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乃木坂46、“サヨナラ”を前向きに捉えた橋本奈々未ラストシングルも 11月9日発売の注目新譜5選

2016年11月08日 13:21  リアルサウンド

リアルサウンド

乃木坂46『サヨナラの意味』初回仕様限定盤Type-A

 その週のリリース作品の中から、押さえておきたい新譜をご紹介する連載「本日、フラゲ日!」。11月9日リリースからは、乃木坂46、三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE、Dragon Ash、[Alexandros]、The Birthdayをピックアップ。ライターの森朋之氏が、それぞれの特徴とともに、楽曲の聴きどころを解説します。(編集部)


(関連:乃木坂46『サヨナラの意味』は橋本奈々未の“後ろ縦列”に注目 齋藤飛鳥は次を担う存在になれるか


■乃木坂46『サヨナラの意味』(SG)


 2017年2月でグループからの卒業、芸能界からの引退を発表している橋本奈々未が初めてセンターをつとめる16thシングル。表題曲「サヨナラの意味」はタイトル通り、大切な人との別れ、その先に存在するはずの新しい未来をテーマにした楽曲。<サヨナラに強くなれ/この出会いに意味がある>というフレーズに象徴される“サヨナラ”を前向きに捉える歌詞は、橋本の卒業と強くリンクしたドキュメントであると同時に、10代女子を中心に魅力的な卒業式ソングとして受け入れられるはず。メンバーの変遷を受け入れながらタイムリーな楽曲を提示しつつ、普遍的なポップスとしても成立させるプロダクション・スキルの高さはさすがのひと言。作曲は「制服のマネキン」「君の名は希望」などを手掛けた杉山勝彦。切なさ、寂しさを上手く表現しながら、あくまでも上品なラインを外れないメロディライン、メンバー同士の掛け合いとハーモニーをふんだんに取り入れ、卒業式の雰囲気を想起させる構成も絶妙だ。


■三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE『Welcome to TOKYO』(SG)


 前作『Unfair World』以来、約1年2カ月ぶりとなる20thシングル。ダンスミュージック、R&BとJ-POPを結び付けた先駆者であるT.Kura & michicoのペンによる表題曲はしなやかで強靭なEDMサウンドとエキゾチックなアレンジ、歌謡曲的なメロディを絶妙なバランスで共存させたナンバー。感情を露出し過ぎず、気持ちよく抑制を効かせた今市、登坂のボーカルも、クールな佇まいのトラックによく似合っている。“東京へようこそ”というメッセージを備えた歌詞、東京の風景をバックに近未来的なビジョンを映し出すMVを含めて、しっかりとコンセプトが貫かれた作品に仕上がっている(東京に遊びに来た外国人観光客がこのMVを観たらどう思うだろう? と想像するのも何だか楽しい)。このシングルがリリースされる2日後の11月11日からは単独ドームツアー(5会場13公演)がスタート。三代目 J Soul Brothersの現在地が確認できる、重要なツアーとなることは間違いないだろう。


■Dragon Ash『光りの街』(SG)


 煌びやかな光を想起させるギターとシンセ、心地よく美しい重低音を軸にしたバンド・アンサンブル、<きりがない失望 それでも望むんだ/日々や充実を>という切実でリアルな願いを感じさせる歌。Dragon Ashのじつに2年10カ月ぶりとなる新曲「光りの街」は、新たな希望のアンセムの誕生を予感させる楽曲となった。


 Kj自身が「あの時点でのバンドとしての創作意欲のすべてを出し切った」と語る10thアルバム『THE FACES』以降、Dragon Ashは新たな音楽表現を獲得すべく、様々な変化を求めた。ライブをサポートしてきたKenKen(Ba)がレコーディングメンバーとして参加。ギターのダウン・チューニングの採用とレコーディング環境の刷新などを経て制作された「光りの街」は、従来の彼らのイメージ(“求められていること”と言ってもいいだろう)を引き受けつつ、新鮮なクリエイティビティを実現したナンバーに仕上がっているのだ。彼らの音楽は確実に先に進んでいる。それを実感できたことが、まずは純粋に嬉しい。


■[Alexandros]『EXIST!』(AL)


 シングル曲「Girl A」「NEW WALL」「I want u to love me」「Swan」を含むニューアルバム。NHK総合の音楽番組『SONGS』に出演、前作『ALXD』収録の「ワタリドリ」がアサヒビールのCMソングとしてオンエア、新曲「Nawe, Nawe」が映画『ターザン:REBORN』日本版主題歌に起用されるなど、様々なメディアに露出することで大きく知名度を上げている彼らだが、海外のインディーロック、ヒップホップ、ダンスミュージックなどを自在に取り入れたその音楽性はさらに研ぎ澄まされ、ロックバンドとしての個性と存在意義はこれまで以上に強く示されている。奔放すぎるアイデアを具現化させるメンバーのアレンジ力と演奏テクニックも向上しているが、その中心にあるのはもちろん川上洋平のメロディセンス。どんなサウンドのなかでもビビッドかつポップな存在感を放つ彼の旋律とボーカルは、このアルバムによってひとつの高みに達したと言っていいだろう。


■The Birthday『夢とバッハとカフェインと』(SG)


 10周年を迎えた2015年は初のベストアルバム『GOLD TRASH』、8thアルバム『BLOOD AND LOVE CIRCUS』をリリース。さらに3度目の武道館公演を成功させるなど、精力的なアクションを見せたThe Birthday。ライブの熱量、楽曲のクオリティを含めて、彼らがさらなる充実期に入っていることは、約1年5カ月ぶりのシングルとなる本作からも強く感じ去れる。表題曲「夢とバッハとカフェイン」は腰の入った濃密なグルーヴと鋭利なギター・アンサンブルを軸にしたミディアムテンポのロックンロール。徹底的に削ぎ落とされたバンドサウンド、ブルーズを感じさせるボーカル、“なるようにしかならない、生きるしかない”という意志を含んだ歌詞がひとつになったこの曲は、すでにロックンロール・クラシックの風格を備えつつも、このバンドが新しいフェーズに突入していることを明確に伝えている。音楽的にはまったくブレず、自らの表現欲求だけを追求する。「かっこいいに決まってんだろ、そんなもん」と言いたくなる、素晴らしい新曲である。