前代未聞の表彰式だった。3位でチェッカーフラッグを受けたマックス・フェルスタッペンが、いったん表彰台裏の控え室へ向かったものの、68周目のセバスチャン・ベッテルとのバトルで5秒加算のペナルティを直後に受け、5位へ降格。
代わって3位となって表彰式に現れたベッテルだったが、セレモニー後にレース審議委員会に呼び出される。そして、70周目のダニエル・リカルドとのバトルの際に、ブレーキングゾーンで進路を変更していたと判断され、10秒加算のペナルティを受け、5位へ降格。5位でチェッカーフラッグを受けたリカルドが3位となり、幻の表彰台を手にした。
地元のテレビ局の解説者としてサーキットを訪れていた元F1ドライバーのファン・パブロ・モントーヤは、表彰台で司会役も務めたこともあって、「1周目からファイナルラップまでエキサイティングな素晴らしいレースだった」と、レース後に大人のコメントをしていたが、ほかの元F1ドライバーたちは、この日のレースに少しおかんむりだった。
97年のチャンピオンで、現在は歯に衣着せない発言で、いまやF1界のご意見番的存在となっているジャック・ビルヌーブは、こう憤る。
「ファンにとってはエキサイティングだったかもしれないが、ルールがあるスポーツとしては最低のレースだった。しかも、またフェルスタッペンだ。以前から言っているが、チームがあいつをしっかりと教育しないと、いつかとんでもない事故が起きるぞ」
元フェラーリドライバーで現在テレビ解説者を務め、的確なコメントで人気が高いイワン・カペリもこう指摘する。
「フェルスタッペンが今日行った行為はやってはいけないことだった。それはベッテルとのバトルではなく、チームの指示を守らなかったことだ。ベッテルとのバトルの後、チームはペナルティを逃れるためにフェルスタッペンに『ポジションを譲れ』と指示を出した。しかし、フェルスタッペンはそれに従わなかった。最終的にベッテルもペナルティを受けたから良かったものの、彼は自分のレースだけでなく、後方から追い上げてきたリカルドのレースも台無しにするところだった」
あるレース関係者は今回の一件について、次のような見解を述べた。「フェルスタッペンはやり過ぎたし、ベッテルは言い過ぎた。レースで大切なことは、的確なマシンコントロールと冷静な判断力。感情的になって、いいことなんか何もない」