今週末、スペインのバレンシア、リカルド・トルモサーキットでMotoGP第18戦(最終戦)バレンシアGPが開催される。
2016年シーズンもいよいよ最終戦。今年は全クラスでライダータイトル争いの決着がついて最終戦を迎えることになった。最終戦の舞台となるリカルド・トルモサーキットは、スペインのバレンシアにあり、1999年にオープン。2002年以降、MotoGPシリーズ最終戦の開催地として定着している。
サーキット名は1980年代のグランプリ小排気量クラスで活躍したスペイン人GPチャンピオンのリカルド・トルモに由来している。1周4.005kmのコースは、左コーナー9、右コーナー5の中低速レイアウト。コースの回りを観戦スタンドが囲んでおり、各観戦スタンドからはコースの全体が見渡せるようになっているのが特徴的だ。コースのアップダウンはほとんどなく、フラットでテクニカルなレイアウトのコースは、抜きどころも少ない。
昨年のMotoGPクラスでは、直前のマレーシアGPで起こったマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)とバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ)のセパンクラッシュを引きずったままの最終戦決着となった。ロッシはランキングトップで最終戦に臨んだものの、セパンクラッシュのペナルティにより、最後尾スタートとなり、決勝では追い上げたものの4位に。この結果、最終戦で優勝したホルヘ・ロレンソ(モビスター・ヤマハ)が逆転でタイトルを獲得した。2位にマルケス、3位にダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ)が入賞した。
Moto2クラスではティト・ラバット(カレックス)が優勝、Moto3クラスではミゲール・オリベイラ(KTM)が優勝し、7位に入ったダニー・ケント(ホンダ)が最終戦でタイトルをようやく獲得した。
■ヤマハ、ホンダのチーム、コンストラクター争い
MotoGPクラスで通算3回目のタイトルを日本GPで確定させたマルケスだが、続くオーストラリアGPでは転倒リタイア、マレーシアGPでは転倒後、再スタートしたものの11位に終わってしまった。このためコンストラクタータイトルでは、ホンダとヤマハのポイント差は21ポイントとなり、チームタイトルではモビスター・ヤマハMotoGPがレプソル・ホンダチームに10ポイントリードを持って最終戦に臨むことになった。ライダータイトルは決まったものの、コンストラクターとチームタイトル争いに注目が集まる。
マルケスはバレンシアのMotoGPクラスでは2014年に1勝を記録。2013年に3位、2014年に優勝、2015年に2位と3年連続で表彰台に立っている得意なコース。ホームレースでもある最終戦は勝ちをねらってくる。
「3連戦を終えて帰国し、家族と友人たちと一緒にタイトル獲得を祝うことができてよかった。少しリラックスして、自転車やモトクロスといった通常のトレーニングに戻った。日曜にはバレンシアでレースだ。その後には重要なテストが控えている。僕たちの目標はファンの前で上位に入賞すること。可能ならば優勝、少なくとも表彰台に立ちたい」とマルケス。
ロッシはマレーシアGPでランキング2位を確定。バレンシアのMotoGPクラスでは、2002年以降、通算2勝、通算8回表彰台を獲得しているが、2004年以来、優勝経験のないコースとなっている。
「バレンシアはいつも特別なレース。常にチャレンジングだからね。このコースではいつも少し苦戦気味で、あまり結果もよくない。だからウイークを通じて可能な限り強く、チームといい仕事をしてできる限りいい結果を残したい。コンストラクターとチームタイトルをかけた戦いがまだ残っているので、ベストをつくしてポイントを獲得したい。レースの後には、新しいYZR-M1のテストをする。早く新しいバイクに乗りたい」とロッシ。
ランキング3位にロレンソ。来シーズンからドゥカティへの移籍が決まっているロレンソにとって、今回がヤマハでの最後のレースとなる。バレンシアでは通算3勝を記録、昨年は逆転でMotoGPクラスで通算3回目となるタイトルを獲得した。今年はやや成績に波があるが、今レースはランキング3位を争う大事なレースとなる。
「ついにバレンシアにやってきた。ここはいい思い出があるコース。昨年は世界チャンピオンになるという目標を達成できた。そして、今回のレースはボクにとって特別な一戦となる。9年間在籍したヤマハでの最後のレースなんだ。さよならを言わなければならないから簡単ではないだろう。ヤマハとはいい関係を築き、数多くのレースに勝ち、タイトルを獲得することができた。シーズンを勝利という最高の形で締めくくりたいので、ベストをつくし、ランキング3位を守る」とロレンソ。
ロレンソを17ポイント差のランキング4位で追うのがマーベリック・ビニャーレス(スズキ)。今シーズンのイギリスGPでMotoGPクラス初優勝を達成、3位に3回入賞しているビニャーレスは、来季はロレンソの後任としてヤマハに移籍し、ロッシのチームメイトとなる。
ロレンソとビニャーレスのランキング3位を巡る争いからも目が離せない。ビニャーレスはバレンシアではMoto3時代の2013年に優勝経験がある。
「去年のバレンシアはベストなレースではなかったが、今年はこれまで着実に進歩し、全く違う状況にある。特にシーズン後半は大きく進歩し、トップ争いに加わり、コンスタントに表彰台に立つことでそれを証明している。最終戦はランキング3位争いにとっても重要なレース。シーズン初めの目標はランキング6位以内だった。今シーズンの結果には満足しているが、最後のレースでさらにトライし、スズキでの2年間の集大成にしたい」とビニャーレス。
前戦マレーシアGPで優勝し、今シーズン9人目のウイナーとなったアンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)はランキング5位に浮上。バレンシアではドゥカティでの表彰台経験はないが、ホンダ時代の2011年に3位入賞経験を持つ。
「今シーズン、優勝することが重要だったから、セパンでの勝利は本当に特別だった。この気持ちのまま、バレンシアに行こう。目標は総合5位。目標達成のチャンスだ。最高の形でチャンピオンシップを締めくくれるようにトライしよう」とドビジオーゾ。
日本GPで鎖骨を骨折し、フライアウエイ3戦を欠場したランキング6位のペドロサは今レースで復帰。ドビジオーゾを7ポイント差で追う。ペドロサはバレンシアでは2007年、2009年、2012年と3勝を記録、2012年から2015年まで4年連続表彰台に立っている。
「ここ3週間は、ケガの痛みだけでなく、得意とするサーキットでのレースを欠場したことが痛かった。ケガはリハビリを始め、日に日に良くなっている。バレンシアで復帰することを考えることが、困難な状況の中、助けとなってくれた。どうライディングできるか分からないけど、復帰できることがうれしい。バレンシアのコースは好きだし、よい思い出がある。ファンの前でもう一度走れることがうれしい」とペドロサ。
インディペンデントチームライダーではトップとなるランキング7位にカル・クラッチロー(LCRホンダ)。ランキング8位のポル・エスパルガロ(ヤマハ・テック3)が17ポイント差でクラッチローを追い、インディペンデントチームライダーのランキングトップを争う。
なお、今レースには来年からMotoGPクラスにフル参戦を開始するKTMがワイルドカード参戦し、実戦デビューを飾る。ライダーはテストを担当してきたミカ・カーリョ(KTM)。カーリョは2009年と2010年にMotoGPクラスにレギュラー参戦経験を持つライダーだ。バレンシアではタイムは非公開ながら、事前テストを行なっている。実戦でどんなパフォーマンスを見せるかに注目が集まる。
また、今回、アプリリアはマシンのカラーをレッド1色に変更。これは、世界的ロックバンドU2のボノが設立したエイズ、結核、マラリアの撲滅をめざすチャリティ団体(RED)の活動を支援するもの。真っ赤なカラーリングに(RED)のロゴが入ったRS-GPをアルバロ・バウティスタ(アプリリア)とステファン・ブラドル(アプリリア)が駆る。
■中上、フォルガー、ロウズのランキング5位争い
Moto2クラスではヨハン・ザルコ(カレックス)が前戦マレーシアGPでタイトルを確定。Moto2クラスでは初の連覇を達成した。来シーズンはMotoGPクラスにステップアップすることが決まっているザルコにとって、Moto2クラスラストレースで有終の美を飾ることができるかどうかに注目が集まる。
ランキング2位にトーマス・ルティ(カレックス)、11ポイント差のランキング3位にアレックス・リンス(カレックス)、4戦連続で表彰台に立ったフランコ・モルビデリ(カレックス)がリンスとは6ポイント差のランキング4位に続く。この3人のランキング2位争いにも注目だ。
中上貴晶(カレックス)はランキング7位。ランキング6位のジョナス・フォルガー(カレックス)とは同ポイント、ランキング5位のサム・ロウズ(カレックス)とは3ポイント差となっている。ランキング5位を巡る3人のバトルにも注目が集まる。
■王者ビンダ―のMoto3クラスラストレース
Moto3クラスではブラッド・ビンダー(KTM)が4戦を残したアラゴンGPで早々にタイトルを確定。前戦マレーシアGPでは転倒により今シーズン2度目のノーポイントを喫したが、タイトル獲得後の3レースでポールポジション2回、1勝、2位表彰台1回と速さを見せる。Moto2クラスへのステップアップを前に、Moto3最後のレースでどんな走りを見せるかに注目。
ランキング2位にエネア・バスティアニーニ(ホンダ)。バスティアニーニはオーストラリアGPで骨折し、マレーシアGPを欠場したが、最終戦には復帰を予定。前戦マレーシアGPで優勝したフランチェスコ・バニャーヤ(マヒンドラ)がバスティアニーニを19ポイント差で追う。バニャーヤを2ポイントの僅差で追うホルヘ・ナバーロ(ホンダ)がランキング4位。
日本勢では尾野弘樹(ホンダ)がランキング23位、鈴木竜生(マヒンドラ)がランキング27位から上位入賞をめざす。