2016年11月06日 10:02 弁護士ドットコム
ヤフーの働き方改革が注目を集めている。「週休3日制」導入のインパクトが大きかったが、通勤時間が2時間以上かかる従業員を対象に「新幹線通勤」の交通費を月15万円までの補助する制度も話題となった。新幹線の静岡駅、越後湯沢駅、新白河駅などから通勤できるようになるようだ。
【関連記事:「同級生10人から性器を直接触られた」 性的マイノリティが受けた「暴力」の実態】
このニュースに対して、ネットの掲示板では、同社の対応を羨ましがる人がいる一方で、「遠くからくる奴は交通渋滞ですぐ遅れるから役に立たねぇ。むしろ近いやつに多く払うべき」という意見も出ていた。また、「電車本数・最終電車の関係でどうしても周囲が配慮せざるを得ない」などとして、一般の企業では認められないだろうと意見する人もみられた。
通勤手当(交通費)の支給基準は会社によって異なる。新幹線通勤を希望する社員に対し、高額な通勤手当や緊急時の対応などを理由に、会社側は断ることができるのだろうか。大部博之弁護士に聞いた。
「本来、従業員の交通費は自己負担が原則です。しかし、会社で交通費の支給基準が明確に定められている場合には、労働基準法上の『賃金』として、会社に支払義務があることになります。ただし、その場合も、あくまでも会社の定める支給基準に沿って支払われるもので、交通費の全額が認められるわけではありません。
つまり、新幹線通勤の交通費が認められるか否かは、会社が定める支給基準次第ということになります。実際には特急料金は含まれていないのが通常かと思いますので、自分で負担することになるでしょう」
ではもし、従業員が自腹負担するのであれば、問題ないということか。
「自腹で新幹線で通勤する希望する社員を、会社が拒む根拠はありません。従業員は、特急料金を自腹で負担し、新幹線で通勤することも、自腹であればグリーン車で通勤することも自由です。
また、通勤時間が長くなるなどの理由で、従業員の居住地域を制限することは、特段の合理的な理由がない限り、過度に私生活に干渉するものとして、許されないでしょう」
特段の合理的な理由とは、どのようなものか。
「公共交通機関の始発電車に乗っても、始業時間に間に合わないような場合です。しかし、その場合でも、新幹線を使えば、なんとか始業時間に間に合うのであれば、特急料金部分を従業員で負担する限り、会社がこれを拒むのは難しいでしょう。
このように、新幹線通勤は原則として認められるはずです。ただ、通勤時間が長くなったり、災害時対応などのご自身にとってのデメリットも考えられますので、新幹線通勤圏内に住むことのメリットと天秤にかけて判断した方が良いでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
大部 博之(おおべ・ひろゆき)弁護士
2006年弁護士登録。東京大学法学部卒。成城大学法学部講師。企業法務全般から事業再生、起業支援まで広く扱う。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
事務所URL:http://www.ogaso.com/