ブラジルGP前日、セルジオ・ペレスがサングラスメーカーであるホーカーズと「契約を終了する」と宣言したニュースは、パドックでも大きな注目を浴びた。ペレスにその件について尋ねると、「ツイーターにつぶやいたことがすべて。とても残念なことだ」と厳しい表情で語った。
この一件について、チームの副代表を務めるボブ・ファーンリーは「チームは関知していない。すべてはチェコが決めたことだ」と、我関せずの態度だった。
なぜ、ペレスはチームに相談なく、独断でスポンサーとの関係を断ち切ることができたのだろうか。それはホーカーズがチームと契約しているスポンサーではなく、ペレスと契約しているパーソナルスポンサーだったからである。ファーンリーは言う。
「チームには一銭もお金は支払われていないから、チェコの決定にチームが口を挟む理由はない。しかも、スポンサーのロゴもマシンにもレーシングスーツにも一切、露出されていない」という。
もうひとつ、この件についての謎は、なぜホーカーズはそんなツイートを行ったのかだ。メキシコ人のあるジャーナリストは、こう分析する。
「まず、ホーカーズはスペインの企業で、メキシコとは同じスペイン語を母国語としていたため、トランプのメキシコ移民に関するコメントがほかの国に比べて、我が国のことのように感じていたのではないか。それでメキシコ人を慰めようと、「メキシコの皆さん、壁が作られる時、泣きはらした目を見せ ないで済むようにこのサングラスをかけましょう」とツイートしたが、メキシコ人にとって、トランプの発言は非常にデリケートな問題で、シャレにはならなかったんだと思う」
ちなみにホーカーズは2013年にスペインに創立されたサングラスブランドで、オートバイレーサーのホルヘ・ロレンソのスポンサーを務めて国内での知名度を上げ、今後は積極的に世界展開していく予定だった。しかし、今回の一件で2万個を生産する予定だった『セルジオ・ペレス限定エディション』の話はご破算となった。
ブラジルGPで、ペレスはホーカーズのサングラスをかける予定だったが、「もうホーカーズはかけない」と言い、別のメーカーのサングラスを用意していた。本人は明らかにしていないが、ペレスに近い関係者によると「彼はクリスチャン・ディオールが好きだから……」と言いつつも、「どのサングラスをかけているのかは不明だ」という。
そもそもトランプが大統領になっていなければ、この問題は起きていなかったはず。現在、アメリカでは反トランプ運動があちこちで発生しているが、F1界にも思わぬ形でその余波が訪れた今朝がたとなった。