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あいみょん、Twitter連動の映像どう広まった? 新曲「生きていたんだよな」の強烈なメッセージ

2016年11月11日 14:01  リアルサウンド

リアルサウンド

あいみょん

 あいみょんが、11月30日にリリースするシングルの表題曲「生きていたんだよな」の“リアルタイム・ツイートムービー”を公開した。


 このムービーは画期的だ。世界初の映像表現を試みながら、同時にあいみょんというシンガーソングライターの表現の“核”となる部分に深く密接に関わることで、彼女が何を歌い、何を伝えようとしているのか、とても明確な形で表しているのだ。


あいみょん「生きていたんだよな」リアルタイム・ツイートムービー


 同曲は、あいみょんがニュースで見た衝撃的な事件と、それに対する世の中の反応を自らの視点で切り取った“ドキュメンタリーソング”だという。ムービーは、Twitter内から「死ね」というキーワードが含まれるツイートを約4分ごとに読み取り、ほぼリアルタイムで反映するという表現技法が用いられている。さらに、ムービーの中の街や自然現象を構成する言葉は、実在のツイートに合わせて変化する仕組みとなっている。つまり、Twitterで「死ね」とつぶやかれた言葉が、そのままムービーの中に現れ、この映像表現の一端を担っている、ということだ。


 公開後、このムービーはTwitterなどのSNSを中心に話題を呼んだ。「こんなMV初めて見た」「つい何度も再生してしまう」といったように、その仕組みにも注目が集まった。そしてさらに、「心揺さぶられる」「この歌詞に共感する」「聴いた誰かが救われるといいな」など、この楽曲そのものに宿るメッセージを、ムービーを通してより真摯に受け取ったリスナーが多くいたようだ。


 このムービーの主人公は、制服を着たひとりの女の子だ。ムービーの最後には、彼女の手の中のスマホに、1日にTwitterで「死ね」と呟かれた回数が表示される。その回数は、24時間でリセットされ、日付が変わるとまたゼロからスタートする仕組みとなっているのだが、その時々によってバラつきはあるも、午前中でも1万回、夕方帯になると、3万回を超える数がカウントされる。その数の多さには思わず驚く。また、女の子が歩く街中の風景の一部ーー道端のゴミ、ビルのガラス窓、広告の看板、通り過ぎる人、木、雨などーーは、「死ね」という言葉で形作られている。そこに現れる「死ね」という言葉は、愚痴の延長線上にあるようなたわいもないものから、悪意に満ちた残酷なものまで様々だ。それがムービーのための“作り物”ではなく、今この瞬間を生きている誰かの感情なのだから、よりリアリティを増す。


 ほとんど色を使わないアニメーションが進むにつれ、女の子の息苦しさや切迫感がありありと伝わってくる。しかし、その重々しさを表現するだけが、このムービーの目的なわけではない。サビの部分では、力強いあいみょんの歌声による<生きて 生きて 生きていたんだよな>のリフレインに呼応するように、ひとつひとつの「死ね」という言葉が、「生きて」に転化されていくのだ。「生きて」という言葉は、赤、緑、黄色、青などカラフルな色で染まっている。終盤では、その「生きて」という言葉がひとつに合わさって女の子の背中の翼となり、彼女が自由に空を飛ぶ手助けをする、という演出へと変わっていく。


 あいみょんは、この「生きていたんだよな」で、命の最期の一瞬と向き合いながらも、死ではなく、生きることを歌っている。だからこそ聴き終わった時には、絶望ではなく、何かポジティブなエネルギーが沸き上がってくるのだ。


 シンプルで瑞々しいバンド・サウンドと抜けの良いメロディの中で惹きつけられるのは、あいみょんの歌声そのものだ。ポエトリー・リーディングから幕を開け、時に柔らかく、時に刺々しく歌いながらも、その歌声には、ぶれることのない強い意志が貫かれている。そしてそれはそのまま、あいみょん自身の考え方や生き方が反映されているようにも感じられる。綺麗事が一切ない切れ味のある言葉は、あいみょんがそれほど真剣に、聴き手に本気のコミュニケーションを求めて歌っているということの証である。


 11月30日、あいみょんはシングル『生きていたんだよな』とともにワーナーミュージック内レーベル<unBORDE>からメジャーデビューを果たす。弱冠21歳。メジャーという新しい世界に踏み出し、そこで、あいみょんはシンガーソングライターとしてさらなる成長を遂げながら、新しい歌を生み出していくだろう。この「生きていたんだよな」は、そんなあいみょんにとっての”はじまり”の曲であり、これから彼女の音楽に出会うだろう多くの人々にとっても、大切な曲となっていくだろう。(文=若田悠希)