昨年、ホンダはパフォーマンス不足とともに、信頼性においても、苦しい戦いが強いられた。そのひとつが、このメキシコGPだった。
ジェンソン・バトンのパワーユニットは何度も積み替えされ、合計70番手降格のペナルティを受けた。チームメートのフェルナンド・アロンソはバトンほどではないが、こちらも15番手降格のペナルティを受けていた。
さらに土曜日の夜に、MGU-Hの回転センサーがフェイルモードに入ってしまう問題が発生。ホンダは時間的な問題から、手を打つことができず、レースをスタートさせる前にリタイアすることも考えたが、チームとアロンソが「ファンのために、1周だけでもいいからレースしたい」という理由でレースをスタートしたが、1周目にシステムがパワーユニットをシャットダウンし、リタイアした。
あれから1年。ホンダにとって、メキシコGPは雪辱を期するグランプリだった。
そのメキシコで、ホンダは1年前に見舞われたような致命的なトラブルを起こすことなく、3日間を戦い終えた。これはホンダがこの1年間で大きく前進している紛れもない証左である。
確かに初日に設定回転数が上がりすぎるという症状に見舞われた。しかし、これは気圧が低いメキシコの高地ならではの問題。ホンダは過給圧が上がりすぎないようにウェストゲートバルブの開閉を微妙に調整して、ポップオフバルブが開いて出力が落ちることを抑制するなど、しっかりと対応していた。
しかし日曜日のレースでは、アロンソがICEに問題を抱えたため出力を下げるという事態に見舞われ、またバトンはERSの温度が予定よりも上昇したため、こちらも最大のパフォーマンスを発揮するのを抑えて走行していた。ホンダはこの問題の原因を言及しなかったが、どちらもメキシコ・シティの空気密度が薄いことで冷却系が厳しくなったと考えられる。
当然、ホンダとマクラーレンは、冷却系に関しても高地仕様を持ち込んできており、土曜日までは何も問題は起きていなかった。それがレースの後半に起きてしまったのは、マクラーレン・ホンダの2台が渋滞の中に埋もれてしまったからだと考えられる。マクラーレン・ホンダはそのことを正直にリリースを通して発表しているが、同じように問題はほかのチームでも起きていた。あるメルセデス系チームもこのことが問題で「速さはあったのに、なかなかオーバーテイクできなかった」と、高地で行われるメキシコGPの難しさを語っていた。
そんな中、ホンダは高地での戦いに苦戦しながらも、ライバルたちと互角に渡り合った。それは今シーズン、大きく改善したにも関わらず、ホンダのパワーユニットに対して、それでも発破をかけ続けてきたアロンソが、今シーズン初めて「(パワーユニットは)コンペティティブだった」と語っていたことが如実に物語っている。
それでも、長谷川祐介総責任者は「(アロンソのコメントは)ライバルを超えているということではなく、戦えるという意味で言っただけのこと」と謙遜していたが、「(パワーユニットに対して)文句を言われなかったのは今年初めてです」とも語った。
レース順位としては、必ずしも望んでいた結果は得られなかったマクラーレン・ホンダだったが、ホンダは1年前の雪辱は果たしたメキシコGPだった。
ホンダ辛口コラムはF1速報公式サイトで連載中
ホンダ辛口コラム アメリカ&メキシコGP編:明らかに後退。マシンの欠点を痛感せざるを得ない