FIAのF1レースディレクター、チャーリー・ホワイティングの説明によると、メキシコGPのスタート直後、ルイス・ハミルトンがコーナーをカットしたにもかかわらずペナルティを受けなかったのは、その後いったんスロットルを戻して減速していたからだという。
メキシコでポールポジションからスタートしたハミルトンは、最初のコーナーへの進入でブレーキをロックさせ、コースを外れてランオフエリアを通過した。だが、その後方でニコ・ロズベルグとマックス・フェルスタッペンがホイール同士を当てながら競り合っていたこともあって、ハミルトンはリードを保ったままコースに復帰できた。
ハミルトンは、このコースオフに対して何のペナルティも受けず、そのまま優勝した。しかし、フェルスタッペンは、レース終盤に3位の座をかけてセバスチャン・ベッテルと争っていた際に、同じ場所でトラックリミットを超えたとしてペナルティを科せられている。
ホワイティングは、メキシコでのペナルティに関する経緯を説明するため、今週末のブラジルGPを前に開かれたドライバー記者会見に招かれた。その席上、彼はハミルトンとフェルスタッペンとでは、それぞれが犯したミスへの対応に明らかに違いがあった、と述べた。
「両者の間の基本的な違いは、ルイスの場合は、持続的なアドバンテージを得たと見なされなかったのに対し、マックスの場合はアドバンテージがあったことだ。ご存知のように、ルイスはスタート直後に小さなミスを犯し、コーナーをカットすることで確かにアドバンテージを得た。しかし、彼はそのすぐ後に、埋め合わせをしようと試みた」
「ターン3とターン4の間のストレートで、彼が80%までスロットルを戻し、そのアドバンテージを返そうとしたことが(データから)確認されている。そして、約1分後にはセーフティーカーが出動し、いずれにしても彼のアドバンテージは完全に消滅した。したがって、スチュワードは持続的なアドバンテージはなかったと判断した」
「もしマックスが、ターン3とターン4の間でルイスと同じように減速していたら、彼は間違いなくポジションを失っていただろう。スチュワードがマックスにペナルティを科すべきと考えた理由はそこにある。つまり、彼が持続的なアドバンテージを得たからだ」
「スチュワードの目から見ると、そこがこの2つの出来事の根本的な違いだった」
それでもなお、フェルスタッペンは問題の裁定には一貫性がなかったと感じているようだ。
「言うまでもなく、僕はあの判断には賛成できない。だって、それほど大きな違いはないんだから。僕はペナルティを受けた。ペナルティを与えるのなら、(自分とルイスの)両方に与えべきだし、さもなければどちらにもペナルティを与えないかだ」
つまり、フェルスタッペンは、事例ごとに個別に判断するのではなく、トラックリミットを超えたことに対して、一律にペナルティを科すべきだと言いたいらしい。
「今後に向けて、ルールを変える必要があるんじゃないかな。コースオフしたら、そのこと自体に対してペナルティを与えればいいと思う。そのたびにスチュワードが介入して、ペナルティを科すかどうか判断するのはやめるべきだ」
一方、ハミルトンは彼の意見には賛同せず、こう主張した。
「裁定を出すスチュワードの仕事はものすごく難しい。ケースごとにすべて状況が異なっているからだ。すべてのケースに、一律に同じルールを適用するのはムリだと思うよ」
「ただ、今後もチャーリーと議論をしていくべきという点では、マックスに賛成だ。僕らはシーズンを通じて、彼らが裁定で悩まずにすむように、ルールの適用がよりクリアーになるように、ずっと努力をしてきたのだから」