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人気歌人が食をゆるっと語る、異色エッセイ

2016年11月06日 00:02  オズモール

オズモール

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【毎週土曜10:00配信】※この回が最終回になります
コミック、エッセイから、絵本、レシピ本まで、ページを読み進めると思わずグーーッとお腹が鳴ってしまう、食欲刺激系の本を、“食”にまつわる本棚プロデュースやイベントなどを通じて、いろんなおいしいを提案・表現する〈COOKCOOP〉のブックディレクター・鈴木めぐみさんがピックアップ!





◆COOKCOOP 鈴木めぐみさん選

『君がいない夜のごはん』

歌人の穂村弘さんが食べものをテーマにしたエッセイを上梓されると知ったとき、私は小躍りするほど嬉しかった。以前から著書やインタビュー記事、トークショーなどを通して存じ上げてはいたが、あの穂村さんが「食」をどんなふうに語るのか、とても興味があったから。実際に読み進めていくと期待通り。いや、期待以上の面白さでありました。

これは、おいしいレストランの話やグルメレビューの類の本ではありません。自らを「味覚が穴だらけで腐ったものが判断できない」と明言し、なんと「ところてんは箸一本で食べる」とカミングアウトする穂村さんならではの着眼点で次々といろんなエピソードが飛び出す。“生ハムメロンは、それぞれ剥がして食べたい”とか“カレーはごはんかルウどちらかが冷たいほうが好き”とか。びっくりするような意外な角度からの視点とは一線を画す、ゆるい語り口もまた心地よく、思わずうんうんと頷いてしまう。

「そうくるか」というエピソードの連続には共感とニヤニヤの繰り返しで、ページをめくる手がとまらないはず。




『君がいない夜のごはん』 穂村弘著 NHK出版刊1512円




鈴木めぐみ

食を中心とした雑誌の編集者を経て、料理本専門書店〈COOKCOOP〉のブックディレクターに。現在、実店舗は持たず、ブックセレクトや食関係のイベントの企画運営に携わっている。