような気持ちになってる自分のことをぶん殴ってやりたくなりました」という思いに駆られ、がむしゃらに新しい曲を書き続けていたという。その“2度目の初期衝動”と呼ぶべき状態は当然、本作にも強く反映されている。「自分のことが嫌い」というフレーズで始まり、自己嫌悪と“それでも自分に出来ることを探したい”という思いをぶちまけたオープニングナンバー「Mr.Complex Man」から、悩みを抱えながら決して表に出さない友人に向けて「君は美しい」と歌い上げるラストの「BEAUTIFUL」まで、あまりにも生々しい感情が刻まれた楽曲が並んでいるのだ。高橋優は本作によって、シンガーソングライターとして2度目のスタートを切ったのだと思う。


■THE ORAL CIGARETTES『5150』


 ワンマンツアー『唇ワンマン TOUR 2016~キラーチューン祭り東名阪ワンマンの巻~』の真っ最中にリリースされる6thシングル。疾走感と重厚さを併せ持ったバンド・サウンド、艶めかしさと攻撃性を同時に感じさせる山中拓也(V)のボーカリゼーションなど、“光と影”“陰と陽”という相反する要素が詰め込まれた表題曲「5150」は、THE ORAL CIGARETTESのバンドが歩んできた道ともリアルに重なっている。昨年、山中の喉の不調によりライブ活動の休止を余儀なくされた彼ら。2016年1月の“リベンジライブ”で活動を再開してからは、イベント、フェスなどでさらに強い存在感を示し、ライブバンドとしての評価も高まっているが、そこに至るまでには様々な葛藤、不安を経験したはず。「5150」の<あとどれ位の/道が待っていたとしても/このまま諦めはしないよ>というフレーズは、闇を壊し、その先にある未来を掴もうとするメンバーの意志そのものなのだと思う。


■GENERATIONS from EXILE TRIBE『PIERROT』


 「AGEHA」「涙」に続く、2016年3作目となる13thシングル。前作「涙」は彼らにとって初めてのバラード・シングルであり、“踊らないMV”も話題を集めたが、今作「PIERROT」は高速のEDM系トラックを軸にしたダンスチューンに仕上がっていて、MVもしっかりと踊りまくっている。ランニングマンのようにキャッチーで覚えやすい振付けではなく、メンバー個々のスキル(ソロで踊るシーンも多数あり)、グループ全体のハイレベルなフォーメーションを見せることで、ダンスボーカル・グループとしての魅力をアピールした作品と言えるだろう。歌詞はLDH所属のアーティストの楽曲を数多く手掛けている作詞家・小竹正人。海外の作家によるグルーヴ感のあるメロディラインと片思いをテーマにした抒情的なリリックのコントラスト、そして、感情の発露を抑え、あくまでもスタイリッシュに表現する片寄涼太、数原龍友のボーカルも強く印象に残る。(森朋之)