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スーパーフォーミュラのエンジン対決、トヨタvsホンダそれぞれのシーズン総括

2016年11月03日 08:01  AUTOSPORT web

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2016スーパーフォーミュラ第4戦もてぎ 山本尚貴(TEAM 無限)
トヨタエンジンユーザーである、国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)の初タイトル獲得で幕を閉じた今シーズンのスーパーフォーミュラ。今季は開幕戦でホンダエンジンユーザーである山本尚貴(TEAM 無限)が勝利を挙げるなど、トヨタとホンダの戦いは例年以上に熾烈になった。両メーカーの開発エンジニアが、今季のスーパーフォーミュラのエンジン開発を総括した。 

 トヨタ陣営は今季、それまでに東富士研究所でのエンジン開発体制から、スーパーGTと同じく、TRDでの開発に体制をシフトさせた。TRDの佐々木孝博エンジニアが話す。

「今季前半はトヨタさんが開発したエンジンを引き継いで戦って、2基目からウチ(TRD)の仕様のスペックで戦いました。見てもらえればすぐにわかるくらい、1基目とは大きく違います。ウチがスーパーGTで培ってきたノウハウと、スーパーフォーミュラで必要な部分ということで、燃料リストリクターのサイズが変わっていますし、そのお互いの良いトコ取りをするような形でスーパーGTとスーパーフォーミュラ、共通の部品を使った方が開発もしやすいですし、コストも下げられる。今年は性能を保ちつつ、スペックを揃えることを優先して開発を進めてきました」

 第4戦ツインリンクもてぎから投入した、今季2基目の後半エンジンがTRD開発のエンジンということになる。トヨタ主導の前半エンジンからはカムシャフト、吸気系を変更して吸気効率を上げ、ピストン、コンロッドなどにも手を加えたと言われている。

 スーパーフォーミュラのトヨタエンジンはドライバーの評判もかなり高く、エンジンのトルクだけでなく、レスポンス、ターボラグのピックアップなどドライバビリティも好評だ。

「パフォーマンス面でも、ドライバーからの不満はなかったので、大丈夫だったと思います(苦笑)」と、佐々木エンジニア。

「燃料リストリクターがあるので、(ライバルとは)パワーの差は出にくいですが、ドライバビリティの面もだいぶ良くなっていると思います。エンジンとしては1基目と2基目でコンセプトが違いましたが、イメージとしてはホンダさんが目指していた仕様に、ウチの2基目が近づいたという形でしょうか。ターボラグをなくして、NAと遜色がないようなエンジンの使い方ができれば、速くなることは分かっていました。同じ燃料使用量でも、ブーストを下げて使える、吸気の温度を下げて、リーンでも性能が出るようなエンジンを狙ってきました」と今季を総括する。

 一方のホンダ陣営も、今季は山本尚貴、驚異のルーキー、ストフェル・バンドーン(DOCOMO TEAM DANDELION)が優勝を飾り、計3勝を挙げることができた。去年は最終戦の山本の1勝だけだったことを考えると、大きく進歩した一年だったと言える。ホンダの佐伯昌浩エンジニアが話す。

「前半戦では開幕戦の鈴鹿で山本が勝てて、後半のエンジンも2レース制だった岡山と、そして最終戦のこの鈴鹿で勝てたので、勝てるエンジンにはなっていたのかなと思います。あとは信頼性の部分で今年はほとんどトラブルがなかったので、ひとシーズンが終わってホッとしています」

 ホンダは今季、2基目のエンジンの評判が高かった。前半はヨコハマタイヤのデータを収集し、そのタイヤ特性、パフォーマンスに合わせて後半エンジンは制御面を全面的に見直した。前半ではドライバビリティの面などはほぼ、昨年同様だったので、後半が本当の2016年仕様エンジンと言えるほど、大幅にアップデートが施された。しかし、そのエンジンを持ってしても、ホンダはまたしても、トヨタにタイトルを奪われる形となってしまった。

「チャンピオンも当然、目標なんですけど、メーカーとして考えているところのひとつとしては、どのドライバーでも扱い易くて、そして勝てるエンジンを安定して供給するという部分がひとつの目的です。そういう部分で見ると、今年はホンダ勢の8名のドライバー中、6名が表彰台に上がっている。上がれなかった(ベルトラン)バゲットも富士ではいい走りをしていたけど、途中で止まってしまったり、小暮(卓史)も結構、クルマの方でトラブルが起きてしまった。その2名の内訳を見ると、今シーズン、私たちがやってきたことは間違いなかったのかなと思います」と佐伯エンジニアはエンジン単体のパフォーマンスとしてはある程度、満足をしているようだ。

 今のスーパーフォーミュラは、ドライバーズ・レースではあるが、エンジンの開発競争も忘れてはならない。NREエンジンが来季、どのような進化を見せるのか。2017年はまた、トヨタ、ホンダの両メーカーの戦いも、さらに熾烈な戦いになるだろう。