ブラジルGPの木曜ドライバー会見は極めて異例なかたちで行なわれました。今季限りでのF1引退を表明しており母国ブラジルでのラストランとなるフェリペ・マッサ、そして今週末に決着する可能性があるタイトル争いを演じるニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンの2人。ここまではごく当然の布陣と言えます。
しかし前戦メキシコGPでのスチュワード裁定を巡る一悶着を受けて、当事者であるレッドブルの2人とセバスチャン・ベッテル、そしてレースディレクターのチャーリー・ホワイティングまで出席し、合計7名での異例の会見となったのでした。
まずはマッサがF1での思い出を語り、各ドライバーから自分についてのコメントを聞くとすでに泣き出してしまいそうな表情。「意識しないよう集中して臨むけど、レース後というか最終ラップは特別だろう」と早くも泣き崩れるフラグが……?
本来であればメインテーマとして盛り上がりそうなメルセデスAMGの2人への質問もそこそこに終わってしまい、開始から15分ほどでホワイティングが登壇してメキシコGPの話題へ。
ホワイティングは中継映像やコースカメラの映像を使いながら、スチュワード裁定の解説を行ないました。基本的には「ハミルトンは充分にバックオフしたのでペナルティなし、フェルスタッペンはアドバンテージを得たのにバックオフしなかったので5秒加算、そしてベッテルは明らかにブレーキング時に進路変更し後続のマシンを危険に晒したのでより重大と判断して10秒加算」とのこと。
これに対して「もちろんこの決定には同意できない。危険じゃなかった」というベッテル、「アグレッシブでもクラッシュしなけりゃ良いじゃん」というフェルスタッペンなど、結局は各ドライバーの意見は平行線のままという印象が強く残ったのでした。
無線での汚い言葉については、ホワイティングが「すぐに謝罪を受けたので私としてはそれで充分だ」と言うものの、「こうした言葉遣いは若い世代に良い影響を及ぼさないのでは?」との指摘には、無線反対派のフェルスタッペンは「僕らはギリギリのところで戦っているんだからそういうこともあるけど、無線は危険だしある意味では放送しない方が良いと思う。実際にはサッカー選手だってもっと汚い言葉を吐いているはずさ、マイクがないから分からないだけだ」と主張しました。
会見ではメキシコGPのイザコザだけなくFIAのスチュワード体制に対する批判なども話題に上ったものの、ホワイティングはいつもの調子で言葉巧みにかわします。前列の3人は自分たちは無関係とあって退屈そうで、マッサはシャツの裾でサングラスを拭き始めてしまう始末。
45分に及んだ会見がようやく終わると、待ち構えていたようにハミルトンが後列のダニエル・リカルドにiPhoneを渡し、「みんなで記念撮影しようよ、フェリペが最後だし。あ、チャーリーも初めてだし」。最終的にはFIA広報マテオがそのiPhoneでパシャリと撮って会見を締めくくったのでした。
異例の会見として注目を集めたものの、実際に終わってみれば今ひとつ捕えどこのない会見となってしまった感は否めず。ちなみにF1のスポーティングレギュレーションには木曜会見は「ドライバー5名と、場合によってはチーム関係者2名の出席」と定められており、実はFIA自ら違憲状態を作り出しているという嘘のような本当の話。次はその件を問い詰める会見でも開きますか?