バランス・オブ・パフォーマンス(BOA、車両性能の均衡化)を導入し、世界各国自動車メーカーやチームの積極的な参入を促したFIA-GT3規定車両をメインに据えた、欧米のGTレース・シリーズはいずれも盛り上がっている。この傾向はアジアも同様で、2010年に始まったGTアジア、2013年に始まったアジアン・ル・マン・シリーズ(AsLMS)はその双璧である。
さらに2017年には、ヨーロッパで圧倒的な人気と参加台数を誇るブランパンGTシリーズのアジア版、ブランパンGTアジアがいよいよ始まる。“いま、アジアのGTレースがアツイ!”と勝手に勘違いした僕は、世間的にはいまさらで周回遅れを十分に承知しながらも、10月末に2016-2017シーズンのAsLMS第1戦が開催される中国・珠海国際サーキット(ZIC)へ突撃した。
まあ、遠い。香港と澳門を経由して中国・珠海市のホテルでベッドに倒れ込んだのは、自宅を出発して約16時間後の現地時間午後8時だった。翌朝、難儀したのはZICまでの足。外国人は現地で自動車を運転できないので公共交通機関しか手はない。
ところが、鉄道やバスは最寄りの駅や停留所からZICまでが絶望的に遠い。結局、往復とも片道100人民元(1人民元は約15円)足らずのタクシーを利用した。
しかし、こんな辺ぴな場所へ自動車レースを観に来る中国人などいるの? 練習走行しか実施されない金曜日、グランドスタンドの観客はほぼゼロ。予選が実施される土曜日も同様で、ZIC正門前のチケット売り場もグランドスタンド裏の屋台も休業。
ところが決勝が実施される日曜日、ZIC正門の対面にある駐車場はバスや自家用車を次々に吸い込み、グランドスタンドは観客で埋め尽くされた。
とはいえ、目算で数千人収容のグランドスタンドが観客で賑わっていたのは4時間レースのスタート前後だけ。開始まもなく空席が目立ち始め。1時間で8割が空席になり、2時間で9割が空席……。フィニッシュ前には再び観客が戻って来るかと思っていたが、結局は2、3百人が暫定表彰式を見守っていただけ。まあ、なんらかの勢力による動員が掛かっていたのだろう(汗)。
もっとも、ヨーロッパのブランパンGTシリーズも一部を除けば同じようなもので、中国より決勝の観客が少ないイベントは珍しくない。つまり、FIA-GT3レースの多くは観客動員に依存しない、走っているドライバーや走らせているチーム、それを支えるタイヤサプライヤーやマニュファクチャラーやスポンサーが、自分たちが楽しいからやっているという、まさに自動車レースの伝統的王道をまい進しているのだ。
後日掲載の第2回目に続く。