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F1ブラジルGP:大雨、SC、赤旗……大荒れのレースをハミルトンが制し、逆転王座獲得へ望みをつなぐ

2016年11月14日 04:51  AUTOSPORT web

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2016年F1第20戦ブラジルGP 表彰式
日曜のサンパウロは朝からしとしとと雨が降り続き、完全ウエットコンディションで決勝のスタートを迎えた。雨脚はそれほど強くはないものの、午前中のサポートレースでは大きなクラッシュが相次ぐなど路面コンディションは良好とは言えず、ブラジルGP決勝も荒れた展開になりそうな予感が漂っていた。

 Q1の最後にターン4でジョリオン・パーマーのアタックを妨害したエステバン・オコンには3グリッド降格ペナルティが科され、オコンは最後尾グリッドに下がりザウバーの2台が繰り上がった。

 ブラジルGPのドライタイヤは、速いがデグラデーションが大きくライフの短いソフトと、ライフは長いが遅いミディアム、そしてミディアムと大差のないハード。予選ではQ3進出の全車がソフトタイヤを選んでおり、11番グリッド以降のドライバーがどのタイヤをスタートに選ぶか予想が難しい状況だったが、ウエットトラック宣言がなされたことで2スペックのタイヤ使用義務も含めて全てが白紙となった。

 イギリスに続いて今季2度目のウエットレース。グリッドに向かうレコノサンスラップでロマン・グロージャンが、最終コーナーを立ち上がったところで川に足を掬われてスピンを喫し、アウト側のコンクリートウォールにクラッシュしてしまった。大健闘の7番グリッドを獲得していたが、グロージャンのレースはスタート前に終わってしまった。

 このコンディションのためスタートは10分ディレイとなり、各車はグリッド上でコンディションの回復を待つこととなった。そして午後2時10分にセーフティカー先導でスタートが切られることに。このため規定により全車がエクストリームウエットタイヤを履いてグリッドを離れる。天気予報ではスタートから30分は雨脚が弱まるものの、その後は再び強まるという難しい展開が待ち構えている。

 スタートから1コーナーまでの距離が短いインテルラゴスだけに、先陣争いはポールポジションのルイス・ハミルトン有利と見られていたが、ハミルトンは争うことなく首位の座を守ってレースへと突入することとなった。

 SCの背後を走るハミルトンが「前が見えない。ライトさえ見えないんだ」と言うほどコンディションは悪く、セバスチャン・ベッテルも「さっきは問題なかったターン3~4の間でさえ水の量が多い」、ジェンソン・バトンは「問題はターン5と最終コーナー(ターン12)だ、完全に何も見えない」と訴える。

 しかしSC先導で5周を過ぎる頃には「もうレースはできる」(ケビン・マグヌッセン)というドライバーも出てくるほどに路面は回復してくる。ニコ・ロズベルグは「(メインストレートへの)上り坂はまだレースをするには水量が多すぎる」と訴えるが、8周目にSCは解除となり本格的なレースのスタートが切られる。

 マックス・フェルスタッペンは1コーナーで早くもキミ・ライコネンのインを突いて3位に浮上。マグヌッセンはピットインしていち早くインターミディエイトに履き替える。このペースを見てバトンが翌周、2周後にはアロンソ、ボッタス、マッサらがピットに飛び込む。10周目にベッテルはターン13の川に乗って大きくスピンし、そのままピットインしてインターミディエイトへと交換する。

 13周目にはマーカス・エリクソンがターン14イン側の白線と縁石に振れてスピンしてしまい、アウト側のウォールに突っ込んでクラッシュしてピットレーン入口手前にストップ。これでSC導入となり、これを見てレッドブル勢がピットインしインターミディエイトに交換するが、エリクソンの車両が停まっているためピット入口はクローズとなっており、リカルドには5秒加算ペナルティが科せられた。

 レースは再びSC先導で進むが、この間にコンディションはさらに悪化しマグヌッセンはウエットタイヤに戻す。順位は首位ハミルトン、2位ロズベルグ、3位ライコネンとウエット勢が続き、4位にインターミディエイト最上位のフェルスタッペン、5位ヒュルケンベルグ、6位ペレスという順位。20周目にレースが再開となるが、直後のメインストレートでライコネンがコントロールを失って激しくクラッシュし、レースは赤旗中断となってしまった。

 35分間の中断を挟み、レースは21周目から午後3時21分に再開された。規定により全車が再びエクストリームウエットタイヤを履いてSC先導でコースへと戻っていった。レース残り時間は1時間20分だが、レーダー上では50分後に強い雨が予報されている。

 コンディションは相変わらず悪くSC先導が続く中、4位を走っていたヒュルケンベルグは右リアタイヤのパンクでピットインを強いられ15位まで後退してしまった。コース上を走るドライバーたちからは「まだ水量が多い」「コンディションはひどくなっている」という報告が上がり続けるが、選手権を考えてハーフポイントで終わらせたくないハミルトンは「やれるよ、チャーリー(・ホワイティング)!」と無線で訴える。

 しかし28周目、午後3時35分に再び赤旗が提示され、ハミルトンは「コースは大丈夫だよ! 普通のエクストリームウエットのコンディションだ。雨は降ってさえいないんだ。なんで赤旗にするんだ!?」と訴えるが、レースは再び中断となる。

 午後4時2分、27分間の中断を挟んでレースは三たび再開。SC先導で29周目から再開となったが、残りは1時間8分。雨は降り続く予報で、71周を迎える前にレースは終了を迎えそうな展開が予想される。首位はハミルトン、2位ロズベルグ、3位フェルスタッペン、4位ペレス、5位リカルドの上位に、序盤にピットインしなかった6位サインツ、7位ナッセ、8位オコン、9位ウェーレインと続いてアロンソが10位につけている。

 SC先導を経て32周目にSC解除。フェルスタッペンはまたしても再開直後からプッシュしてターン3でアウト側に並びかけ抜き去って2位に浮上してみせた。そのフェルスタッペンは38周目にエリクソンと同じターン14イン側の縁石に振れてしまいスピン。なんとかクラッシュは回避し、ロズベルグも抑えて2位を死守してみせた。

 40周目にはリカルドがピットインして5秒ペナルティを消化するとともにインターミディエイトに交換する。42周目にはリカルドがファステストラップを記録したのを見てフェルスタッペンも43周目にピットインするが、メルセデスAMGはすぐに雨が強くなると呼んでおりステイアウト。ロズベルグは45周目のターン12立ち上がりでハーフスピンを喫してヒヤリとする場面もあったが、事なきを得てコースにとどまった。

 46周目のターン14で今度はマッサがスピンしてクラッシュ。これでまたしてもSCが出動しピット入口はクローズとなった。マッサが最後の地元レースを終えて観客席に向けブラジル国旗を掲げ、ピットでは妻子が出迎えて抱きしめるという感動的な場面を経て、56周目にSCが解除されてレース再開。


 インターミディエイトを履いていたレッドブル勢は最終セクターのグリップ不足に耐えきれずピットインしてフルウエットへと戻し後方へ。後方では7位まで浮上していたアロンソがターン13でスピンし最後尾17位まで後退してしまった。

 6位を走行していたナッセはペースが伸び悩み、60周目にヒュルケンベルグにパスされる。さらに後方からはレッドブル勢、アロンソが激しい猛追を見せている。中でもフェルスタッペンの勢いは凄まじく、64周目にはナッセ、65周目にはヒュルケンベルグをパスし、そして66周目にはターン12でインを突いて半ば押し出しながらベッテルをパス。67周目にはサインツを抜き去り、ペレスとの3位争いに。

 69周目、レース時間が残り3分を切る中、フェルスタッペンはターン10でアウト側からペレスに並びかけ、2台はサイドバイサイドのままターン11へと立ち上がって行ったが、フェルスタッペンがインから3位を奪い取った。

 首位のハミルトンはレース時間が2時間に到達する前に71周目に突入し、そのままトップでチェッカードフラッグ。「イエ~ス! やったぜ!」と歓喜の雄叫びを上げた。ロズベルグは11秒差の2位。これでタイトル争いは最終戦アブダビGPへと持ち越された。

 3位にはフェルスタッペンが入り、ペレスは4位。終盤にサインツと激しい争いを演じたベッテルは69周目のターン1で抜き去って5位を手に入れた。レース序盤から入賞圏を走り続けたナスルはレッドブル勢に先行され、最後はアロンソからの脅威にさらされながらもなんとか9位を守り切って、自身の母国でザウバーに今季初ポイントをもたらした。

 同じく入賞圏を走っていたマノー勢は最終的にオコン12位、ウェーレイン15位に終わり、コンストラクターズランキングでもザウバーが逆転することとなった。大荒れのブラジルGPは午後5時10分、興奮の中でようやく幕を閉じた。