2016年11月05日 11:02 弁護士ドットコム
夫が勝手に離婚届を提出した上、別の女性と「再婚」していたーー。夫の身勝手に振り回されている女性が、「(後妻との)婚姻の取り消しをさせ、慰謝料請求はできますか?」と、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに、相談を寄せました。
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相談者によれば、夫は無断で、離婚届を提出していました。受理された直後に別の女性と再婚したそうです。その後、女性は調停をおこし、離婚は無効と認められました。しかし、それで話は終わりませんでした。
なぜなら、その後の再婚については、そのままの状態になっているため、女性に言わせれば、夫は「重婚状態」となっているのです。相談者に離婚する意思はなく、当然、この身勝手な再婚を認めるつもりもありません。
このような場合、相談者はどのような対応ができるのでしょう。夫の「再婚」を取消し、慰謝料を請求することは可能でしょうか。森元みのり弁護士に聞きました。
●「婚姻取消」はできる?
今回のケースでは、「婚姻取消」を請求することができます。
婚姻取消は、離婚のように当事者が役所に届け出るだけではできず、家庭裁判所での手続が必要になります(民法744条1項本文)。
その際には、調停か訴訟、どちらかを選択することになります。調停では、取消原因に争いがなく、再婚相手との間に子がいる場合には、取消後の親権者にも争いがない場合に限り、「合意に相当する審判」で後婚を取り消してもらえます(家事事件手続法277条、282条)。争いがある場合には、訴訟で判決をもらうことになります。
民法では婚姻取消事由を定めており、その一つに「重婚」があります(民法744条、732条)。今回のケースでは取消原因が明白なので、難なく認められることでしょう。
なお、その他の取消理由としては、不適齢者の婚姻、近親者間の婚姻、詐欺又は強迫による婚姻などがあります。
● 慰謝料請求はできる?
また、夫に慰謝料請求をすることは可能です。不貞と、無断で離婚届を提出したことの両方について責任を問えるでしょう。
再婚相手に関しては、夫が既婚者であることを本当に知らず、知らないのは仕方がないと考えられる経緯があれば、慰謝料が認められない可能性もあります。
しかし通常は、交際中に既婚者であることに気づき得るはずともいえますので、二人が知り合った経緯や交際の経過などを慎重に検討する必要があります。
【取材協力弁護士】
森元 みのり(もりもと・みのり)弁護士
東京大学法学部卒業。2006年、弁護士登録、森法律事務所入所。
著書・監修書に、『簡易算定表だけでは解決できない養育費・婚姻費用算定事例集』(新日本法規)『一番よくわかる離婚の準備・手続き・生活設計』(西東社)他。
事務所名:森法律事務所
事務所URL:http://www.mori-law-office.com/