今年、ハースF1チームに移籍し、チーフエンジニアとしてチームのレース部門を統括する小松礼雄氏。この終盤に来て、とにかくトラブル、アクシデントが多くなってしまったハース。今回はハース初の母国開催となるアメリカGP、そしてメキシコGPの両グランプリを振り返ります。F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラム第15回をお届けします。
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ハースに見え始めた新米チームのほころび
ドライバーにとにかく必要な速さとタフさ
今回アメリカとメキシコGPの2連戦について話したいと思いますが、とにかくこの2戦、ひどい内容になってしまいました(アメリカGP10位&リタイア、メキシコGP20位&19位)。せっかく鈴鹿でいい方向が見えてきたのですが、コース特性とタイヤの使い方によるところが多いとは思っていますが、なぜここまで悪かったかというのをまだ完全に理解するまでには至っていません。
まずは、この判っていないということ自体が問題です。新しいチームなのでいろいろなプロセスがまだ整っていないことがいっぱいあるんです。たとえばパーツの品質管理などは良い例です。クルマのすべてのパーツをきちんと検査しないといけないんですけど、そういう細かい部分でできてないところがまだまだたくさんあるのです。
また、設計のレベルが低い部品があることも確かです。アメリカでは、設計不良のためにエアロ関連のパーツが金曜の走行中に何度か壊れてしまいました。壊れた部品はクルマ全体の空力に大きく影響する部品(判り易く言うとフロントウイングが壊れるくらいの大きな影響を及ぼすパーツ)なので、なかなかまともに走ることができませんでした。
そんな状態で走っても、クルマはバランスがとれませんし、タイヤもちゃんと使うことができません。ということはせっかく、FP2でロングランを行っても、タイヤのタレ方が違ってくるので、ほとんど意味がないということになってしまいます。もちろん、ドライバーもクルマを学ぶことができません。仮に全てがしっかりと機能している状況でも、クルマの悪いところをちゃんと把握してセットアップするというのはなかなか難しい作業です。
このようにパーツが安定して機能しない、または走行中に壊れてしまうような部品があった場合は、クルマをセットアップしていくうえで大きな妨げになります。特にウチのような新しいチームは基本データがまだ少ないので、不確定要素が増えた場合、それがレースウイークエンドに及ぼす影響はとても大きいんです。
また、今年はあまり多くの数のパーツを作っていないので、シーズン終盤になってモノが古くなってきていることも問題です。たとえガレージで取り付けの確認を行った際にはOKな部品でも、クルマが走り出して負荷がかかった時の部品のたわみ具合などは、ある程度の距離を走ればやはり変わってきます。こういう基本的はデータも現時点では圧倒的に不足しています。そうすると、走り出して「クルマがおかしい」となった場合に、疑うべきエリアがとても多くなってしまうんです。
マレーシアの時のコラムで書いたように、いつかはそういう問題が出るだろうと予測していましたが、実際に今、それが出てきて大変な状況です。それプラス、ウチのクルマはフロントタイヤが温まらないときは辛いので、アメリカとメキシコではいろんな問題が重なってしまった訳です。
そういったいくつかの問題が重なったときに、ひとつでも判っている事が多いほうが当然いいですよね。ウチのチーム力が、残念ながらまだそのレベルにはないという事です。この様な状況は来年には解決していなければいけないので、今は人を雇ったり、プロセスを作ったり、設備を準備したりと、あらゆる面で改善しようとしていう最中です。前にも言いましたが、当たり前のことを当たり前にやるのが、新しいチームだとどれだけ難しいかっていう事を痛感しています。ですからとても忙しいです(苦笑)。それでもこうしてチームを作っていく一端を担えるというのはとてもやりがいがあります。
このような状況なので、ここ2戦はなかなかセットアップが順調に進められませんでした。ドライバーも突然、オーバーステアになったりアンダーステアになったりと挙動が安定しないクルマにとても手こずっていました。特にロマン(グロージャン)はドライビングスタイルがアグレッシブなので、このように尖がったクルマだと彼の長所を生かせません。
ロマンはブレーキをかなり遅らせて一気に踏みたいドライバーなので、そこでちゃんとリヤが安定して、クルマが減速してくれないといけません。その上で、ブレーキを終えてステアリングを切り始めた時にフロントがスッと入っていくクルマじゃないとダメなんです。
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