トップへ

BLUE ENCOUNT、初武道館でオーディエンスと交わした“契り” 「もっとデカい夢が見たい」

2016年11月05日 19:21  リアルサウンド

リアルサウンド

BLUE ENCOUNT(撮影=浜野カズシ)

 BLUE ENCOUNT(以下、ブルエン)が10月9日、初の武道館公演『LIVER'S 武道館』を行った。


(関連:BLUE ENCOUNT、新曲「はじまり」でネクストステージへ「“安定の不安定”で振り幅を提示したい」


 メンバーがステージに現れる前、スクリーンには、過去のライブ映像が映し出された。それは、メジャーデビュー前の2013年に行われた東京・TSUTAYA O-WESTでのワンマンライブの映像だ。そこに映る田邊駿一(Vo・Gt)はMCで、「今日ここにいる半分が笑うと思うけど、日本武道館ワンマンを必ずやる」「一緒に武道館立とうね」と宣言。そこから映像は、今年1月のZepp Tokyo公演に切り替わり、田邊が「武道館やります!」と発表する。ブルエンにとって、武道館はまさに念願の舞台。そして、その約束が3年越しに果たされたこの日を、オーディエンスは大歓声と拍手で迎えた。


 メンバーがステージに現れ、それぞれのポジションに着くと、田邊がアカペラで「opening」を歌い始める。この曲は2013年リリースの3rdミニアルバム『NOISY SLUGGER』に収録されており、全編英語詞で、どこか神聖な雰囲気が漂う。それを田邊が丁寧に歌い上げると、特効の音と共にオープニング・ナンバー「DAY×DAY」がスタート。<どれだけたくさんの夢を僕らは/犠牲にしていけばいいのだろう><どれだけたくさんの希望を僕らは/力に変えていけばいいのだろう><あなたを守り抜くを決めた>と、一言一句バンドを続ける覚悟を綴ったこの曲に応えるように、オーディエンスもその手を突き上げる。続く「HALO」「MEMENTO」でも、江口雄也(Gt)の鋭利なギターリフ、辻村勇太(Ba)の挑発的なスラップベース、高村佳秀(Dr)の豪快なドラミングが一体となったアンサンブルを響かせ、会場のボルテージは一気に高揚していく。


 MCでは、「初めて来たのは2012年のSPYAIRで、一昨日(10月7日)もMr.Children先輩を観に来ました」と、武道館の思い出、そして念願のステージに立てた感慨を語る田邊。そして「みんなの楽しそうな顔が見えて嬉しい」「今日はベタなこともやりたい」と、アリーナから2階席までコール&レスポンスを煽っていく。


 そこから、「アンバランス」ではタイトなアンサンブルで攻め、「JUMP」では会場一斉にジャンプ、「ONE」ではステージ前方までフロントの3人が出てきて、同時に背面弾きを披露。MCでは軽快なトークを繰り広げ、同世代の盟友であるWANIMAや04 Limited Sazabysなどの名前も出しながら会場を盛り上げるブルエンだが、曲中はあくまでロックバンドとしてストイックにそのプレイを見せつける。強靭なアンサンブルと、目まぐるしく変化する曲の展開でオーディエンスをエンターテインするバンドの魅力をダイレクトに体感できる場面が続いた。


 前半が終わったところで会場は暗転し、スポットライトがアリーナエリアを次々と照らしていく。そして最後に照らされた黒い幕の中から出てきたのは、グッズの黒いパーカーを着てフードをかぶりDJに扮する高村だ。「高村ップ」と称して、グッズの紹介や「メンバーのいいところ」などをお題に、即興ラップを披露。が、途中から次第にラップはたどたどしくなり……会場は笑いと歓声に包まれる(そして、後から他のメンバーに「途中からラップじゃなくなってたよね」といじられる結果に)。


 そして、再びステージに照明が当たると、そこにはストリングス・カルテットの姿があった。先ほどまでは、アッパーな曲を中心にテンションの高いパフォーマンスで畳みかけてきたが、ここは、しっかり歌を聞かせるコーナーのようだ。まっすぐに前を見据えて歌う田邊の姿が印象的だった「YOU」では、ストリングスが奏でる音色とバンドサウンドが繊細に重なり合い、曲に彩りを与えていく。さらにバラード曲「はじまり」は、歌を届けるためにひときわ丁寧に紡がれ、ラストの会場一体となった「ウォーオー」のコーラスには、胸を熱くさせられた。


 続くMCでは、「夢を叶えられた」という田邊の発言から、江口にサプライズ・プレゼントが贈られる。ブルエンは、メンバーが高校時代に結成したバンド。当時、江口のギターを壊してしまった田邊が、「俺達が将来、武道館にステージに立ったら、その時はギターを返す」と約束したという。この日のために、田邊は江口に内緒で新しくギターを購入。ステージの上でプレゼントしふたりがハグを交わすと、大きな拍手が送られた。また、前日10月8日から放送がスタートしたドラマ『THE LAST COP』(日テレ系)の主題歌に選ばれたことを受け、武道館に来ていたドラマのスタッフに「僕たちをドラマに出させてください!」とお願い。スタッフは両手で丸印を作って応えると、メンバーはガッツポーズを作って喜んだ。


 その主題歌であり11月23日リリースの「LAST HERO」からはじまった後半戦は、気迫のパフォーマンスが続いた。炎の演出を取り入れた「JUST AWAKE」からツービートで駆け抜ける「THANKS」、「LIVER」での会場一斉のタオル回し。ラストスパートに向かう流れは、ブルエンが全国各地のフェスやイベントの舞台で戦い、バンドとして成長してきた証を感じるものだった。そして「このままじゃ終われない、力を貸してくれ!」と田邊が言うと、最新シングル曲「だいじょうぶ」へと突入。


 曲が終わると、田邊がオーディエンスに向かって話し始める。結成12年になること。その間、バンドを馬鹿にされたり、反対されたこともあったこと。悔しい思いも情けない思いもたくさんしたことーー田邊は、声を震わせて正直な想いを明かしながらも、それでもバンドで夢を追い続けたら、こんなにも多くの人に応援してもらえたと、感謝を述べる。そして、「でも、終わりたくないんだよ、ここで。お前らの力が必要なんだって。もっとデカい夢が見たい」と続け、来年の3月に幕張メッセでワンマンをやることを発表した。そして、その胸に抱く思いを抑えきれなくなったように、涙交じりの声で<もっと光を>と歌い始め、本編最後の曲「もっと光を」へ。間奏では、田邊が「俺とお前らはBLUE ENCOUNTです。よろしく」と叫ぶ。「もっと光を」は、これまでも多くのライブの大事な場面で演奏されてきた、ブルエンの原点を刻んだような曲だ。ブルエンとファンをつなぎ、一緒に歌い、想いを分かち合う歌ーーキラキラと光るテープが飛ぶ演出と相まって、その4人と1万人によるシンガロングは、ドラマチックなクライマックスを描いてみせた。


 アンコールでは、晴れ晴れとした笑顔で戻ってきたメンバー。田邊はアルバム制作が終わったことを明かしながら「すごいのできそう」とニヤリと笑う。そしてそのアルバムの中から新曲を披露。ラブソングにも聞こえる歌詞と瑞々しいメロディが新鮮な、ブルエンにとっては新たな挑戦と言える曲であった。さらに、バンドが歩んできた道と、オーディエンスの過ごしてきた日々を重ね、未来に向かって鼓舞する「NEVER ENDING STORY」へ。そして最後の曲は「HANDS」だった。紙吹雪も舞う中、1万人以上がひとつの歌を共有し、多くの手が振り上げられる光景は、まるでバンドとオーディエンスが契りを交わすような、巨大な一体感を生み出していた。


 筆者がこの日、強く印象に残っているのは、田邊や他のメンバーが繰り返し「BLUE ENCOUNTは僕らとあなたたちひとりひとりがいて成り立っている」という発言をしていたことだ。結成してから12年、決して順風満帆だったわけではなく、解散の危機もあったという。そんなブルエンは、何度もリスナーの言葉や笑顔に救われ、ここまでバンドを続けることができたのだろう。今回の武道館公演では、その一朝一夕では生まれない思いの強さ・濃さが、満員のオーディエンスの喜びと重なることで、特別な一夜を作り出していたと思う。


 そして、その物語は、この先へと続いている。来年リリース予定の新アルバム『THE END』(「大事なスタートの1枚になる」と思い、このタイトルを付けたという)と、幕張メッセ公演も含む全国ツアー。ここで終わりたくない、次の舞台へ向かいたいという強い望みと意志によって、これからもBLUE ENCOUNTというバンドの“夢”は、更新され続けていくだろう。(取材・文=若田悠希)