2016年11月11日 11:02 弁護士ドットコム
11月8日早朝、福岡市のJR博多駅前の道路が陥没し、建物前に大穴ができた「セブンイレブン博多駅前通店」など、複数の企業・店舗が休業を余儀なくされた。
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また、福岡銀行を核とする「ふくおかフィナンシャルグループ」では、大規模なシステム障害が発生。「西日本シティ銀行」も穴の近くにある支店が終日休業したり、一部のATMが使えなくなったりする被害が出ている。
高島宗一郎市長は当日会見を開き、「管理責任は市にある」と謝罪。陥没の原因が地下鉄延伸工事にある可能性があるとして、原因を究明すると話した。
穴周辺の企業・店舗はしばらくの間、陥没の影響を受けそうだが、今後の補償問題はどうなるのだろうか。林朋寛弁護士に聞いた。
「被害を受けた方は、まず福岡市側と話し合いで賠償を求めることになるでしょう。
福岡市や施工した大手ゼネコンを含むJV(共同企業体)が保険に加入していれば、その範囲では比較的スムーズに損害賠償が進むかもしれません」
ただし、弁護士ドットコムニュースが訊ねたところ、福岡市は未加入、JVの取りまとめ役である大成建設は「工事の個別案件についてはお答えしていない」とのことで、加入の有無は分からなかった。
では、話し合いでまとまらなかったらどうなるのだろうか。林弁護士は次のように解説する。
「その場合、裁判をすることになります。
陥没したのは市道ですし、自然災害ではなく市営地下鉄の工事が影響しているようですから、基本的には『道路や公の営造物の設置・管理に瑕疵があった』(国家賠償法2条)として、福岡市の賠償責任が問えるのではないかと思います。
瑕疵の認定が難しくても、福岡市の注文・指図に過失があれば、注文者の損害賠償責任(民法716条)があるといえるでしょう」
建設会社にミスがあった場合は?
「調査や工事に過失があった場合は、施工を請け負ったJVが共同不法行為(民法709条、719条)の損害賠償責任を問われます」
「話し合いにしても、裁判にしても、原因究明は欠かせません。また、事故と損害の因果関係や、どの範囲(企業・個人)までの損害を認めるかなど、認定作業には困難が予想されます。
福岡市は今後、原因究明や賠償について、弁護士などの専門家を交え、迅速適切な解決を図るべきです。また、被害を受けた企業・個人も損害賠償請求に備えて、弁護士に相談しておくとよいでしょう」(林弁護士)
福岡市交通局の担当者によると、「今は復旧作業に注力していて、補償の話は進んでいない。今後、調査などで事故原因を究明し、その後、どこが補償するか話し合うことになるのではないか」と話していた。
【11月14日追記】
福岡市営地下鉄の工事絡みでは、2000年と2014年にも道路の陥没が起きている。福岡市交通局の担当者に補償の有無を尋ねたところ、「いずれも被害規模が小さく、営業補償はしていない」とのこと。ただし、「今回に関しては被害範囲が大きいので、補償する方向で検討している」とのことだった。
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
林 朋寛(はやし・ともひろ)弁護士
北海道出身。大阪大学卒・京都大学大学院修了。平成17年10月弁護士登録。東京弁護士会、島根県弁護士会、沖縄弁護士会に所属の後、平成28年3月に札幌弁護士会所属。経営革新等支援機関。税務調査士(R)。
事務所名:北海道コンテンツ法律事務所
事務所URL:http://www.sapporobengoshi.com