ニコ・ヒュルケンベルグの2017年ルノー移籍が決定した直後のアメリカGPから、ストーブリーグは新たな展開を見せ始めた。フォース・インディアにできた1席のシートを巡って、これまで様子を見ていたドライバーのマネージャーたちが動き始めたからだ。
まず、ザウバーに残留する可能性が高いと思われていたマーカス・エリクソンである。新しいオーナーのロングボウ・ファイナンス社のバックに、テトラパックを有するスウェーデンのテトララバル社が存在していることは公然の秘密である。ロングボウ社は、ローザンヌ近郊のレマン湖畔にあるリュトリという街にある投資会社で、その取引会社のひとつがテトララバル社なのである。ちなみにテトララバル社もロングボウ社と同じリュトリという街にある。
だが、エリクソンはメキシコGPでザウバー離脱の可能性があることをほのめかす発言をしている。「以前から言っているように、僕はできる限りいいチームに加わりたい。フォース・インディアは現時点では本当に強いチームなので、可能性を探るのは当然。なぜなら、僕はまだ来年の契約を結んでいないんだからね」
その発言がブラフでないことは、アメリカGPからエリクソンの事実上のマネージャーであるエイエ・エルグがフォース・インディア関係者や、フォース・インディアに強い発言権を持つと言われているメルセデスのトト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター/ビジネス)と頻繁に立ち話をしていることからもわかる。
このエリクソンの動きに合わせるかのように、アメリカGP以降、動きを活発化させているドライバーがいる。それはジョリオン・パーマーだ。ヒュルケンベルグの移籍にともない、ケビン・マグヌッセンかパーマーはシートを失う。今シーズンのパフォーマンスを考えると、パーマーは不利であり、ルノーの決定を待っている余裕はない。
そこでパーマー側が照準を合わせたのが、エリクソンの移籍によって空いた場合のザウバーのシートだ。パーマーは自らのマネージメントは「自分と父親で行っている」と語っているが、じつはパーマーには強力なマネージャーがいる。それはジュリアン・ジャコビだ。彼はかつてアイルトン・セナのマネージャーを務めて、現在はペレスのマネージメントも行っている実力派。そのジャコビがこの2戦でザウバーのモニシャ・カルテンボーンと会話している姿をたびたび目にしている。
ドライバーマーケットの状況は、ドライバーのコメントだけでなく、彼らのマネージャーの動きを見たほうが把握しやすい場合がある。果たして、エルグとジャコビは次にどんな動きを見せるのか、注視していきたい。