ブラジルGPで9月のシンガポールGP以来、5戦ぶりにQ3に進出したフェルナンド・アロンソは、まるで少年がおもちゃを与えられたかのようにご機嫌だった。
例えば、予選後にマクラーレンのホスピタリティハウスで開かれた「ミート・ザ・チーム」と呼ばれる定例記者会見で、こんなイタズラを披露した。
ミート・ザ・チームは2人のドライバーとレーシングディレクターのエリック・ブーリエ、そしてホンダの長谷川祐介総責任者の4人が同席して行われる記者会見である。これはロン・デニスがチーム代表を務めていた2000年代から開かれているマクラーレンの伝統行事で、メルセデスとパートナーを組んでいたかつては、ノルベルト・ハウグが出席していた。
席はグランプリによってランダムに並び替えられ、チームの広報が椅子にシールを貼って、位置を決めている。
ブラジルGPでは向かって右から、アロンソ、長谷川総責任者、ブーリエ、ジェンソン・バトンという並びだった。会見が始まったところで、カメラを4人に向けたところ、ファインダーの向こうに写っているアロンソがこちらを見て、笑みを浮かべている。シャッターを押した後、肉眼でアロンソを見ると、長谷川総責任者のスボンに「ALONSO」と書かれたシールを貼って、そこを指差しているではないか!!
アロンソはこれまでも、会見中にマイクを分解してみたり、上下に昇降する椅子のガス圧を頻繁にいじって、上がったり下がったりしてみたり、イタズラっ子なのだが、この手のイタズラは初めて。そういうイタズラを許すような関係を長谷川総責任者が築いているともいえる。
イタズラといえば、金曜日にもアロンソはコース脇にマシンがストップした際、FOMのテレビカメラをいじっていた。「引退しても、カメラマンで食っていけるね」と尋ねると、「FOMが俺の給料を払えるわけがないから、引退はまだしない」とジョークで切り替えしてきた。
ちなみに会見後、アロンソはイギリスのF1レーシング誌から「スタート・オブ・ザ・イヤー」を受賞。かつてルノー時代に一緒に仕事をした経験がある小松礼雄エンジニアも「フェルナンドのスタートは本当に素晴らしかった」と絶賛していた。果たして、日曜日のレースで、どんなスタートを見せてくれるのか。そして、次にどんなイタズラを披露して、私たちを楽しませてくれるのだろうか。コース上だけでなく、コース外のアロンソにも注目していきたい。