開幕2連勝を果たし、今シーズンのGT500クラスでランキングトップを走り続けたMOTUL AUTECH GT-Rが、最後の戦いを前にトップの座を明け渡してしまった。ウエイトハンデがもっとも厳しい56kgとはいえ、予選12番手/決勝9位はあまりに『らしくない』リザルト。第3戦の土曜に何が起きていたのか。
どのチームにとっても想定外となった土曜午前の第3戦予選。前日に雨は上がったものの、気温が低くて日差しが弱かったこともあり、路面が乾かないままウエットコンディションとなったことが波乱の始まりだった。低気温でのチョイ濡れ路面はダンロップやヨコハマタイヤがアドバンテージが大きいコンディション。ライバルに比べてミシュランが弱い部分でもあっただけでなく、MOTUL GT-Rは松田次生のアタックで15分の土曜セッションに臨んだが、途中でワンランク硬めに変えたウエットタイヤのウォームアップが間に合わず、12番手に終わってしまった。
「もう1周あれば、1分46秒台(予選8~9番手)には入れていたと思いますが、それでも、そのあたりが限界でした」と次生が話すように、ハード目のレインタイヤを温めきることができなかった。さらには「1~2コーナーで前のクルマにも引っかかってしまった」と、次生。まさに、踏んだり蹴ったりの予選となってしまったのだ。
決勝直前では、さらに自ら流れを悪くしてしまった。このもてぎのニッサン陣営は、シーズン3基目のニューエンジンで臨んでいる。今回はいつものスタート前8分間の走行から、15分に時間を延ばして行われたが、そこでMOTUL GT-Rはエンジンに手を入れて、決勝ではそれが仇となってしまったのだ。ニスモの鈴木豊監督が振り返る。
「エンジンのマッチングが上手くいっていなくて、その15分間の間でドタバタしてしまった。それがいけないミスですよね。決勝前にそんなことをやっているようではダメ。その時点でレースがダメです」
決勝直前にどうやらエンジンマッピングの面で変更を加えたようで、それがむしろ裏目に出てしまったようだ。ただ、フォーラムエンジニアリング ADVAN GT-Rが優勝しているように、3基目のエンジン自体に問題があるわけではないようだ。
「今日はいろいろな部分で悪いところが出たので、これで出し切って、明日はいつものように進めれば大丈夫だと思います」と鈴木監督。
レース中にもピットアウト時にファストレーンを走行するGT300のマシンとタイミングが重なり、メカニックが制止するシーンもあった。そこで数秒ロスしたことも、流れの悪さを感じさせるが、鈴木監督の見解は異なる。
「あれは避けようがないタイミングでしたが、周囲をよく見ていたウチのメカニックの西田のファインプレーです。危ないリリースにならないようにクルマを止めてくれた。ロスといっても1秒かそこらなので、そのロスよりもGT300とのタイミングが合わさる方がリスクなので、冷静に判断してくれました。ピット作業自体も、チャンピオンチームらしくいつもどおりの素早い作業でした」
日曜の第8戦最終戦、実質、タイトルはMOTUL GT-RとDENSO KOBELCO SARD RC Fの一騎打ちの様相になりつつある。まずは午前8時40分からの予選順位が鍵になることは間違いない。対戦相手となるDENSO RC Fの予選担当の平手晃平も、土曜日の結果で俄然、モチベーションが上がっている。
「ランキングトップになって何か気持ちが変わるかなと思っていたけど、今日は2位で負けてすごく悔しいので、まだまだチャレンジャーの気持ちですよね。やっぱり無冠のチャンピオン(シーズン0勝)よりも勝ってシーズンを終わりたい。明日は僕の予選次第ですよね。クルマはいい状態なのはわかっているので、守って走るという気はないし、明日も攻めて行きたい」と、勢いに乗る。
鈴鹿1000kmのガス欠、タイでのクラッシュ、そしてこのもてぎの土曜日と、『らしくない』展開が続いている2年連続チャンピオンのMOTUL GT-R。開幕以来となるウエイトハンデ0kgのガチンコ対決で、本来の速さと強さを見せることができるのか。まずは平手と予選で対峙することになるロニー・クインタレッリが、これまでの負の流れを断ち切れるかが最初の勝負どころとなる。