F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、22人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。
☆ マックス・フェルスタッペン
19歳の彼にはタイトルを争う者だろうと誰でも仕掛けていくのがレース、というピュアな信念があるのだろう(ロズベルグはその攻撃を見切り、コース外にはじかれるリスクを回避)。審議対象、ペナルティ問題が事後にクローズアップされたが、遠慮ばかりしていたらレースじゃない。若い野心さく裂。目いっぱい“背伸び”するMAX、ルールがんじがらめの今のF1に旋風を巻き起こす。しかしそんな彼にチーム側が少し“コーチング”する必要もあると思える。
☆ パスカル・ウェーレイン
Q2進出4度目、予選16位、見るからにグリップがないマノーでプッシュ。難しいマシンで腕を磨くつらさが伝わる。たった1台リタイア、ザウバーに逆転入賞されないかとドキドキ観戦だった気持ちも分かる。
☆☆ マーカス・エリクソン
ローグリップ路面にカーバランスまずまずだったザウバー。1周目、もみくちゃ接触後にピットイン、69周をミディアムでロング・カバー。65周目に自己ベストタイムは終盤までタイヤ管理を巧くやってきた証明、見直した。チーム今季最高11位、入賞目前のベストレース。
☆☆ ジョリオン・パーマー
何度も言っているように父に似て地味なレースをする。シャシー交換で予選走れず21位から1周目に換えたミディアムで粘り完走14位。エアロ&メカニカル・グリップが乏しい状態での“納豆走法”、もう覚悟しているのかもしれないがF1想い出刻んだメキシコ……。
☆☆☆ キミ・ライコネン
なぜ今フェラーリにキミが必要なのか――。ベッテルの言動、競技運営チーフに対する“侮辱発言”が大問題に。いらだつ彼は最近ライコネンに先行され、それも心中穏やかでないのだろう。一方37歳になったアイスマンは粛々と2ストップを受け入れ6位に。無線で吠えずじっと耐える存在が今のフェラーリには欠かせない。
☆☆☆ バルテリ・ボッタス
アップデートがないウイリアムズの現状戦力を深く理解、最適セットアップを施している。その範囲内で控えめなアタック、チーム忠誠心を感じる。自分のためというよりもチームのため、プチ選手権“ランク4位”奪還に励む。
☆☆☆ フェリペ・マッサ
徹頭徹尾、ペレス完封。何度か危なかったがそのつどミラー・チェック、9位を守りぬく。引退を控え、母国ブラジルGPを前に、往年のマッサを思い出させるナンバー2的な堅いレース(失礼)。M・シューマッハ“護衛兵”を務めてきたころが懐かしくなった。
☆☆☆☆ ニコ・ヒュルケンベルグ
念願だったメーカー・ワークス契約が17年ルノーと実現、長年インディペンデント・チームを転々してきただけに一念発起。以前からフォースインディア首脳に「送り出すのは阻まない」と言われていた(鈴鹿でも)。公道モナコと同じこのコースでも予選5位、今年のマシンの“オールラウンド性”を実証。レース終盤、ライコネンと絡まるも、ギリギリで得た7位は価値あり。9点差であと2戦、まだまだ“4位戦線”決着つかず。
☆☆☆☆ ダニエル・リカルド
SSタイヤでスタート、即1周目にミディアム交換、思い切りがいい戦術に出た。レースをおもしろくするレッドブル、それを楽しんでいるかのようなリカルド。70周目、ベッテルへのアタックは彼ならではのインサイド攻撃ライン、けして無謀ではなかった。
☆☆☆☆☆ ニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトン
二人は「五分五分」。タイトル・コンテンダーの危機管理能力がこのレースにはっきり表れた。ハミルトンにはタイヤ・フラットスポット(振動)、ロズベルグには接触プレーのピンチが。致命傷となるのを免れ、お互い目標の1位と2位を分け合う結果。19点差となって、次戦ロズベルグが勝てば初戴冠、ハミルトンが勝てば52勝記録とともに最終決戦へ。さてブラジルGPのポイント、ハミルトンは未勝利のインテルラゴスで、ロズベルグはウェットにやや弱く、いまからサンパウロ・ウェザーが気になる。